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現役30年のアナウンサーが伝授「5G時代の見せながら話す技術」

人前で話すあらゆるシーンに役立つプロの技を伝えてくれるメルマガ『話し方を磨く刺激的なひと言』の著者で、アナウンサー歴30年の熊谷章洋さん。今回は、来たる5G時代に求められる能力として、「目の前にあるものを見せながら魅力的に伝える技術」をわかりやすく教えてくれました。プレゼンの機会が多いビジネスマンや動画コンテンツでインフルエンサーを目指す人は必読です。

見えない状態のものを説明する技術

次世代通信技術、5Gの実用化が目前に迫り、私たちに求められる話し方も、変わってくるのではないか、という話題を先日の記事でお伝えしましたね。
情報を発信するにしても、受信するにしても、動画を見て理解することが普通になる、また、相互の通信においては、まるで同じものを見て同じ体験をしているような感覚で、話をすることになるのではないでしょうか。

つまりポイントは、見えているものをどう話すか?「見せながら話す」という点です。見えるということが話の前提になるわけですから、当然、不要になる種類の話もありますし、逆に必要になることも出てきます。

ではまず、ちょっと考えてくださいね。例えば、いま目の前にある花のことを、いまここにいない人に伝えるとしましょう。それが「見えない状態の通信」で、その花がどんなものかわかってもらうために、最も効率的な表現は、どんなものでしょうか?

その答えは…アジサイです、ひまわりです…などと、花の名前を言うことです。なーんだ!ですよね。ものの定義がそのまま、そのものを最もよく言い表す効率的な表現になり得ます。そして名前は、ものの定義の最もシンプルな形です。

ただし、その名前とイメージが繋がって、共通認識になっている場合に限ります。通信の相手の人数が少なければ、共通認識の範囲が狭まるのに対し、その範囲が広く、不特定多数の状態であれば、共通認識は常識と同義になります。

簡単に言うと、その花がネモフィラだったとして、通信相手が全員ネモフィラを知っていると、こちらも認識していれば、ネモフィラという名前を言えば済みますが、全員知っているかどうかは微妙…であれば、名前を言うだけでは説明が足りないことになりますよね。
これはものの名前に限ったことではなく、相手次第で、専門用語や、カタカナ語や、マニアックな話、内輪話をどの程度使っていいかが変わってくるのと、同じことです。

では、名前を言うことの次に、効率的な表現はなんでしょうか?
答えは、相手が知っていそうな、似ている他のものの名前を出し、それを修正する表現を付け加えることです。例えば、ブルーデージーであれば、菊の花を青くしてシュッとスマートにさせたような感じ…とか。
ただ、上記のネモフィラになりますと、似ている他のものの名前を考えるのがちょっと難しいですね。オオイヌノフグリを5倍ぐらいにしたような…と、私も考えてみたんですが、オオイヌノフグリという名前で、どのぐらいイメージを湧かせられるか不明で、そのオオイヌノフグリの説明からしなくてはいけなくなりますから、ちょっと遠回りで聞き手を混乱させてしまう恐れもあります。

そういう場合は、詳細を説明してわかってもらうことになります。丈が20センチぐらいで、花の大きさが2センチ程度の、青くて丸い可愛い花…ぐらいの説明が必要になります。
こう考えると、ものの名前というのは、人間同士の間の共通認識として、すさまじい分量の情報を含んでいるということでもありますね。

効率の良い説明をするときには、このような共通認識を上手に利用するのが、ひとつのコツになります。相手が既にわかっていることを引き合いに出すことによって、情報の伝達を早くするわけです。

見えない状態のものを説明する、とは、こういうことです。この点、みなさまの表現生活の一助にしていただければと思います。

見せながら話す、インフルエンサーになる技術

そしてここからが今回の主題、見せながら話すケースです。自分と同じように相手にもそれが見えてしまっている場合、上記の花の説明のような、相手のイメージを喚起するような表現は、ほとんど不要になります。百聞は一見に如かず。一目瞭然、ですからね。

ネモフィラの説明で、丈が20センチぐらいで、花の大きさが2センチ程度の、青くて丸い可愛い花…という表現は、「こういうやつ」というだけで済んでしまいます。そのものの定義を話すことが、効率的な表現ではありますが、さすがに、見てもらうことにはかないませんね。

ちょっと味気ないようにも感じますが、おそらくこれからの未来、その味気なさを逆手に取るようなサービスも生まれてくるでしょう。つまり、情報が足りない状態で、イメージを楽しむような環境の提供です。読書がそれに当たりますし、音声だけのコンテンツが、娯楽として廃れることはないと思います。
また、味気のない一目瞭然のコミュニケーションについては、一緒に見たこと、見えたものを「始点にして」、さらに話を深めることができるチャンスであり、見えたことの先にある話の面白い人が、必要とされる表現者になる、と考えるのが良いと思います。

では、見せながら話す時に必要になる表現とは、どういう種類のものでしょうか。ポイントをふたつにまとめるとするならば、

だと思います。

まず、話の前提が、見て感じたことになります。逆に言うと、何か言いたいことがある場合、それを、見た目と繋げた表現にする必要がでてきます。

具体的には、例えば、「数の子がたっぷり入った松前漬け」という商品の、数の子がほんとうにたっぷりであることを言いたいとしますね。

映像なしの説明の場合、そのたっぷり具合を説明する表現の中心になるのが、「数の子の割合が50%」など、誰が聞いても理解、納得できる客観情報になるのに対し、映像ありの説明になると、「ご覧ください、見るからに数の子たっぷりで美味しそうでしょ?メーカーによると、数の子の割合が50%なんですって!」

など、「数の子の割合が50%」という客観情報が脇役に回り、「(たっぷりだから)美味しそうでしょ」という、主観的、情緒的な表現が主役になることが、分かると思います。

実はこれ、いままでの世界においても、人気者になるような人の話し方が、こういうタイプでした。聞き手に上手にイメージさせて、まるで目に浮かぶかのような状態を形成しつつ、主観、情緒的表現を中心にするような話し方です。
ものや状況が目の当たりにできてしまう、通信環境の新しい時代では、なおさら、この部分が必要になってくるでしょう。それは、「インフルエンサー」がもてはやされる現在の、延長線上にある近未来です。

image by: Andrey_Popov, Shutterstock.com

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アナウンサー歴30年、極限の環境で話し続ける著者が、実体験から会得した「話し方のコツ」を理論化。人前で話す必要がある人の「もっと〇〇したい」に、お答えしています。一般的な「話し方本」には無い情報満載。

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【著者】 熊谷章洋 【月額】 ¥346/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 月曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

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