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アイドル暴行事件と同根。自分は悪くないと考えるいじめの加害者

先月、とあるアイドルがSNSで公表した痛ましい事件。被害女性がステージ上で謝罪したことも大きな話題となりましたが、なぜ彼女が謝らなければいけなかったのでしょうか。今回の無料メルマガ『いじめから子どもを守ろう!ネットワーク』では、被害に遭ったアイドルが所属する運営会社といじめに対する責任を取ろうとしない学校の共通点を指摘し、厳しく批判しています。

イジメ被害者は、世間にあやまらなくてはいけないのか

「Mちゃんは悪くない!」と、ステージ上の若い女性アイドルに声がかかる。12月上旬、人気のアイドルグループの女の子が、自宅マンションで男たちに襲われた。自宅は安心のオートロックマンションのはずなのに、なんと自室に入るところで加害者たちに口をふさがれ、自室に入り込まれそうになった…、としたら、どんなに恐ろしかったことでしょう。

犯人たちは逮捕されたが12月下旬に不起訴処分になり、事件は、人気アイドルが被害者であるのに、報道されることもなかった。ところが、1ヶ月後、被害女性がSNSで事件を公表した。

(運営の責任者は)悪いことした奴だって解雇するって言ったくせに。なんも対処してくれてなくて

ずっと言いたかったけど、全部対処してくれるって言ったから、この1ヶ月怖かったけどずっと待っていた。だけど結果何もしてくれなくて

事件は大反響を呼んだ。大きな騒ぎとなったことで、事件公表2日後のステージ上で、「お騒がせして申し訳ありません」と、彼女は、ひとりで謝罪した。TVでファンの一人がインタヴューに答えていました。

「被害者なのに、なぜ彼女が謝らなければならないのか

普通の常識ある社会人であれば、そう考えるのが普通のことです。批判の的になったのは運営会社でした。なぜ被害者を守れないのか。なぜ1ヶ月も放置したのか。だれしもそう思うはずです。

この事件の犯人は不起訴処分になった、ということでしたが、不起訴は無罪ではありません。実際に、事件は起きていたのです。「不起訴」の理由は明らかではありませんが、日本の場合、不起訴率は、5割にもなるとのデータもあります。日本では、検察官が起訴すればほぼ99%が黒(有罪)になります。一般的に軽微な事件で初犯の場合、「今回だけは許してやる。今度やったらただではすまない」と検事が厳しく申し渡して、不起訴処分にすることもあるようです。不起訴でも逮捕歴は残りますし事件捜査の書類等は保管されます。「不起訴」になったからといって、事件がなかったことになるわけではありません。

さらに、この事件では、被害者の女性は、Twitter(ツイッター)で、「あるメンバーに公演の帰宅時間を教えられ、またあるメンバーに家、部屋を教えられ、またあるメンバーは私の家に行けと犯人をそそのかしていました」という発言をしています。運営会社は「帰宅時間をもらしたメンバーはいるが違法性のある行為をしたメンバーはいない」と発表しています。ここで、違和感を感じたのは私だけではないと思います。

不起訴にはなりましたが、犯人たちの犯罪行為があったから警察や検察庁が動いたわけです。捜査の過程で、グループ内の女の子たちが事情徴収されるのには、根拠があります。実際、たしかに直接手をだしたのは男性ですが、そそのかしたり、住まいの住所や帰宅時間を教えた人間がいるならば、犯罪の共犯者として責任追及されることもありうるからです。

つまり、運営会社は、被害者よりも、犯人たちの共犯かも知れない女の子たちのほうを守ったのです。

ことが公になって、自分たちの運営管理のマネジメントの悪さが表面に出てきたり、評判が下がること、つまるところは、売り上げが落ちることを避けたいわけです。そうなると、被害者ひとりを抑え込み、「しゃべるな」「広げるな」という圧力をかけることは容易に想像がつきます、

結論として、会社擁護とその外見的名誉やブランドを守るために被害者の救済を困難にしたり隠ぺいしてはならない、と声を大にしていいたいのです。

しかし、一番、重要なことは、加害者が被害者に謝罪することなのです。たいていの場合、加害者側は、「自分は悪くない」と思っています。「ささいなことで大騒ぎする、被害者こそ悪いのだ」、「自分のほうが被害者だ」と思っています。

実は、学校のいじめ問題でも同様のことが日本各地で起きています。少なくとも、同じクラスや部活といったグループの中に、被害者と加害者の両方がいたならば、即座に対応しなくてはならないでしょう。

ところが、先の運営会社のごとく、「事実関係の確認や人間関係の把握が先だ」、「第三者委員会に委ねる…」といった先送りにし、全く判断をせず、逃げる学校があとをたちません。時間だけが、過ぎていきます。それはなぜでしょうか。

第一に、なにが善でなにが悪かわかっていないということ、第二に、悪行を行う人をしっかりと反省させる指導法を持っていないこと、第三に、人数の多い側つまり加害者側に対しての指導を避けようとすること、第四に、時間の経過によってうやむやにしたいこと、以上のように、学校は責任をとりたくないのです。だれも判断せず、物事を決めず、雲散霧消にしたいのです。

一般的に、世間で知られた会社であるならば、もし不良品や悪いサービスをしたら、社長が謝罪し、責任をとって退任したりします。ルールを守るというコンプライアンスが高いことが組織に対する信頼であることを世間は知っています。

ひるがえって、学校という組織は、「最も責任をとりたくない組織」です。その結果、そうこうしているうちに、被害者やその家族は精神的に追い詰められていきます。

仙台市で痛ましい事件が起きました。いじめを苦にして、小2の女子と母親が無理心中したのです。被害者側の父母が学校に対して出した要望書を、なんと学校が、加害者の父母にそのまま見せているというのです。あまりにお粗末な学校側の対応が報道されています。

悪いのは、学校に手間をかけさせる被害者なのでしょうか?「自分はやっていない。自分のせいじゃない」といいはる加害者に、自分自身の心に向き合うように導き、「自分がされて嫌なことを他人にしない」という黄金律を教える、この原点から始めなければならないのではないでしょうか。

多くの思春期、青年期を生きる女性たちをお預かりする運営会社も、子どもたちを導き、教育し、未来をあたえる学校も、被害者に謝らせたり、記者会見をさせたり、涙をながさせたりしないで、時間伸ばしをせず、正々堂々と、責任者や校長が出てきて「守ることが出来ず、申し訳なかった」「二度と悲しい想いはさせない」「責任は私がとります」と言うことが先なのではないでしょうか。

解決しようと覚悟すれば、おのずと道は開かれていきます。いじめから子どもを守ろうネットワークは、いじめを解決する支援を惜しみません。

前名古屋市教育委員会 子ども応援委員 スクールソーシャルワーカー
現・福祉系大学 講師 堀田利恵 (ペンネーム 村崎京子)

image by: Shutterstock.com

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【著者】 いじめから子供を守ろう!ネットワーク 【発行周期】 週刊

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