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金融機関がいよいよ危ない。令和ニッポンに起こる世界的大転換

日本においては戦争こそ起こらなかったものの、昭和時代に負けず劣らずの激動の世となった平成の日本。いよいよ5月1日より新元号「令和」となるわけですが、人口減少に悩まされる我が国は、何を羅針盤にどの方向に進むべきなのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』で著者の津田慶治さんが、「令和ニッポン」の行く末を占っています。

定常社会の令和時代を予測する

世界的な金利ゼロ時代に突入するようである。MMTという理論を盾に米国も欧州も日銀の量的緩和を永久に行う方向で金融政策をし始めている。このような金利ゼロ社会は、定常社会になったからである。ということで、定常社会の令和時代を予測したい。

日米株価

NYダウは、26,951ドルで過去最高株価であるが、12月26日21,712ドルと暴落したが、その後2月25日26,241ドルになり、3月11日25,208ドルまで下がったが、その後は上昇して4月5日26,424ドルになり年初来高値になっている。この調子であると過去最高株価まで迫る可能性も出ている。強気相場になっている

日経平均株価も、同様に2018年10月2日24,448円になり、12月26日18,948円と暴落したが、3月4日21,860円で3月25日20,911円、4月5日21,807円と3月4日の株価を抜くことになりそうである。こちらも上昇相場に復帰したような感じである。

当分続いた膠着相場から上方向に相場が向かい始めている。FRBの予想値が驚きの今年2回の利下げになり、トランプ大統領とFRB理事候補ムーア氏は、即利下げを要求していることで、市場は安心感に包まれている。そして、10年国債金利も2.3%まで下落して、逆イールドも解消してきた。

ムニューシン財務長官の経済会議PPTでの決定に従い、FRBは、ツイストオペの金利操作をして、イールドカーブをフラット化している。短期国債を買い、長期国債を売るということで、資産規模を増やさないで金利操作をしている。短期金利を上げ、長期金利を下げるので、ドル資金が米国に還流しドル高になり、かつ2,200兆円に上る国債債務の金利を下げて利払いを少なくしている。

PPTの指示でNY連銀は、投資銀行にある債権を買い、その還流した資金で投資銀行に株を買ってもらっている。このため、株価も上昇している。米国金融政策の日本化であり、国債債務を軽減しているが、それでも足りずに、トランプ大統領はドル高が不満であり、利下げを要求して、短期金利を0.5%下げてドル安にして、かつ長期金利も下げて利払いを極力減らすために、量的緩和も必要としている。MMTの理論に沿った金融政策をFRBに要求していることになる。完全に日銀が行っている量的緩和の金融政策である。

このような金融政策になっているので、NY市場参加者は、2度と危機は来ないし、今後10年、株価は上昇すると言い始めている。総楽観相場になっている。このため、FANG株も上昇してきた。下がると押し目買いになるので、株価は下がらない。ジャンク債の金利も上昇しないで流通できる総バブルな状態になってきた。バブルの上に一層バブルが上乗せされてきた。

欧州のドラギECB総裁もMMT理論の金融政策に従う方向であり、世界的金融政策が日本化してきた。永久に量的緩和を行う金融政策にして、金利ゼロ社会にするようである。

日本だけが永久に量的緩和を続けると、円安になり、輸入物価上昇でスタグフレーションになると心配したが、経常収支が黒字であれば、その心配がなくなり、世界は行くところまで行くしかないことになった。永久的な量的緩和を行うと、世界的なミンスキーモーメントまで行くようである。そのポイントに行くまでには時間がまだあることになる。

ミンスキーモーメントとは、投資家が投機によって生じた債務スパイラルによりキャッシュフロー問題を抱えるポイントである。このポイントにおいて、どのカウンターパーティー(金融取引参加者)も事前につけられた高い提示額に対して値をつけることができず、大きな株の投げ売りが始まる。その結果、市場決済資産価格の突然かつ急激な崩壊市場流動性における急激な落ち込みが発生するポイントとのこと。中国が最初にこのポイントに達するはずが、それを国家が過剰な追い貸しで防止している。

ということであるが、ミンスキーモーメントより前に、個々の企業実績で個別株価は修正されることになる。個別企業の実績が下方修正されると株価は下がり、その総合でNYダウは決まるので、油断はできない。実体経済の動向には注意が必要である。

もう1つ、米国の緩和的な金融政策は、将来に大きな禍根を残すことになりそうで、消費税増税は今年10月にできないと永遠にできないことになる。日本の景気を少し冷やことで、バブル拡大を防ぐ効果もありそうである。

そして、米国の鉱工業指数は悪化したが、雇用統計は巡航速度になっているので、景気減速感がない。米国は輸出依存度が少ないので、中国経済の減速がほとんど影響しない。その点、中国への輸出依存度が高いドイツ経済は大幅な減速になっている。日本もドイツほどではないが、影響を受けている

ということで、日本の株価は米国より低くなっているし、日銀介入を嫌気して、18年度海外投資家の売越し額は5兆6,300億円になり31年ぶりの額になって、その株を買ったのは日銀で、5兆6,500億円買いとなって相殺した。

日銀の保有額は29兆円にも上り、東京1部時価総額600兆円の5%になっている。東京市場の魅力がなくなってきていることだけは確かである。そして株価も動かなくなり、市場機能を日銀が壊しているともいえる。儲けが出ない海外投資家がいなくなり、市場参加者も減る可能性が高い。そして、益々株価が動かなくなるはず。

値幅を決めて、その範囲内は介入しないことで市場参加者を増やす必要になってきた。占有率が高いのを防止するために、日銀は買いだけではなく売りが必要になっている。

米中通商交渉でのトランプ大統領の変化

3月末から4月初めに掛けて、交渉が行われたが、トランプ大統領は、「非常にうまくいっている」とツイートするし、習近平国家主席も同様にうまくいっているというが、合意には達しない首脳会談の日程も出てこない

株式市場は、この発言を受けて上昇していると評論家は言うが、この評論はおかしい。何回もこのような発言をしているが、一向に合意しないではないか?

NY市場は、FRBの金融政策に反応しているだけで、米中通商交渉には大きく反応していないと見た方が良い。今の相場は、官製の流動性相場であり民間の実績相場ではないからである。

そのことをトランプ大統領も理解したのか、中国の譲歩がないなら、長期の交渉を厭わないし、合意もしないと強硬的なことを言い始めている。NY市場が重要視していないし経済に大きな影響が出ないことが判明したことでトランプ大統領も変わったようである。

しかし、個別的には酪農や農業には影響が出ているので、2020年の大統領選挙には大きな影響が出るはずであるが、米国全体での支持率は40%と影響していない。ということは、トランプ支持層が都市労働者に変化しているようである。支持層の地盤が変化している可能性もある。

日米通商交渉

そして、日米通商交渉で、中国が買わない農産品や酪農商品を日本に買わせようとしている。それと、自動車工場を米国に建てて貿易黒字をなくそうということである。為替は円高方向に誘導することを求めてくる。今後の日米通商交渉は大変なことになりそうである。

米国は、国際主義から自国優先主義にシフトして、貿易赤字を悪者にしているが、その対象として日本もあることを忘れずに対応策を立てることである。この交渉の結果、円高になると東京の株価は暴落する可能性もある。

定常社会の金融システム

英国のEU離脱やリビアでの戦闘など、世界的な紛争はあるが、大きな経済の変化が押し寄せている。世界経済のけん引役が居なくなってしまったことである。

金利の高い国に資金を投下して、その国の産業を発展させて、その発展の利益を還元してもらい、先進国は利得を得てきた。また、別の言い方をすると、投資資金を得るために資本主義ができたので、資本主義には大きな利益が絶対に必要である。

しかし、発展途上国で金利が高い国の安い労働者が、働かずに投資先に儲けがないと利益の還元もなく、債権の不履行にもなる。このため、労働者が一生懸命働く国に投資する必要がある。このような労働者がいて、かつ賃金の安い国を開発してきたことで、今まで、金利水準7%を維持してきたが、中国の発展で日本・韓国・中国の勤勉な労働者の国の発展が終わり、この条件を満たす次の国がないことで、金利も下がってしまって、金利水準が2%以下になっているのである。

世界的な投資のできない、現状維持の定常社会化になってきたことで、金利水準も低くなっている。このため、投資ができるイノベーションを起こすベンチャーに投資が集まるが、1,000分の1の確率であり、投資効率が低く、かつ投資家が有望ベンチャーに集まるので、投資効率を下げてしまうことにもなっている。ということで、投資回収ができないことになっている

定常社会が現実化しているのに、それに適合した経済モデルがない。資本主義のエンジンである利子がなくなると、一番困るのは金融機関で、多くの人からお金を金利付きで預かり、そのお金を貸出して高い金利で儲けを得ていたが、金利がゼロになると、この仕組みが崩壊することになる。

お金を借りても金利ゼロなら、借りる人が多くなるが、金融機関が貸せるのは、信頼性のある組織しかない。このため、クラウドファンディングが出てきて、借りる人と投資する人をマッチングしている。送金もブロックチェイン技術で仮想通貨によりできるとしたが、円などの現金送金もこの技術で送金が可能であり、金融機関の代わりをし始めている。というように金融機関の代替ができている

現金の代わりにポイント制カードやアプリが出て、金融機関から携帯会社やJR、ネット小売りなどの会社がポイントを管理している。収入も現金ではなくてポイント化できるメルカリは、台風の目になると見る。その内、企業の給与もポイント支払いになると、現金もいらなくなるかもしれない。そうすると、金融機関も日銀も関与できなくなる。ポイントの貸し借り業務も携帯会社などに代わる可能性が出てくる。

もう1つ、日銀のような政府機関が無制限に市場に介入すると、東京市場の株価平均は動かなくなる。企業実績での株価変動しかなくなる。魅力もなくなり、市場参加者が減り、特に海外投資家が大きく減っている。というように不労所得も得にくくなる

定常社会の経済的社会的な仕組みを作り直すことが今、求められているが、それは今の金融機関の存続ができない事になりそうだ。社会変革を積極的に勝ち取ることが企業には、求められることである。このため、金融機関も重い腰を上げて、時代に追従することが必要になっている。

定常社会の競争

働いても定常社会であるので、あまり成長が期待できない。ゼロサム社会であり、新規に出てくる企業が新しいサービスを始めると、既存の会社は負けることになる。負けると、オール負けになり、倒産・撤退になってしまう。厳しい社会である。地域同士や企業同士の戦いと言える。

新サービスの狙いは、卸を抜き低価格で消費者に届けるとか、消費者と生産者を直接取引させるとか、AIやロボットなどで無人化したり作業効率を上げて価格を下げるとか、時間短縮して低価格にするとか、いろいろな観点から出てくる。世界的にこの仕組むを組むことになると見る。

地域の競争は、オンリーワンで人を集められるかどうかにかかる。オタク文化の1つを極めることである。その1つで世界から人を集めることができる。そのためにはSNSで来た人に「すごい」と言ってもらえるかどうかにかかっている。

この時、重要なのが広範な人間関係を作り、新しいサービスをウォッチして置き、早い段階で対抗策を打ち、新サービス会社が大きくなる前に潰すことである。今までは、インターネットという革新的な道具で、新サービス会社を見失った可能性があるが、今後もAIやロボットなどの道具が出てくることで、革新的なサービスができる可能性が高い。

そして、一番重要な広範な人間関係は、親から子に引き継ぐことができるので、家督相続が一番、会社存続で上手くいくことになるが、重要なのは新サービスが自分の敵かどうかを見極めることである。

新サービス会社を叩けないと倒産になるし、それがない分野は、最新技術を機敏に取り入れて、新しいサービスを作り先回りすることである。

人口減少である日本は、マイナスサム社会になり、負けるか勝つかの厳しい企業競争になる。企業も地域も同じで、トップしか生き残れない時代にもなる。

平成の時代は、量的緩和などで安定的に推移したが、令和の時代は世界的な定常社会になり、日本は人口減少社会になり、より厳しい競争社会になる。勝ち残った日本企業は、世界に出ていくことになるが、世界の方がより競争社会であり、新サービス新規商品を生み出せないと難しいことになる。

さあ、どうなりますか?

image by: Twitter(@首相官邸)

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