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官製相場の限界。日経平均にもNY株にも出た、株価大暴落のサイン

先日掲載の「増税延期の可能性も。内閣府発表『景気すでに後退入りか』の衝撃」でもお伝えしたとおり、政権が強調するアベノミクス効果に疑問符がつき、少子化問題も有効な政策もなされぬまま放置され続けるなど、ますます見通しが暗くなってきたように思われる我が国の未来。日本はこの先、沈んでいってしまうのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、世界経済の潮流を分析するとともに、日本は少子高齢化に適合した構造改革と新しい産業を興すしかないとし、その具体的な方法を記しています。

三尊天井の形成

NY株も日経平均も高値圏での暴落サインである三尊天井を形成した。このため、今後株価は大暴落になる可能性が出てきた。今後を検討しよう。

日米株価

NYダウは三尊天井を形成した。第1の山が、2018年01月22日26,616ドル、谷が2018年3月26日23,344ドル、第2の山が2018年10月01日で26,951ドル、谷が2018年12月24日21,712ドル、第3の山が2019年2月28日26,241ドルで、3月8日25,450ドルと下落で三尊天井が形成された。

日経平均株価も三尊天井を形成した。第1の山が、2018年01月22日24,129円、谷が2018年3月26日20,347円、第2の山が2018年10月01日24,448円、谷が2018年12月24日18,948円、第3の山が2019年3月4日21,860円、3月8日21,025円と430円安で三尊天井が形成された。

日米株価ともに三尊天井を形成したが、第1の山で高値トライ、第2の山で高値トライして更新できたものの力尽き、第3の山で越えられないことが、確定してショートやロングの利食いで大幅に下がる事になる。

ECBのドラギ総裁が早期の利上げをしないと宣言し、金融緩和の方向も示唆したことで景況感が大きく転換した。世界の主要国中銀の全「ハト派化」の裏には世界経済減速懸念がある。

そして日本も景況感が下がったが、株価の維持をNY株価上昇期待と日銀のETF買いでしたが、中国経済の減速で、ルネサスが半導体工場を2ケ月間も操業停止というし、外食産業も赤字に転落や減収減益になり、全般的に企業業績が落ちている。それを中央銀行が買い支えても無理がある

米国は日本とは違い、景況感が悪くない。雇用統計でも2万人増と予測値18万人増より大きく悪いが、賃金上昇が3.4%増になり、労働参加率も63.2%で高水準維持している。

製造業の景況感もよく、米貿易赤字が過去最大8,787億ドルと増大したが、米中貿易戦争の良い面も出ている。その分、NY株価の下落も小さい。

その上で、NY株価を高値維持しているのは、FRBの利上げ停止と米政府の強力なPKOと自社株買いであり、官製相場であることは間違いない。米政府の強力なPKOでNY株価もピーク株価の近くまで来た。

もう1つの上昇要因が、2018年7月にはAI投資がNY株の取引量の半分になったが、まだAIの学習が十分ではなく、新聞の見出しを重視しているために、上にも下にも大きく振れるため、ここまで上昇したようだ。AIの学習が進むと上下の幅は徐々に小さくなるかもしれないが、現時点は振れ幅が大きい

しかし、米国の対中関税UPで中国経済が減速し、その影響で欧州や日本経済が明確に減速してきたが、まだ製造業が堅調で米国経済の減速は限定的である。しかし、今後の世界経済の減速で米国も影響を受けることになる。

その上に、日本の1月景気動向指数一致CIが前月比-2.7になり、ECBもハト派になったことで、急激に景気減速観で高まり、この日米の官製相場の限界に来たようだ。

ということで、AI投資も相まって、世界的な株価暴落になるようだ。日経平均は、19,000円割れの可能性も高い。そして、エリオット波動のCで奈落の底に落ち、今相場は完全終局になる。そして、上げ相場になるまで当分かかる

そして、前回述べたように、景況感が悪いのでインバース系の持ち高が極端に増えて、強気筋が株価を踏み上げて、投げ売りを誘っていたが、このコラムの読者の多くも、空売りかインバース系に投資していると思うが、今回は弱気筋の勝利になる可能性が高まったようである。

中国経済

全人代は、3月5日から15日まで開催されている。この中で、今年のGDP伸び率目標が6~6.5%と下げたが国防費は7.5%増、1兆1,898元規模。厳しい財政から20兆円近くを割き、強軍化建設に力を入れているという。このことから、習近平国家主席の正当性を経済発展から中国の強国化実現達成にするようだ。軍事覇権を米国から奪う方向である。

中国経済の減速が明らかになり、中国の2月貿易統計によると、ドル建て輸出は前年同月比20.7%減となり、減少率は2016年2月以来の大きさとなった。一方、輸入も3カ月連続で減少した。

1~2月累計の世界全体に対する輸出と輸入を合わせた貿易総額は、前年同期比3.9%減の6,627億ドル(約73兆8,000億円)で、輸出は4.6%減の3,532億ドル、輸入は3.1%減の3,095億ドルとなった。

この影響で機械・自動車などを輸出している欧州や資源を輸出している豪州、そして日本の経済も減速したのである。

中国がくしゃみをすると、世界は風邪を拗らせるという関係になっている。現時点でも、経済覇権は中国にあるような感じである。

しかし、米中通商交渉は現時点でも協議が難航しているようだ。米国の中国構造改革要求9項目中5項目は合意しているが、4項目は拒否しているようだ。米中首脳会談を3月後半から4月に延期するようである。

米中首脳会談で、輸入関税撤廃などの合意できないと、株価は大きく下落し、合意できれば、ある程度戻すことになると見る。しかし、部分合意はあるかもしれないが、そう簡単に全面合意できると見ない方が良い

現代金融理論

米中通商交渉の難航や景気減速感が出てきたことで、トランプ大統領は、日本と同じような金融財政政策を取り、壁建設やインフラ投資で、財政赤字を増やしてでも景気を維持して株価も維持をしたいようだ。その分国債を増やす方向に舵を取りたいが、その金融財政政策を裏付ける現代金融理論(Modern Monetary Theory)が、米国で大きな議論を呼んでいる。

独自の通貨を持つ国の政府は、通貨を限度なく発行できるため、デフォルト(債務不履行)に陥ることはなく、政府債務残高がどれだけ増加しても問題はない、という考えだ。しかし、パウエルFRB議長は、2月26日の議会証言で「自国通貨での借り入れが可能な国にとって赤字は問題でないという人もいるが、私は間違っていると思う」と明確に否定した。

米国は債権国の日本とは違い、債務国家であり、国債の売り先は海外で、危機になると逃げ足が速くて、ドル安と悪い金利上昇が相乗的に進む可能性が高いことになる。

しかし、トランプ大統領は、ドル高に誘導するFRBを再度、批判している。2,200兆円もの債務を抱える米国政府としては、FRBに長期金利を日本と同じように0%近傍にしてほしいようであるが、そうするためには、FRBが米国債を買うしかないことになる。量的緩和ということでドル安にもなる。

そのことを受けて、FRBが8月から利下げやQEを開始するという観測も出ている。この予測の根拠もMMTのようである。

しかし、FRBは、現在の財政赤字は問題であり、軍事費の削減を求めている。量的緩和と軍事費削減の条件取引のようである。トランプ大統領もシリアやアフガニスタンからの撤退や米韓軍事演習の中止や米軍駐留経費に5割を上乗せた駐留支援費を駐留している国に要求するなどで軍事費の削減を行い始めた

ということは、米国は、中国に経済的な覇権は取られているが、完全に軍事的な覇権国家も止めることになる。その方向に事態は進んでいる。米国は、巨大な軍事費を支える財政基盤を失くしている。

日米交渉

トランプ大統領が「安倍首相は7工場を米国に移すと話していたが、もっと移すべき。日本との貿易赤字は大きすぎる」とツイートした。

3月から日米交渉を開催すると、ライトハイザー通商代表は言うが、中国との交渉を進めている間は、日本まで手が回らないはず。ということで、4月以降になると見る。

自動車や部品などの工場を米国に移して、中国も米国産の部品や自動車を優先的に買うので、日本企業からすると、米国に工場を移すことは有利になる。米国労働者も喜び、トランプ支持者を増やす効果がある。日本では人手不足になり、日本から消費地に工場を移す必要が出ている。地産地消経済を推進するしかない

その上に、農産品、LNGや石油などを米国から大量に輸入して、黒字を失くすことである。中東から石油、LNGの輸入を削減して、中東の戦争による石油途絶リスクを下げた方が良い

しかし、自動車の輸出数量限定になると、その数量にもよるが管理貿易体制を引くことになり、日本の構造改革とは逆向きになる。

もう1つの為替管理の問題であるが、円安防止ではなく、円ドルリンクで、1ドル=105円の5円幅で無限スワップでリンクして、両国の通貨を繋げて両国が連携してハイ・インフレを起こす事が重要である。日米で通貨価値を下げて国債債務残高の重みを消すしかない

景気後退期の政策は

今までも述べてきたが、日本の未来を目指した構造改革を行う必要がある。資本主義が行きついたところが、社会主義であるというマルクスの言葉を実現しているのが、日本だと思っている。

このキーは、能力差による著しい貧富の差を作らないことである。ある程度の貧富の差は仕方がないが、行き過ぎないことである。日本は縄文時代から人間関係を重視してなるべく平等にしていた。

集団社会では、それが社会の安定になり、犯罪も少ないことになっていたが、工業・ハイテク社会になり、徐々にその原則が崩れてきた。これを取り戻してその上に経済的な富を増やすことである。

日本人は江戸時代でも、皆が助け合って暮らしていたから、皆が笑顔になれたようである。西洋人から見ると、貧しいのに皆が楽しそうであると記述している。

結果の平等も少しは必要なのである。皆が安定的に暮らせて初めて、社会の安定が成り立つからである。日本が今後、今より衰退して貧しくなる可能性があるが、しかし、その原則の上で政策を打つことである。新自由主義経済では日本は難しい。平等を志向した社会的な資本主義のアプローチを取ることだ。江戸時代の統治思想に近い。この統治思想のために、論語を思想教育の中心に据えたのである。為政者やリーダーは、私より公を優先する徳が必要と説く。

短期的な金融政策は、前にも述べたように、アクロバット的な金融政策しかない。長期金利は1%程度にして、短期金利は0%にするが、国債を売って長期金利を高める必要にもなる。そして、株価を下げないために、ETF買いはその幅を増やし、ある基準より高い時にはETFを売り、日銀の株保有量を調整することである。21,000円を基準にして、21,500円以上では売りでよいと思う。より強い統制経済化することである。通貨連合により日米でハイインフレを起こすことも含まれる。しかし、いつか矛盾がでてくるから、長く続けることはできない。どこかでは正常化が必要である。そのためには、新しい産業と強力に構造改革を進めることである。

ということで、長期的な政策は、少子高齢化に適合した構造改革と新しい産業を興すしかない。世界経済が冷え込み、日本企業の業績も下降して、税収も減少することになる。ハイインフレにすることで、税収を確保して、年金改革、移民政策、土地制度改革、インバウンド促進、農業水産改革、イノベーション促進で水素社会を作ることである。

規制緩和はイノベーションを起こすために行うことである。リスクを取らないと、何も生まれない。規制緩和をむやみに行いことも弊害があるが、新しい産業を生みための規制緩和は行うべきである。

しかし、貧富の差を広げるイノベーションは拒否することも必要である。ウーバーなどの大都市での規制は、必要である。

さあ、どうなりますか?

image by: Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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