いま日本では、後継者難による中小企業の廃業が加速しています。技術・人材・顧客が揃った事業が潰えてしまうのは大きな損失です。今回の無料メルマガ『税金を払う人・もらう人』では著者で税理士の今村仁さんが、税理士ならではの冷静な着眼点で、「この時代だからこそ小さな会社を買うべき」とそのメリットを論じると同時に、買うにあたっての注意点を紹介しています。
小さな会社の上手な買い方
M&Aというと、まだまだネガティブなイメージを持たれる方がいるのかもしれません。例えば、「身売り」とか「マネーゲーム」とか。
しかし、後継者がいない会社で、第三者承継であるM&Aでの選択肢がなくなると、そのほとんどは、廃業しかありません。廃業となると、従業員の雇用も取引先の継続も、そこでプツリとなくなります。
買い手目線でも、なんでも新品で、と考えるのは環境的にもソロバン勘定的にも、マイナスかもしれません。例えば、出店を考えている場合に、すべて自前でやるのではコストは膨大ですが、それを、既にやられている店舗を買収できるのであれば、従業員や内装の一部などを再利用でき低コストで済みます(イメージとしては、新品ではなく中古を買うような感じです、売り手には失礼な表現ですが)。
こういった意味で、選択肢の1つとして、売り手にとっても買い手にとっても、M&Aというのは、中小企業必須の経営ツールであると思います。
ギャップによるウィンウィン
様々な業種や業態がありますが、総じていえるのは、事業承継がらみでの売り案件は、比較的、買い手目線ではお買い得と感じることが多いということです。
売り手の経営者がご病気などとなれば、売り急がざるを得ません。
長年続く会社で廃業するわけにはいかない場合に、後継ぎがいないのであれば、経済論理は度外視した価格設定となることもあります。
つまり、ここに売り手と買い手との間でのギャップが産まれ、結果としてお互いウィンウィンの事業引継ぎ・M&Aが成立するのです。
小さな会社の上手な買い方
今やネットを含めて様々な売り案件を目にすることができますが、まず最初に確認すべきは、「本当の価格」です。
例えば、譲渡価格1,500万円と書いてあったとしても、実は、負債の承継が3,000万円あって、さしたるそれに見合う資産がないのであれば、実際の価格は、1,500万円+3,000万円=4,500万円となります。上記は流石に気づくと思いますが、他にも、「リースの残債」や「保証行為」もきちんと、事前に確認しておくべきでしょう。
それから、スモールならではという意味では、「売り手社長や奥様がいなくなると、たちまち会社が回らなくなるのかどうか」の確認が重要です。スモールM&Aでは、従業員が3人とか5人とか、ケースによっては0人とかも普通にあります。そのため、買い手目線では、人材の確保が重要です。
もう一つ小さな会社の上手な買い方としては、許認可などの承継が問題ないかの確認です。
スモールの場合は、会社を丸ごと買う株式譲渡以外にも、その事業のみを買う事業譲渡の場合も少なくありません。事業譲渡のメリットは、隠れ負債などの心配が不要という点ですが、逆にデメリットとしては、雇用契約も許認可も、原則すべて再契約・再取得となる点です。
買った後に、許認可が承継されないのに気づき、資格取得人がいないがために、2ケ月営業できずなどとならないようにしましょう。
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