日本を絶望の底に叩き落す、イギリス「合意なきEU離脱」の深刻度

 

1月29日の議会下院での協議を受けて、現在のEUとの案に対する修正項目が挙げられましたが、EUからは、条件については、一切再交渉はしない!との非常に強いNOを突きつけられ、(ただし、離脱期限の延長については協議の用意ありとのことですが)、EUとの交渉が成立するかも微妙な状況と言えます。

これには、実はEU側の都合もあります。5月に現大統領、委員会委員長、EU議会の選挙を控えており、執行部が総入れ替えされるため、3月に定められた現在の離脱期限を越えてしまうと、実質的な内容に関わる(特に関税措置と国境措置に関わる事項)修正は不可能になってしまいます。

これまでにもこの“交代の時期のジレンマ”を何度も見てきましたが、現執行部下で決められた方針を大幅に変えることが出来るのは、新しい執行部およびEU議会の“新”メンバーが揃ってからになりますので、現執行部にとっては、現在、テーブルに乗っていて、ボールは英国議会にある案に対し、Take it or Leave(伸るか反るか)という非常に狭い交渉マンデートしか与えられていません。(注:余談ですが、気候変動交渉でも、貿易にかかる交渉でも、先に委員会で合意された交渉スタンスを、実際の交渉において大幅に変えることは、現場判断では出来ず、再度、委員会からの修正案を議会で承認する必要があるというシステムの弊害がここにも散見できます)。

また、再協議可能とされた離脱期限の延長についても、現執行部が伸ばし得る期限は、新執行部が揃うとされている今年7月までがいいところでしょう。つまり、EUの現執行部が非常に強く、かつ妥協不可能とさえ取れる態度に出ないといけない理由は、「現執行部でこの問題にけりを付け、英国のいないEUの未来を新執行部に託したい」と考えているからでしょう。(リーダーとしての意地なのかメンツなのかは分かりませんが)。

いろいろな評論やメディアを見てみると、「そうはいってもhard Brexitの可能性は低い」との見解が多いですが、仮に7月まで交渉期限・離脱の期限が延長されることになっても、現在、もっとも相違があるとされる問題(アイルランドと北アイルランドの間に国境を再設定しないとの措置を巡るタイムライン)に対する解釈やスタンスが大きく英国とEU間で離れているため、どちらかが大きく譲歩するか交渉スタンスを変えない限りは、合意の糸口は見いだせないかと考えます。そうすると、3月末もしくは7月末には、hard Brexit(合意なき離脱)が現実化します。

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