野党は1人区で前回なみの大健闘か
選挙結果を左右する焦点は、前回と同様、32ある1人区で野党がどこまで統一候補の調整に成功して共闘態勢を組めるかである。前々回13年が自民党が29勝2敗だったのに対して前回は21勝11敗、野党側から言えば11勝21敗で、これは野党選挙協力による大成果だった。
今回も、ほぼ前回なみの成績を上げる可能性が大きい。三浦予測によると、「青森、岩手、山形、福島など東北で野党が優勢で、長野、三重、愛媛、沖縄でも野党に勢いがある」。新潟も拮抗していて、それを含めて自民党から見て「22勝10敗」と見ている。しかし、これはまだ野党協力がそれほど進展していない段階での予測で、その後に、共産党が多くの区で独自候補を下ろす代わりに福井では共産党候補を野党統一候補とするというオール野党合意が成立したので、野党から見て10勝に止まらず前回なみの11、あるいはもう1~2議席を伸ばす可能性が拓けつつあるのではないか。
三浦予測によると、32の1人区のうち13は、「共産党などが候補者を取り下げて野党共闘が実現した場合でも、大半の選挙区ではが逆転は難しい」。13とは、秋田、栃木、群馬、富山、石川、福井、岐阜、奈良、和歌山、鳥取・島根、岡山、香川、鹿児島である。これはその通りだろう。
32-13の残り19の1人区のうち16は、自民党が「激戦区」と呼んで重点区に指定している。内訳は、上記の三浦予測でも野党優位とされている東北6県、山梨・長野・新潟の甲信越3県、後は三重、滋賀、徳島・高知、愛媛、佐賀、大分、沖縄である。この中でも東北6県と沖縄での野党優位は揺るぎそうにないので、実際にはそれ以外の9区が本当の激戦区となるのではないか。そこで1つでも2つでも引っ繰り返すことができれば、野党は前回を少しでも上回る大善戦ということだろう。
参考までに、15日付東京新聞が掲げた「参院1人区、自民指定の16激戦区、野党一本化なら勝機」の記事によると、その16区について17年衆院比例得票を自公vs野党で集計すると、岩手、宮城、山形、新潟、長野、三重、大分、沖縄の8区で野党票が上回っている。そうでない場合も、例えば滋賀が自公28万1,896に対して野党28万420であるように、ほぼ拮抗しているところも少なくない。
野党側の闘い方、さらには複数区での候補者調整の進展次第では三浦予測を超えた成果を挙げて安倍政権を追い込むことも出来るのではないか。
image by: 安倍晋三 - Home | Facebook
※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2019年5月27日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分税込864円)。
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