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メーカーにも問屋にも見捨てられた小売店が生き抜くためすべき事

メーカー、問屋、小売店の三つが協力し業界を盛り上げていこうとする「三層一体」という考え方。しかし、その鎖は今や切れる寸前のところまできているようです。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんが、改めて「三層一体」の重要性を説くとともに、中小小売店が生き残る方法を紹介しています。

中小小売店がとるべき戦略は?

かつてスポーツ用品業界では、「三層一体」ということがよく言われました。三層とは、メーカーさん問屋さん小売店さんのことを指します。この三つが協力して業界を盛り上げていくことが大切だということです。業界を引っ張っていた人たちは、そう考えていました。実際に、そうして業界は成長していったのです。

ところが、最近では「三層一体」ということを大きな声で叫ぶ人はいません。時代の変化に伴って、お互いが協力し合うという余裕がなくなってしまっているようです。それどころか、その関係を切り離そうという動きさえあります。

しかし、「三層」というのは、いわゆる「サプライチェーン」の一環です。ですから、メーカー、問屋、小売店さんは、消費者に製品を届けるために、「鎖」でつながっていなくてはなりません。この鎖が切れてしまったら、それぞれがバラバラになってしまいます。業界は、今そんな状態にあるような気がします。

例えば、メーカーさんや問屋さんの団体が主催をする展示会がもう開かれなくなってしまいました。大手メーカーさんや問屋さんは、それでもいいでしょう。しかし、中小のメーカーさんや問屋さんが単独で展示会を開くのは難しく、困っておられます。そしてさらに、一部のメーカーさんや問屋さんは、取引先の小売店さんの選別に入っています。効率良く活動をしたいということなのでしょう。

しかし、本当にそれで良いのでしょうか。これでは、とても「三層一体」とは言えません。では、この原因はどこにあるのでしょう。

原因はどこに

私は、この原因は中小の小売店さん自身にあると思っています。販売力が衰えてメーカーさんや問屋さんからの購買力が低下してしまっているからです。展示会を開いても注文がとれない、小売店さんはなかなか仕入れをしてくれない、という状態では、メーカーさんも問屋さんも困ってしまいます。

そして業界では、この20年間大手のスポーツチェーンが売上を伸ばしてきました。大手上位5社の2017年の売上は5,469億円で、スポーツ用品小売り全体の約4割を占めます。メーカーさんや問屋さんにしてみれば、この大手スポーツチェーンとの取引を増やす方が、効率が良いです。また、地域の小売店さんに対しても、売上規模の大きいお店に取引を絞り込んでいっています。

現時点では、この戦略は間違ってはいません。しかし、残念ながら、結果的にこの戦略は全国1万に及ぶ中小小売店さんをないがしろにすることになってしまいます。これでは、とても「三層一体」とは言えません。

とはいえ、すでに舵は切られてしまいました。中小の小売店さんにとっては大変な時代の到来です。だからこそ、中小の小売店さんは知恵を出してがんばらなくてはなりません。そして、私は今こそ三層一体となって活動するときだと考えています。いえ、「三層一体」でなければ、中小小売店さんは生き延びていけないでしょう。

一方、大手メーカーさんは「三層一体」でなくても大丈夫です。海外に販路を延ばすことができます。自社ブランドのお店を出すこともできます。また、力のある問屋さんはスポーツ用品業界以外に販路を見つけることができるでしょう。「三層一体」でなくてもやっていけます。

ところが、中小の小売店さんは、なかなかそういうわけにはいきません。やはり、メーカーさん問屋さんの力を借りなければ生きていけないのです。では、そのためにはどうしたらいいでしょう。

生きていく方法

その方法は、はっきりしています。中小の小売店さんの多くは、その一軒一軒にメーカーさんや問屋さんを動かす力はありません。ですから、小売店さん同士が団結して力を発揮することです。幸い、小売店さんには「日本スポーツ用品協同組合連合会」という大きな組織があります。これを活用して、力にするのです。

いえ、メーカーさんや問屋さんに対する圧力団体になれということではありません。メーカーさんや問屋さんと協力して売上や顧客を増やす方法を考える組織になるのです。それも、今までとは違った方法を打ち出します。

そのためには、組合連合会の本部の力が重要です。本部は、今後の中小小売店さんの新しい姿を考え、組織として出来る戦略を組み立てなければなりません。そして、その戦略のキーワードを「三層一体」にします。ここは、本当に知恵の出しどころです。

戦略を作るにあたっては、若い人を交えたプロジェクトを作り、アイデアを出してもらうのが良いでしょう。そこには、メーカーさんや問屋さんの若い人たちも参加してもらいます。例えば、こんなアイデアはどうでしょう。

ICT時代の新しいスポーツ用品を開発する」。

それは、観戦用VRかもしれません。コンディショニング管理用のスマホアプリかもしれません。トラッキングデータ分析ソフトも良いです。また、商品ではなく、サービスも考えられます。例えば、中小小売店専用の購入還元ポイントシステム、メンバーカードによるマイレージサービス提供システム、といったものはどうでしょう。

そしてまた、新しい業態のモデル店舗を考えるのも、一案です。メーカーさん、問屋さん、組合が協力して出店します。そのモデル店が成功すれば、それをきっかけに全国で新しい形態の店舗が開発されていくかもしれません。

いずれにしても、一店で行うのではなく、全国の小売店が結束して行うことが大切です。それには、本部の強いリーダーシップが求められます。そして、こうしたことには、必ずメーカーさんや問屋さんの協力が必要です。小売店さん自らがメーカーさん、問屋さんに呼びかけて動いてもらわなくてはいけません。これが、中小小売店の「三層一体」戦略です。もう時間は限られている気がします。

■今日のツボ■

image by: Shutterstock.com

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ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表。スポーツ用品業界での経験と知識を生かし、業界に特化したコンサルティング活動を続ける。
スポーツ用品業界在籍33年の経営コンサルタントが、スポーツショップの業績向上法について熱く語ります。スポーツショップのために書かれた、日本初のメルマガです。ここには、あなたのお店がかかえている問題を解決するヒントがいっぱいです。

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【著者】 梅本泰則 【発行周期】 週刊

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