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カップヌードル味噌「販売中止」に見る地上波CMビジネスの終焉

4月1日に発売されたばかりの「カップヌードル味噌」ですが、11日に日清食品が一時販売中止を発表し話題となっています。同社の予想を上回る売上を記録していたとのことなのですが、なぜ「販売休止」という選択をせざるを得なかったのでしょうか。アメリカ在住の作家・冷泉彰彦さんがメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で、その理由を分析しています。

カップヌードル味噌味、販売中止の原因は?

日清食品はこの4月から新商品「カップヌードル味噌」を発売していたのですが、たった10日で販売中止になってしまいました。「朝ドラ効果」などもあって、カップヌードル全体の売り上げが前年比で3割増と急増する中で、このまま「味噌」がヒットしてしまうと、主力商品であるレギュラータイプなどの安定供給に支障が出ると判断したからだそうです。

思い起こすと、この種のニュース、最近はとても増えているように思います。猛暑であるブランドのコンビニアイスが人気化したと思ったら、「販売休止」。高級な一眼デジカメが発売になったら品薄で発売中止、そんなニュースがとても多いのです。

一体どういう現象なのでしょう。ある商品が売れ過ぎると、生産ラインを増やさなくてはなりません。でも、生産ラインを増やせば固定費になります。その追加生産ラインの固定費を回収して利益を出すところまでは、販売が伸びるかは分からない、となると追加の生産ラインへの投資は断念することになります。

そうなると、小売の現場はいつも品薄になりかえって商品イメージは悪化それを避けるために思い切って販売休止。そういう循環です。人口減とデフレの中で、ギリギリのコスト計算をする中ではそういうことになります。

流通の変化も大きいと思います。カップ麺やアイスというのは、今ではコンビニという販売チャネルが極めて重要になっています。コンビニでは、ギリギリの人力で回している中で、「味噌味ありますか?」「ありません」的な問い合わせになるような「欠品というのは嫌われるのでしょう。

いずれにしても、昔だったら「人気化して品薄」というような現象は、小売の現場も「ヒット商品が出たとして喜んだと思うのです。わざわざ「市場を枯らして火をつけるんだ」的なマーケティングもあったぐらいです。

ですが、現在の小売の現場というのはそうした条件にはなく、どうしても「人気化で品薄」ということになると、「販売中止」「販売再開のメドは立たず」という何とも残念な話になってしまうわけです。

こうなると、マス・マーケティングというものが、益々成り立たないばかりか、CFで稼ぐ地上波というビジネスモデルも相当に難しくなってくるのかもしれません。

そもそも、カップ麺という一種のイメージ商品については、今後も流行の変動が大きくなることは予想できるわけです。とすると、製造にあたって低コストを維持しながら固定費を削減するような画期的なビジネスの転換」が必要になるかもしれません。安藤百福氏だったら、一体どんなアイディアを繰り出してくるでしょうか?

image by: 日清食品 - Home | Facebook

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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