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韓国の反日行動がエスカレート。日韓衝突の回避策はあるのか?

日韓関係は出口の見えない暗くて深い穴の中に入り込んでしまったようです。昨年の終わりから、両国の武力衝突の可能性の高まりを指摘し続け、冷静な対応を取るべきと訴えているのは、数々の国際舞台で交渉人を務めた島田久仁彦さんです。メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では、日韓の直接紛争を回避するための条件について考察しています。

日本にとって試練の2019年‐日韓問題

昨年の末に書かせていただいた2019年大予測以降、繰り返し、「北東アジア地区の安定が2019年には脅かされるのではないか」との懸念を述べてきましたが、日を追うごとに、その懸念が現実化してくる可能性が高まってきたような気がします。

その要因となっているのは、日韓関係の悪化が収まる気配がないことと、日ロ間での北方領土問題の解決のための交渉が“暗礁”に乗り上げていることです。

【日韓関係:Point of No Return?!】

昨年秋からの北東アジア地域の安定を脅かしている要因の筆頭は、北朝鮮をめぐる諸々の問題でも、米中間の貿易“戦争”と安全保障上の緊張でもなく、悪化の一途を辿る日韓問題の迷走です。

慰安婦問題解決のために設立されたはずの癒し財団の突然の解体と、日韓合意の破棄ともとれる行動、解決済みと両国で合意されていた徴用工問題の再燃とエスカレーション、そして、年末に起こった韓国海軍の駆逐艦による日本の海上自衛隊P1哨戒機への火器管制レーダー照射問題と、問題は収まる気配がありません。

日本の議員の間では、「日本の仏の顔はもう尽きた!」と韓国への強硬策の発動を!!と息巻く人数が増えてきているといいます。それを抑えるために開催されていた日韓防衛当局の協議も物別れに終わり、さらに1月23日にダボスで行われた日韓外相会談も平行線を辿ったことで、両国間の緊張も高まる一方です。

同日1月23日には、韓国サイドから、「海上自衛隊の哨戒機が異常な低空飛行を3度にわたり繰り返し、韓国に対し威嚇飛行を行っている!」との抗議があり、すぐさま岩間防衛大臣が明確に否定するなど、ネガティブでとても危険なピンポンゲームが続いています。まさに、戦争に至ってしまいかねないケースによくみられる典型的なエスカレーションの例です。

徴用工問題や慰安婦問題については、私の考えでは、解決の責任は韓国政府にありますので、ここではお話しませんが、火器管制レーダー照射問題については、行き着くところまで行ってしまうと日韓の直接的な紛争に発展しかねませんので、主にこの問題についてお話します。

本件に関する韓国政府からの反論や日本に対する批判は、いくら中立的な立場から見ようと心がけてみても、残念ながら全く的を射ていないばかりか、説得力がありません。海上自衛隊サイドが“躊躇しつつも”出した証拠映像に対する反論映像も、肝心のレーダー照射の有無を証明する材料が皆無でした。

そして、さらに韓国にとって圧倒的に分が悪いのは、日米共同で行っていた日本海での中国潜水艦警戒中の海上自衛隊P-1哨戒機への火器管制レーダー照射(ロックオン)を行った証拠データは、日本はもちろん、アメリカも保持しているという点です。

現時点では、ワシントンDCは「あくまでも日韓の二国問題なので口は出さない」という姿勢を保ちつつ、駐韓米国大使のハリス大将が言うように、ホワイトハウスやペンタゴンで「明らかに日米への挑発」との見解が高まるにつれ、昨年来のトランプ大統領による「韓国の見捨て」とも相まって、在韓米軍の撤退日米韓の軍事協力の見直しも視野に入れだしたそうです。

ハリス駐韓米国大使も「米韓同盟はいつまでも存続するとは限らない」との発言に加え、「火器管制レーダー照射がアメリカの航空機に対してであれば、即座に韓国海軍の駆逐艦を沈没させたであろう」との言葉にもあるように、アメリカの韓国離れは加速しています。

ちなみに1991年の湾岸戦争の爆撃に至ったのは、イラク軍から米英合同軍の戦闘機に対する火器管制レーダー照射(ロックオン)が行われたことに対しての反応として行われた空爆が引き金になっています。つまり、少し過激な言い方をすると、宣戦布告に近いと捉えられるのが、防衛当局(軍事当局)の常識です。

さらに、ダボスで日本を批判した“3度にわたる威嚇低空飛行”についても、実際の距離や角度を測るための三次元レーダー(3D Rader)をその艦船が搭載していたのか否かも不明であるため(注:三次元レーダーは、最新鋭の駆逐艦に搭載されているが、韓国海軍の艦船については、最新鋭のものを導入した例がないため、恐らく搭載していないと判断)、推測すると、今回の火器管制レーダー照射問題で退くに退けなくなっており、国内向けに「悪いのは日本」と訴えかけるための苦しい言い逃れに過ぎないということでしょう。実際に、証拠となるデータは出されていません。(注:1月24日に映像なるものが出されましたが、正直、議論する価値もないと感じるようなお粗末なものでした)

唯一の救い(!?)は、韓国国民が、まだ冷めていることでしょうか。徴用工問題に対する国民の反応と同じで、「また文政権がやっちゃったのか。今回は分が悪いぞ」というのがマジョリティの意見だそうです。それに加えて、韓国軍側にも「本来なら軍当局間で解決すればいいものに、文政権が余計な横やりを入れたから、なくていい緊張下に置かれることになって迷惑」との姿勢があるようです。

日韓直接対決になり得る恐れがあるとすれば、東シナ海もしくは日本海域での偶発的な衝突から発展するパターンでしょう。非常に泥沼化の様相を呈していますが、今一度、頭を冷やして、冷静に対応することが大事です。しかし、もちろん、言われっぱなしはだめで、常に政治当局とデータを共有し、アメリカとも密接に連携していることが、惨事に至ることになる日韓武力衝突(戦争)を防ぐための条件となるでしょう。

image by: supot phanna, shutterstock.com

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世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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