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発射ボタンに手を置いた金正恩。会談決裂で追い詰められる北朝鮮

事実上、決裂という結果に終わった第2回米朝首脳会談。その理由のひとつとして、全ての生物化学兵器なども含めた完全な非核化を求める米国の厳しい要求には北が応じられないことが挙げられています。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年の日本人著者が、「北朝鮮が核開発に固執する理由」を詳しく解説した上で、追いつめられた金正恩の今後の動きに充分警戒が必要であると記しています。

非核化の定義がはっきりした

トランプのディールの内容がボルトンによって明らかにされた。全ての核施設はもちろん生物化学兵器など大量殺戮兵器も含めて全て除去するということ。これが米国の要求する非核化の定義であったわけだ。

北朝鮮の3月1日真夜中の発表では、ヨンビョンの核施設を除去するから経済制裁の一部でも解除してくれという要求を北はやったということだったけれど、トランプとボルトンの発表はそれと真っ向から反する内容だ(ヨンビョンの核施設を除去するかわりに全ての制裁を解除してくれと北が要求してきたとトランプは記者会見で語った)。

どちらが事実かはわからないけれど、どちらにしても、米国の考えている非核化の定義がはっきりしたという点では今回のハノイ会談、失敗ではないと筆者は思う。

首脳会談にいたるまでの2か月あまりの期間、米および北の高位幹部らがどんな交渉をしてきたのかが非常に疑問だけれど、トランプの考える非核化の定義がはっきりしただけでも、なんとなく安心できる感じだ。

これに対して金正恩委員長がどのように米との対話をもっていくのか。非常に注目されるところだが、予想がまったくつかない。「ヨンビョン+α」の核施設の除去、さらには生物化学兵器など大量殺戮兵器の除去をトータルで進めることがトランプのディールの内容だけれど、北がそれに全面的に応じるとはどうしても考えられない

ヨンビョンを除去するかわりに制裁一部解除、その他の核施設を除去するかわりにさらに制裁一部解除、ICBMを除去するかわりにさらに制裁一部解除、生物化学兵器を除去するかわりに制裁一部解除、云々と、ちょこちょこと小刻みにシーソーゲームをしていくことだけが北朝鮮としては可能と考えるが、どうだろう。

一発除去をやってしまったら、北は丸腰になってしまって、何の圧力もなくなってしまう。そういう状況になるとは絶対に考えられない。米との長い駆け引きゲームがいよいよはじまっていくものと思われる。

北はもうこれ以上経済制裁下では立ち行きが危うい状況である。何とかせねばならぬ。指導者である金正恩の手腕が問われるところとなった。

戦争が起きるとすれば、こういう状況に追い込まれたときに最後のあがきとして戦争が起きる。日本の真珠湾攻撃も、同じようににっちもさっちもいかない状況に追い込まれた日本が最後の活路を見い出すべくはじめたものだった。北が戦争のボタンを押さないことを祈るばかりだ。

ところで、北が核を作り核にこだわり続ける理由を見てみたい。1950年6月25日に開戦の火ぶたが切られた「朝鮮戦争」。北朝鮮は韓国が先に攻撃をしかけてきたから攻撃したんだといい、韓国は反対に北が先に攻撃をしかけてきたから攻撃したんだという。真実は神のみぞ知るである。勿論、南の人も世界の大部分の人も皆北朝鮮から攻撃をしかけてきたと考えている。筆者もそれが事実だと思うけれど、最終的な証拠がない立場ではなんともいえないという感じもしている。

とにかく戦争ははじまった。ただちに米国を中心とするUN軍が韓国を応援するために軍を派遣する。16か国の助けが来た。日本は1945年の無条件降伏の状態でいたから、米国の軍事基地的な役割を担うこととなり、これは戦争特需(朝鮮特需)といわれるように朝鮮戦争を肥やしにして莫大な儲けをむさぼることになる。日本の経済成長はこの朝鮮特需が土台となっている。

そして1953年7月。休戦協定。調印したのは国連軍総司令官=米国陸軍大将マーク・W・クラークと、朝鮮人民軍最高司令官・朝鮮民主主義人民共和国元帥・金日成と、中国人民志願軍司令官・彭徳懐(ホートクカイ)であり、大韓民国の場合は大統領はおろか司令官すら署名していない。当事国の韓国が完全に無視された状態であった。

1953年に、戦争が終わったのではなくて休戦しただけなのだ。だから今も北朝鮮は戦争状態(戦時体制)にあるわけだ。どこと大義としては米国とでも現実的には韓国と戦争状態にあるわけだけれど。大義としては米国と書いたけれど、実際、米国を相手に戦っているというのが北朝鮮の立場だ。

その米国という国は、自分の気に入らない国があれば地球の裏側まで行って戦争しかけるアフガンもつぶされた、イラクも潰された、リビアも潰された。次は北朝鮮だろう。俺たちは強いんだと見せるしかないのが北の立場だ。虫けらでも潰すようにさまざまの国を破壊してきたアメリカ。

そのアメリカに潰されないためには核を持つしかないというのが北朝鮮の偽らざる心情だ。金正日のころから延々と核、核、核といって核製造だけに邁進してきた理由はこういうところにあるわけだ。北朝鮮の立場に立って考えれば、核もいたしかたなし、という気もする。この伝家の宝刀である核をなくせと今アメリカが言っている。核だけじゃなくて、全ての生物化学兵器やICBMなども。どうするんだろう。

反原発の先頭に立っている原子炉や原爆の専門家である小出裕章さんは、北朝鮮はいまだにまともな原爆や水爆はもっていないはずだ、と、どこかで言っていた。核実験はやっているから、なにがしかのものは持っているはずだけれど、広島や長崎型のまともな核爆弾はもっていないということなのだろうか。いずれにしても、今後数週間の北朝鮮の動きから目を離せない状況ではある。

image by: Hadrian / Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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