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上手く話せなかったと悩む人に贈る、失敗しない説明のテクニック

人前で話すあらゆるシーンに役立つプロの技を伝えてくれるメルマガ『話し方を磨く刺激的なひと言』の著者で、現役アナウンサーの熊谷章洋さん。今回は…前回の記事「話しながら頭の中を整理する会話術」を踏まえ、話のネタになりそうな要素を羅列しながら、話すべきテーマを絞り込んで膨らますテクニックについて解説しています。

説明や意見を述べるとき、出来不出来が生まれる理由

自分の話し方に不満がある人でも、たまたまうまく話せた経験があることでしょう。例えば、仕事で上司から、〇〇の件について、口頭で報告してくれ、と言われたとき。

〇〇の件のうち、自分が把握している現状の中で、上司に報告して共有しておくべき情報を、うまく表現できて、聞き手の上司が満足し、自分の頭の中もスッキリした。

こういう時もあるのに、逆に、頭がボンヤリしてしまって、話してスッキリできない時もある、むしろそちらの方が多い…。おそらく、過去の成功体験があるからこそ、余計に、できないときとのギャップを不満に感じることでしょう。

なぜこういった、話し方における、出来不出来が生まれるのでしょうか?もちろん、話すテーマ自体への理解が不足している、というような根本的な問題、この点においては、理解が不足していること自体を認識できていないケースも考えられます。あるいは、その時々の環境の違いに左右されていることもあるでしょう。

大勢の人が聞いている前で話さなくてはいけなかったり、聞き手である上司がいつもより偉い人だったり、部下も同席したため、カッコイイところを見せたかったり、話をするその場所が、ざわざわしていて集中できなかったり、と、外的環境から受ける精神的な圧力、それに対抗しようとする「自意識」が、自分の話し方に影響していることは、これまで何度も繰り返し、お伝えしてきました。

簡単に言うと、「主語が私になっているとき」でしたよね。「私は」失敗できない、うまく話したい、というような自意識のことです。それが、緊張するということです。緊張してダメダメだった過去を思い出してみてください。間違いなく「主語が私」になっているはずですから。

こういう自意識から自然に解放され、話す内容に集中でき、「相手のための話」ができたときに、たまたまうまく話せた、と、結果、満足することもあると思います。

「主語が私」という自意識から解放される方法などの話は、ぜひ過去記事でご覧いただければと思います。

そして、もうひとつ、たまたまうまく話せた要因として考えられるのは、与えられた話のテーマと規模が、自分に合っていた、ということです。前回の記事でもお話ししましたが、どんなに話し下手でも、質問されれば上手く話せることがある、というのは、話すテーマと規模を、相手が質問という形で、限定して提示してくれているから。

ここのところ継続的にお伝えしている「横着ファイリング話法」でいえば、相手が、あらかじめ名前の付いた空フォルダーを準備してくれたから、しかもその空フォルダーの大きさが、ちょうど自分の頭の中、持っている情報量に合ったから、なんですよね。

これを応用したのが、「一人しゃべりを続けるコツ」です。「一人しゃべりを続けるコツ」という記事を公開したのは無料メルマガ時代の、もう10年以上前になりますが、要は、相手が質問してくれるから話しやすい、のであれば、自分が自分に質問する形にすれば、永遠に自分ひとりでしゃべり続けられるんじゃね?ってことです。こちらも詳しくは、過去記事をご参照ください。

この「一人しゃべりを続けるコツ」も、「横着ファイリング話法」で言えば、自分であらあじめ空フォルダーを用意することと同義だと思います。

いずれにしても、この「話す枠」「空フォルダー」自分で用意できないと、いつまでも、偶然頼み、つまり「再現性に欠く」話し方にならざるを得ません。これでは真の話し方を磨く訓練にはなりませんよね。

話しながら頭の中を整理しテーマを抽出する会話術

では、前回の続きです。想定していないテーマの話をしなくてはならない状況で、頭の中がまだぼんやり意識の状態です。この話の結論を自分で導いた経験や、実際に話し言葉に変換した経験がないにもかかわらず、

そんなときには、「話を作る過程をも話して聞かせてしまう」んでしたよね。即答で話し始めながら、同時に、自分の頭の整理のための情報・考えの洗い出しをしてしまえばいいのです。

例えば前回記事の例で「人口減少化とわが社」という、想定外の質問に対して答えるとすれば、「日本の人口減少は現状では避けられない、という前提で話しますと、原因は、少子化、高齢化、それによる問題点としては、国内消費・マーケットの縮小、国際的な競争力・影響力の減退、労働力の不足、地方の過疎化、都市部への人口集中など、いっぽう我が社はといいますと、まず現状では、主力事業が〇〇、××、企業哲学は…、得意とする分野は…、売り上げ収益の国内外の比率が…などなど」

話すことで自分の理解を促進しつつ、まずはテーマの洗い出しをしてしまう、「横着ファイリング話法」で言えば、話の枠=空フォルダーだけを、たくさん作ってしまうわけですね。

このようにして、話のテーマになり得るワードを列挙していると、これが、自分の頭の中の整理になるだけでなく、持論を導くための、考える時間稼ぎにもなっています。

ここで、今、自分が問われていることは何か?相手が聞きたがっていることは何か?を、もう一度強く意識してみましょう。相手からの質問に答えるような状況であれば、質問の意図を汲んで、的確に返答しようとしてみましょう。

これには、話の要素を列挙して一旦広げてしまった話の規模を、改めて絞り込む効果があります。そしてこれこそが、話の全体枠を自分で設定することにつながっていきます。

そうしているうちに、自分の中で、何か思う所、ひらめきが生まれませんか?例えば、今、自分が列挙した中で、一番情熱を込めて話せる要素はこれ!とか、今、自分が列挙した要素を、ひとつの性質でまとめるとしたら、こういうこと!とか、あるいは、そういえば、先日の朝礼で、部長がこんなことをお話しされていましたが…とか。

そうです、それこそが、今話すべきテーマ、話の枠=実際に使う空フォルダー、になります。空フォルダーだけ作って、使わない要素もたくさんできましたが、もうこの段階では放置しておきましょう。新しく作ったこの話の枠=空フォルダーのタイトルが、今から自分がする話の本質になります。ここから話を膨らませていきますよ。

では、上記の設問に戻りますね。与えられたテーマは、「人口減少化とわが社」なのですが、今、自分が問われていることは何か?に改めて意識を集中してみると、このなかには、言葉になっていない、言語化されていない主旨、質問の本質が含まれていることに気づきます。

それは、「将来のわが社は、どうあるべきか?」が問われていて、その本質に対して的確に答えていれば、人口減少は、ひとつの切り口に過ぎないのだろう、ということです。ですからここでは、「将来のわが社は、どうあるべきか?」を話の全体枠に据えることにしましょう。

この全体枠を成立させるためには、どういう要素が必要になってくるのか?と考えて、既に提示した各要素を、全体枠に合うように並べ替えればいいわけです。

とすると、例えば私なら、問い「将来のわが社は、どうあるべきか?」人口減少時代、国内マーケットの縮小のリスクに備えるために、海外展開の拡大を急ぎたいところでもありますが、答え「日本国内でのプレゼンスの確立こそ、急務」。理由「それが、海外マーケットにおける何よりの強みになるから」。「価格競争で負けた歴史、世界的な中流層の増加、安い粗悪品ではなく本物の価値あるものにお金を使う傾向、メイドインジャパンのブランド力…」。

その点、わが社は企業理念が〇〇で、得意分野が〇〇、そのための人材、設備に優位性があると、先日部長もお話しされていました…こうした自社の強み、個性、ストロングポイントを生かし、わが社らしさをさらに磨くことで、より付加価値の高い商品・サービスが提供でき、世界でも唯一無二の企業と認識されるようになる…」、「…日本国内でのプレゼンスの確立という点では、例えば、わが社の強みである〇〇において、一点突破で日本一を目指すナンバーワン戦略なども有効かも…」

すると上司が、「なるほど、〇〇日本一のブランドという肩書を引っ提げて、世界で戦えるわけね。」などなど、にやりとする顔が想像できたり(笑)。

わが社がどういう会社であるか設定もしていない状態ですら、「人口減少とわが社」などというテーマを与えられたら、このぐらいの話を展開することは可能なんですね。

わかりやすいように記しておきましたが、まず、問いに対して的確に答え、理由を述べ、具体例で裏付けをしました。ここまでは一般論です。さらにそこから、わが社が実際にどうしていくのがよいか、話を膨らませ、意見やアイデアを足す形にしてみました。

まるで前々から考えていた持論のように見えますが、これ、質問されて、即答で話し始めてしまってからでも作れる話ですからね。「横着ファイリング話法」で持論を形成するコツ、ここまでをまとめると、

こういうことです。

逆に、わかりにくい話、話しながらわからなくなってしまう話では、自分の話の本質が絞りこめておらず、要素だけでシンプルに考えることができず、始めから枝葉末節で膨らませてしまったり、頭の中にこびりついた余計な要素を捨てられなかったりしてしまうことが多いと思います。

ご紹介しているような、本質まで絞り込んだら、あとは膨らませるだけ、という話し方なら、膨大な知識、情報をまとめようとする話し方より、格段に、成功率が高まります。いや、絞り込んだ本質が正解なら、失敗は無いに等しいと思いますよ。

image by: ESB Professional, shutterstock.com

熊谷章洋この著者の記事一覧

アナウンサー歴30年、極限の環境で話し続ける著者が、実体験から会得した「話し方のコツ」を理論化。人前で話す必要がある人の「もっと〇〇したい」に、お答えしています。一般的な「話し方本」には無い情報満載。

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【著者】 熊谷章洋 【月額】 ¥346/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 月曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

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