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NYを毎日2万歩も歩いて判ったAmazon「O2O戦略」の巧みさ

メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』発行人の理央周さんが、20回目となるニューヨークに出かけ、自身の足で歩いて見聞きした最先端のマーケティングの現場のレポートが届きました。第1弾の今回は、ネット通販大手のアマゾンが展開する3種のリアル店舗で実感したO2O戦略の巧みさについてです。ネットとリアルを双方向に上手に行き来させる戦略は、大企業でなくても学べる点が多いと伝えています。

「暮らすように過ごす」をテーマにNYを歩く

先週まで、大好きなニューヨークに行ってきた。ビジネストリップ、MBA取得時の就活、旅行などなど、これでニューヨークに行くのは20回目。今回は、暮らすような過ごし方をすることをテーマに、毎日2万歩くらい歩き回った。その中で、思いがけない発見なんかも多くあった。

中でも、アップタウンウエスト地区で、バンクシーの絵を見つけたことは、驚きだったし、ラッキーだった。また、チェルシーエリアから、ハイラインを北に上がっていったところで、3月15日に新しくできたばかりの、「ハドソン・スクエア」にもいってみることができた。

ちなみに、これは偶然で、「なぜか人の流れが多いな」と、そちらの方に歩いていたら、今年上半期、最大級のショッピングモールが、オープンしたばかり。これも、いつも何かを求めて歩き回っている、好奇心のなせる技なのかと、自分でも納得していた。

今回の、ニューヨークでの発見と、マーケターとしての気づきをこれから数回にわたってレポートしてく。

ニューヨーク アマゾンのO2O戦略

まず、お話ししたいのが、アマゾンの様子。去年の9月に行った時と比較をしてみたい。

特に目立ったのが、アマゾンのO2O(オーツーオー)戦略。O2Oとはオンラインツーオフライン、またはその逆で、ネット(=オンライン)と、リアル(=オフライン)の両方でのビジネスを相互に生かす、例えば、ネットとリアルとで送客し合う、といった考え方。ある意味では、オムニチャネルとも共通する。

言うまでもなく、アマゾンのビジネスは、ネット通販が中心だが、食品スーパーのホールフーズを買収したり、(ニューヨークではまだだが)無人レジのAmazon Goや、アマゾンブックスのような書店を作ったりと、リアル店舗にも力を入れてきているのは、このO2O戦略にあると言えそうだ。

では、アマゾンがどうやってこれらのネットとリアルで、相乗効果を出し、収益をドライブさせていくのかを、具体的に考えてみたい。

ネット通販のアマゾンは、なぜリアル店舗を出すのか?

今回は、アマゾン4スターズという、アマゾンの売れ筋商品を集めたショップができたのでいってみた。場所は、ニューヨークで人気のSOHOというエリアの、比較的中心にあった。

店内には、ネットでのアマゾンの売れ筋商品が、ところ狭しと並べてある。消費者にしてみれば、あのアマゾンでの売れ筋商品、ランキングにある商品がここに並べられているので、メーカーではなく、ユーザー目線で、世の中でヒットしているものを見られると考えるだろう。

すなわち、消費者が買いに来る、いわゆる来店の明確な理由がある。一方で、アマゾンはアマゾンブックスという、リアル店舗も持っている。

ニューヨークに2店舗ある、アマゾンブックスと、アマゾン4Starsとの大きな違いは、書籍の割合が少ないこと。逆に言うと、アマゾン4Starsでは、日用雑貨や家電、消費財などのカテゴリーの商品が大半だ。その点でも、アマゾンブックスとの住み分けがしっかりとできている、と言えそうだ。

アマゾンブックスと共通していて、ここでも目立ったのが、AIスピーカーのアレクサと、電子書籍リーダーのKindleが多く並べられていたこと。これこそが、アマゾンがアレクサとKindleを、PCとスマホに続く新たな販路とし、消費者を囲い込んでいこうという明快な戦略だと言える。

これらの「ハード」をリアルで体験させ、ユーザーが買えば、あとは自動販売機のように、アマゾンの電子書籍や、サービスを購入することになる。

リアル店舗ではあるのだが、アマゾン得意のリピート商材、おすすめによる顧客維持の姿勢が、ここでも保たれているのだ。

ここ数ヶ月でホールフーズはどう変わったのか?

また、半年ぶりに来てみた食品スーパーのホールフーズでは、Amazon Primeのマークがそこここに掲げられていた。もう一つ目についたのは、アマゾンロッカーが配置されているホールフーズが、そこここにあったこと。

アマゾンのサイトで買った品物を、自宅ではなくホールフーズのロッカーに届けてもらう、というサービス。ウォルマートも同じサービスを展開している。

これによって、ユーザーの受け取りが便利になるだけではなく、ホールフーズに立ち寄って品物を受け取る際に、夕食の買い物をしたり、買い忘れたものがあれば買ったり、ついで買いをしたりと、ここでも、消費者購買の相乗効果を見込むことができる。

ホールフーズ、アマゾンブックス、4スターズで共通なことは、支払いの時に「Amazonプライムサービス会員ですか?」と聞かれる点。なぜなら、プライム会員の場合は割引になるからだ。

明らかに、Amazon Primeの会員になって、サービスを受ければ得なことが多いですよ、というお馴染みさんを増やしていこうとする戦略だ。リアル店舗に買いに来たお客さんも、後々はネットで継続的に買ってほしい、ということになる。

こういったネットとリアルの相乗効果を狙うのがO2Oという戦略なのだが、その戦術面においても、さすがアマゾン、という感じのチャネル包囲網だ。

アマゾンのO2Oを、私たちはどう参考にすべきか?

参考になるのは、当たり前だが、インターネットとリアルをうまく使いこなしている点につきる。

顧客の利便性を重視しながら、来店頻度の高い食品を持つホールフードに来店させ、ついで買いをうながすこと。いわゆるクロスセルの仕組みになっている。

また、ユーザーにとってみて、「どこででも買える、受け取れる」という、チャネルの利便性の高さも見習える。

これも商品やサービスにとっては、オフィスでオンラインで注文し、その日のうちに、リアル店舗で引き取って帰るという仕組みは、何も大企業ではなくてもできることだ。

さらに、自店舗に寄ってもらえる仕組みも、大きな参考になる。マーケティング、商売の原点は、顧客を「動かす」ことにある。その意味でも、応用して使える考え方だ。

広告を打つ時に、媒体を組み合わせるのと似ていて、販路も1つに限ることはなく、うまく相乗効果を出すように工夫することが大事なのだ。

また、ニューヨーク在住の流通コンサルタントに聞いた話だと、メーシーズなどに出していた、アマゾンのポップアップショップと呼ばれる仮店舗も、現段階では引き上げ、アマゾンブックスと4Stars、ホールフーズに集約しているとのこと。この集中と選択も重要だ。

チャネルはあればいい、というものではない。当たり前だが、コストがかかる。それも設置コストのみではなく、間接的な人件費など、目に見えづらいコストもかかるのだ。

顧客中心主義を体現している点、そのスピード、そして集中と選択。学ぶところの多い、アマゾンのO2Oだった。

image by: EQRoy / Shutterstock.com

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