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批判覚悟でヤフーを連結子会社化したソフトバンク孫社長の皮算用

先日、ヤフーの子会社化を発表したソフトバンク。この動きを、今年10月に携帯電話事業に参入する楽天への対抗策ではないかとみているのが、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。今後は両社による「ユーザー囲い込み」がかなり激化するだろうと、自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』にて予測しています。

ソフトバンクがヤフーを連結子会社化━━孫社長「お前が仕組んだと言われるのは嫌だなぁ」

ソフトバンクヤフーの株式を取得し、連結子会社化すると発表した。

このリリースを受け取ったとき、最初に思いついたのは「また、ソフトバンクグループ内で資金のやり取りを発生させているな」ということだった。今回の連結子会社化により、ソフトバンクの資金がヤフーに入り、ソフトバンクグループにヤフーの資金が入る構図だ。

すぐにかつての「ヤフーがイー・アクセスを買収して第4のキャリアとしての参入を発表するも、その後、断念」という茶番劇を思い出してしまった。

誰しも「キャリア事業で稼いだソフトバンクの資金をソフトバンクグループが巻き上げる」という構図を浮かんだはずだが、そのあたりは孫さんも意識していたようだ。

4月9日に行われたソフトバンクグループの決算会見で孫さんは「『また孫が(ソフトバンクの)バランスシートを財布代わりに使い、親会社の資金繰りに使いたいから仕組んだんだろう』と色々な人に言われるかもしれない。それは嫌だなぁ、と(宮内ソフトバンク社長と川邊ヤフー社長に)申し上げた」と語っていた。

孫さんとしてはメディアやネットからの指摘はお見通しだったというわけだ。

しかし、宮内社長らに「そういう小さなことは忘れてくれ。批判を受け止めてくれ」と説得され、受け入れることにしたという(あとから作った話かも知れないが)。

ただ、結果としてヤフーの自社株買いにより、ソフトバンクグループに資金が入ることで「財務バランスの強化とソフトバンク・ビジョン・ファンド2の準備、さらに株主配当の増配に使う」(孫さん)とのことだった。

今回の資金移動、節税のためという指摘もあるが、なんだかんだでグループ全体としてはハッピーだったのではないか。

連結子会社化を発表した翌日にはソフトバンクの株価が上昇。10日の終値は1424円となった。売り出し価格である1500円にはいまだに届かないが、連結子会社化の発表でかなり持ち直した感がある。ヤフー株も上昇した。

今回の発表を聞いて、もうひとつ直感的に思ったのが「楽天対策かな」という点だ。

いよいよ10月に楽天が携帯電話事業に参入する。楽天にはインターネット通販、証券、銀行、決済、旅行などの事業があるなかでの携帯電話事業へのチャレンジだ。ユーザーを様々なサービスで囲い込み、楽天経済圏で回していくというのが強みになるのは間違いない。

ソフトバンクは通信専業に近く、そうしたサービスはどちらかといえばヤフーと分業してきた感がある。あらゆるサービスをポイントで回していくにはヤフーとソフトバンクの関係が密になる必要がある。今週、夏モデルが発表されたが、購入者にはPayPayのポイントが付与される。今後、ますますPayPayを軸にソフトバンクとヤフー、さらにはDiDiなどのサービスでユーザーを囲い込んでいくことになるだろう。

ただ、もともとヤフーは、ソフトバンクが携帯電話事業に参入する前は、どちらかといえば3キャリアからは中立な立場でのサービスだったことが魅力であった。この10年でソフトバンクやワイモバイル色が強くなったが、今回の連結子会社化で、さらにソフトバンク色が強くなることで、マイナス面も出てきそうだ。

「ソフトバンクユーザーなら便利なヤフー」となれば、結果としてNTTドコモやauユーザーが離れていく可能性も考えられる。連結子会社化に向けて、ヤフーの立ち位置をどうバランスをとっていくかが、重要となっていきそうだ。

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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