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韓国、堕ちた信頼。政治と経済の両面で進む世界的な「韓国離れ」

4月18日、北朝鮮による“新型誘導兵器”の発射実験を金正恩氏が視察し、アメリカの反応次第では、既に暗雲に覆われていた朝鮮半島情勢が、さらに予断を許さない状況になったと伝えるのは、メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』の著者であり、数々の国際舞台で交渉人を務めた島田久仁彦さんです。島田さんは、軍事面での北朝鮮を巡る懸念に加え、政治・経済・宗教面での韓国を巡る懸念を取り上げ、朝鮮半島で進む4面での「End Games」の矛先が日本へと向かうことを憂慮しています。

朝鮮半島におけるEnd Games

朝鮮半島情勢が“また”騒がしくなってきています。1つ目は、4月18日未明に実施された北朝鮮による“新型誘導兵器”の発射実験です。

この新型誘導兵器が一体何物なのかは、今、分析と特定が急がれているところで、いろいろと情報も入ってきていますが、1つ分かったことは、国連安全保障理事会制裁違反に当たる『ICBM(長距離弾道ミサイル)』の発射ではなく、恐らく短中距離を射程とした通常ミサイルの類であろうということです。

とはいえ、誘導兵器ですので、これまで「発射したら行先はミサイルに聞いてくれ」というものではなく、レーダー制御で標的まで誘導される兵器という位置づけができるものと思われますので、日本や中国、韓国などの北東アジア諸国にとっては、ICBMに比べて、懸念のレベルを高めるべきものなのかもしれません。

韓国国防省筋の情報では、「ソウル市も射程に入る大砲の類かもしれない。もしかしたら、ノドン・テポドンなどの最新型で、レーダー誘導が可能になったのかもしれない」との分析が上がってきているようですし、中国の情報筋によると、「北京、天津などの中国の主要都市もピンポイントで攻撃可能な誘導型のミサイルの可能性があり、中国としても懸念を持って注視する」とのことでした。

そして、駐日米軍の情報では、「ICBMではなく、また核実験ではないため、ワシントンとしては直接的な懸念は抱かないが、北東アジア地域の安全保障にとっては新たな脅威が高まったと見るべき。詳細については分析中」とのことですが、ホワイトハウスは、表向きは「特段コメントすることはない」といいつつ、ボルトン補佐官などは「明らかなアメリカに対する威嚇行為」との見方をしているとのことで、今後の展開が懸念されます。

恐らく来週に予定されているプーチン露大統領との首脳会談を控え、国際社会からギリギリで非難を受けないと考えている通常兵器の実験を実施することで、対北朝鮮強硬姿勢を崩さないアメリカへのけん制と受け取ることができますが、「果たして、本当に国際社会の非難を受けないか」という点については、非常に読みが甘いと考えざるを得ません。

実際に、ウラジオストック入りしているキム・チャンソン国務委員会部長(北朝鮮)が、首脳会談の準備のために同じくウラジオストック入りしているロシア外交筋の幹部から叱責されたとの情報もありますし、上述のように、ボルトン補佐官などは「アメリカへの明らかな威嚇行為」との認識を持っており、今回の北朝鮮の“実験”を見過ごす雰囲気はありません。来週に予定されているウラジオストックでのプーチン露大統領との会談も、もしかしたら流れてしまうかもしれません。

そして、まだ反応を示していないトランプ大統領がどのように反応するのか。すぐに攻撃に発展するような事態はないと思いますが、繰り返し「金正恩氏との関係は良好だ」としてきた言動の裏にある心理がどう変化するかとても心配です。そして、昨日の発射実験に加え、「ポンペオ国務長官を米朝交渉から外せ!」とさらなる対米挑発をしていますので、トランプ大統領の堪忍袋がどこまで持つか、非常に心配です。

アメリカの反応が見えない懸念に加えて、後ろ盾たる中国からも突き放され、「仲介役」を自認してきた韓国も四面楚歌で国際的な影響力は地に落ちていますし、もし今回の件で、ロシアもプーチン露大統領との会談を事前に流すようなことがあれば、北朝鮮にとってのend gameは近くなってしまうかもしれません。

堕ちた信頼。政治経済両面で進む「韓国離れ」

2つ目は、落ちる一方の韓国の国際社会での威光です。先日の日本からのWTOへの提訴(韓国による日本産の海産物の輸入停止に対する申し立て)で、第1審の判決が覆り、韓国が勝った!とされていますが、実際には、国際社会からは顰蹙を買ってしまったようです。

普段であれば、ただ単純にWTOでの採決結果についてさらっと事実だけ報じられるところですが、昨今の韓国外交の度重なる失敗の影響もあってか、周辺国のみならず、欧米諸国においても「どこまで日本を威嚇するつもりだろうか?」「いったいどこにむかっているのだろうか」と反日をraison d’etreにしているようにしか見えない姿勢に疑問を呈しています(もしくは、完全に無関心を装っています)。

その以降失墜の元凶はどこにあるのでしょうか。それは、第1回米朝首脳会談後に舞い上がってしまった文政権のなりふり構わぬ外交キャンペーンです。ノーベル平和賞に言及してみたり、ローマ法王に訪朝を、金正恩氏の“名代”で依頼しに行ったりといった行動はもちろんのことながら、国際社会に図ることなく、独自に南北朝鮮の接近を、北朝鮮からのリクエストがないにもかかわらず、一方的に進め、結果、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁違反の連発という事態まで引き起こした結果です。

そして、ついにトランプ大統領からも「全く信用ならん!」と突き放され、先週の訪米時も、実質の直接対話は2分未満という屈辱的な待遇を受けました。それを象徴するかのように、ペンタゴンでは、韓国内で高まる反米感情に応えるという形式にして、在韓米軍の根本的見直しに着手し、先述のように、戦略的な戦力を悉く沖縄およびグアムに移動させているようです。

そして、未確認ではありますが、駐韓大使に対して、米軍関係者およびアメリカビジネス関係者のevacuation planの実行準備まで指示したとの情報もあります。これ以上の内容についての発言は避けますが、朝鮮半島をめぐる軍事的な面でのend gameの準備とも受け取れる動きかもしれません。

3つ目は、国際ビジネスの韓国離れです。アメリカ資本の韓国からの引き上げや投資の回収については以前も述べましたが、同じような動きが欧州企業や中国企業にも出てきました。

私もビジネス交渉のアドバイスの際に、よくお話するKorean business慣習の中での交渉で問題視する点(もしご関心があればお問い合わせください)を各国企業も認識しているらしく、真正面から対峙するよりは、一旦離れる・ストップするというチョイスを選択しているようです。

ビジネスの韓国離れは、諸国のマーケットでも進んでいるようです。携帯端末のGalaxyをもつサムソンなどは、まだ国際的に大きなシェアを誇っていますが、そのサムソンでさえ、Korean Business慣習を押し付けがちであることから、特に欧米のマーケットでは敬遠され始めていますし、進出を試みてきた中東のマーケットやアフリカのマーケットからは、ついに韓国ビジネスの追放にまで至っているケースが見受けられるようになってきました。

ドイツについては、10年ほど前に頻発した公共工事受注に絡む賄賂事件でいくつかの市の市長が逮捕された事件を受け、ドイツからは排除されていますし、フランスをはじめとする企業もパートナーシップを破棄する動きが加速しています。

アフリカ諸国は、当初は「投資をしてくれるなら大歓迎」と諸手を上げていたのですが、中国企業同様、パフォーマンスに難ありと見たのか、最近では急激な韓国企業離れが起きているようです。この点については、まだまだ調査が必要ですが、本当だとすれば、スランプに陥る韓国経済にとっては大きな痛手となるでしょう。

そこに追い打ちをかけるのが、日米欧による韓国ウォンへの“攻撃”でしょう。日韓の通貨スワップについても延長が見送られていますし、アメリカの財務当局も表立った攻撃こそしていませんが、逆に“守る”動きも全くとっていません。欧州各国もしかりです。ここに金融、国際収支、貿易などを含めた経済面でのend gameの気配が見て取れます。

そして4つ目のend gameについては、日本ではほとんど報じられることがありませんが、世界のキリスト教コミュニティーから突きつけられたend gameです。

これは、先述の文大統領のローマ法王への訪朝依頼に起因するのですが、バチカン市国のみならず、キリスト教の国々から、文大統領が行ったことは、ローマ法王の政治的利用であり、断じて許すわけにはいかないとの批判の声が上がっている様なのです。

韓国は、国民の3割がキリスト教徒とされ(カトリックとプロテスタントの比率は2:1)、その割合は仏教を抑え、最大の宗教となっています。教徒の数は1376万人ほどとされ、総数ではアジアで第5位の教徒数ですが、国民に占める割合では、元ヨーロッパの植民地であったフィリピンと東チモールに次ぐ第3位のキリスト教国とされています。

ゆえに、キリスト教社会においてはそれなりの存在感を示していたのですが、その立場が最近になって危ぶまれてきているようで、どんどん味方を失っているとの情報があります。例えば、国連の諸委員会などで票を取る際に、一つの支持基盤として用いることが出来たキリスト教諸国からの支持にも揺らぎが出ているとされています。

これにより、外交面でのend gameに加え、少し大げさな見解かもしれませんが、宗教・思想的な面でもend gameは発動されているのかもしれません。

これらの大きく分けて4つの側面から見ることが出来るend gamesは、朝鮮半島の両国を孤立させる方向に進んでいます。

北朝鮮については、これまでにも独自の閉鎖的な体制と各国への威嚇行為などゆえ、すでに孤立していると言えますが、韓国については、国際社会における孤立が明らかになるにつれ、場当たり的な言動が多く見受けられるようになり、どんどん悪循環を重ねる結果になっていることが、想像できない行動に走らせる衝動になる可能性が懸念されます。 その矛先は歴史的なスケープゴートの日本なのか、それともその矛先は欧米社会や中国などにも向くのか。その答えがどのようなものであったとしても、朝鮮半島にとっては、あまり好ましくない結果が待っているのではないかと、とても懸念しています。この懸念が、私の徒の杞憂に終わることを祈ります。

島田久仁彦(国際交渉人)この著者の記事一覧

世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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