利用者一気に8万人。メールで届く立ち読みサービスが画期的な訳

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一般的に、自から能動的に好きな情報を受け取りにいくイメージが強い「ダイジェスト」。しかし、今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』で著者のMBAホルダー・青山烈士さんが紹介しているサービスはその逆を行くものですが、利用者は8万人に達するほどの人気を獲得しています。何がそこまでの支持を集めているのでしょうか。青山さんがその戦略と戦術を分析しています。

何が欲しいかが明確でない方に合わせてサービスを提供する

第一線のビジネスパーソン8万人超が利用中の人気のサービスを分析します。

● 情報工場が提供している書籍ダイジェストサービス「SERENDIP(セレンディップ)」

戦略ショートストーリー

情報が溢れていて何を選べばいいのかわからない方をターゲットに「本を選書する力など」に支えられた「気づき・新しい発想が得られる」等の強みで差別化います。

A4用紙3枚程度の読みやすさまるで立ち読みしているようなリアル感があるダイジェストを通して得られる様々なジャンルの情報が顧客の支持につながっています。

■分析のポイント

ダイジェストとは、要約された出版物や放送番組などのことですが、ダイジェストと言えば、サッカーなどスポーツのダイジェスト本(雑誌)やTV番組は昔からありますね。

例えば、サッカーJリーグのダイジェスト番組であるNHKBS1の「Jリーグタイム」は基本的に毎節9試合のダイジェストを解説を交えて、放送されています。サッカー好きでも、9試合を全て観る時間を確保することは難しいですから、短い時間にまとめてくれるダイジェスト番組はありがたい存在だと思います。

通常、ダイジェスト番組の視聴者は観たいものが明確です。当たり前ですがサッカー好きの方は、サッカーが観たくてサッカーのダイジェスト番組を観ます。

一般的な書評サービスのユーザーの場合も、自分が関心を持ったタイトルの本や読みたいと思った本の書評を読んでみるというのが主な流れだと思います。

しかし、セレンディップの場合、そうではありません。何を読みたいか何を読むべきかわからないユーザーに対してダイジェストサービスを提供しているのです。この違いがポイントになります。

一般的なダイジェストや書評と明らかに異なるのはユーザーのスタンスです。ダイジェストや書評のユーザーは観る(読む)側が自分で行動を起こすので、能動的であると言えます。

一方で、セレンディップは、待っていれば届く形の受け身です。選んでくれたものを読むため、ユーザーにとっては、選ぶ手間が省けるというメリットがあります。さらに、自分で選ぶ場合には、自分の関心のある分野に偏った選び方をしてしまいがちですが、セレンディップは幅広くビジネスパーソンに必要な書籍のダイジェストを提供してくれます。このことが、ユーザーの知識の幅を広げるという価値ににつながっているわけです。

この価値が法人顧客に評価されているところだと考えられます。社員のインプットの量や質はアウトプット(パフォーマンス)に影響を与えると考えて、企業としては投資しているのでしょう。企業にとって、社員のパフォーマンスを上げることは大きな課題ですからね。

上記のように、何が欲しいかが明確でない方に合わせてサービスを提供していることが、ユーザーの知識の幅を広げるといった新しい価値(差別化)につながっています。その新しい価値を提供するうえで、コア・コンピタンスである本を選書する力や本のダイジェストを構成する力が重要であり、競争力の源泉となっているわけです。

また、ユーザーや法人顧客だけでなく、書籍の著者にとっては、認知度向上につながりますし、出版社にとっては、販売数増加が期待できるといったメリットがあることもセレンディップが成長している要因の一つと言えます。

情報工場は、個人向けサービスに力を入れていくようですので、今後の動きに注目していきたいです。

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