年明け早々、100名に100万円、計1億円プレゼントを実施し耳目を集めたZOZOの前澤社長ですが、会社自体は2007年の上場以来初の減益となってしまうようです。一体、同社に何が起きているのでしょうか。今回の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』では著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、ZOZO失速の原因を多方面から分析・考察しています。
ZOZO、業績下方修正。上場以来初の減益へ
衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZO(ゾゾ)は2007年の上場以来、初の減益の見込みとなった。1月31日に2019年3月期の業績予想を下方修正し、最終的なもうけを示す純利益は従来予想より36.4%少ない178億円(前期比12%減)になる見通しだと発表した。
売上高は従来予想より19.7%少ない1,180億円(同20%増)、本業のもうけを示す営業利益は33.8%少ない265億円(同19%減)にそれぞれ下方修正した。期末配当も従来予想の22円から10円に引き下げた。年間配当は前の期を5円下回り、1株あたり24円になる見通し。
下方修正はプライベートブランド(PB)事業のつまずきが大きな要因だ。19年3月期にPB事業で200億円の売り上げ目標を掲げていたが、18年4~12月期実績は22億円にとどまり、19年3月期は目標のわずか15%にしかならない30億円で終着しそうだと発表した。これによりPB事業で19年3月期に125億円の赤字を計上する見込みだという。
PB事業の商品を消費者が注文する際に採寸で必要となる「ゾゾスーツ」を無料配布したが、計測ができないなどのトラブルが相次いだほか、配送に遅延が生じるなど生産体制の問題が生じたことなどが影響した。
ゾゾスーツで採寸したデータはゾゾタウンに出店するブランドの商品にも使えるのでゾゾタウン事業の売り上げも伸びると見込んでいたが、ゾゾスーツを配布しても、計測する人が想定よりも少ないなど思ったような効果が得られず、売り上げは伸び悩んだ。
ゾゾスーツの生産は大幅に縮小する。ゾゾスーツなしでも商品を買える機能を強化するなどでゾゾスーツの需要が低下するためだ。19年3月期に600万~1,000万枚を配布する計画だったが、230万枚にとどまる見込みだという。
ゾゾが同日発表した18年4~12月期の連結決算は、売上高が前年同期比26.6%増の897億円、営業利益が12.4%減の206億円だった。純利益は16.1%減の136億円となった。
注目が集まっていた、有料会員サービス「ZOZOARIGATO(アリガトー)メンバーシップ」に端を発したアパレル企業のゾゾタウンへの出品取りやめ問題についての詳細も発表があった。ゾゾによると、1,255ショップ中、42ショップが出品を停止しているという。いわゆる「ゾゾ離れ」が顕著に起きていることが明るみとなった。
アリガトーは年間3,000円(税別)または月500円(同)の会員料を払うと、ゾゾタウンで常時10%引きで買い物ができるというもの。これに対して、割引きによるブランド価値の低下を危惧したアパレル大手のオンワードホールディングスなど一部の企業が反発、出品停止が相次いだ。
ゾゾによると、出品停止中のショップの取扱高は1.1%で「業績に与える影響は軽微」(前澤友作社長)だという。アリガトーは今後も続け、2月をメドに、割引価格を表示するかどうかを出品企業が選べるようにするなどの対策を講じるという。
だが、これでゾゾ離れが止まるかは不透明だ。また、直接的な業績への影響は軽微かもしれないが、ブランドのゾゾ離れが加速することでゾゾタウンのイメージ悪化が避けられず、それに伴いユーザー離れも加速する懸念が拭えない。さらに、出店するアパレル企業との信頼関係が構築できず、キャンペーンなどで協力が得られないなどの不都合が生じないとも限らない。楽観視はできないだろう。
吹き出したマイナス面のマグマ
このようにして、ゾゾ離れや業績悪化が生じたわけだが、渦中の人、前澤社長は、女優との熱愛を宣言したり、個人資産1億円を投じて「100万円を100人に現金でプレゼント」する企画を実施するなどして世間の嫉妬や反感を買っている。注目を集めるためにとった手段が上品とはいえず、それらのマイナス面がマグマのように吹き出している側面がある。「そんなことをしている場合ではない」との声は少なくない。
前澤社長は注目を集めるためにこれらを意図的に行ってきた。注目されることでゾゾタウンの知名度を上げ、それによりユーザーを獲得して業績向上につなげる思惑があったと推測できる。前澤社長が話題を振りまくことでゾゾや自社サイトの露出を増やす狙いがあったのだろう。
また、株価対策の側面もあったと思われる。ゾゾの株価は、昨年7月に過去最高値の4,875円を記録した後は下落が続き、“1億円キャンペーン”発表前日の1月4日には昨年来安値の1,843円にまで落ち込んだ。半年間で実に6割超下がった計算だ。昨年来安値をつけた翌日にキャンペーンを打ち出したというタイミングを考えると、株価下落に危機感を覚え、私財を投げ打って株価の下落を食い止めようとしたと思われても仕方がないだろう。
だが、そういった行為は危険だ。確かに注目を集めることはできるだろうが、一方でブランド価値が毀損するリスクをはらむ。それを懸念する人は少なくない。株価が下落しているのはブランド価値の毀損が一因との見解を示す人もいる。「悪名は無名に勝る」とは言うが、度が過ぎればマイナス面が上回りかねない。人々の嫉妬や反感、ブランド価値の毀損による悪影響を過小評価してはならないだろう。
いずれにせよ、良い悪いは別として、前澤社長の羽振りの良さが現状目立っているわけだが、一方で忘れてはならないのが、羽振り良くできるのもゾゾで働く従業員の頑張りがあってのものであるということだ。「釈迦に説法」かもしれないが、このことは指摘しておく必要があるだろう。
すべては「自分で蒔いた種」か
ゾゾは19年3月期に減益となる見込みだが、それでも莫大な利益を叩き出す企業であることに変わりはない。純利益は前期比で12%減る見込みだが、それでも178億円だ。売上高の見込みが1,180億円なので、売上高純利益率は15%となる計算だが、これは極めて高い数値だ。減益とはいえ、ゾゾはまだまだ日本で屈指の「儲かっている企業」といえるだろう。
そういったなか、「儲かっているのだから従業員に還元すべき」という声がある。ゾゾに所属する非正規のアルバイトと派遣社員の人数は18年3月期平均で計1,860人。期末の正社員と準社員が904人なので、両者を合わせた数に占めるアルバイトと派遣社員の割合は67%にもなる。非正規は必要がなくなれば簡単に解雇されてしまう。しかし、そういったことから守るための労働組合はゾゾには存在しない。そういったこともあり、儲けた利益を非正規を中心に還元せよとの主張だ。
「すでに十分な給与を支払っている」などと言って簡単に片付けられる話ではなくなっている。そういった主張が出るのも、羨まれるほど儲けているためだ。このことには細心の注意を払うべきだろう。
これらは全て、前澤社長の言動が人々の嫉妬や反感を買っていることが原因になっているようにも思える。現在、前澤社長やゾゾは、マスコミや世間による“あら探し”の標的となっている状況だ。こうなったのも、前澤社長やゾゾが世間の反発を買う形で注目集めをしてきたためではないか。そうなった今、前澤社長やゾゾは立ち居振る舞いを見直すべきではないだろうか。
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