なんと、「(療養専念義務には)違反していない」としました。もしかすると(と、いうよりもおそらく)「え?!!!!!」と思われた方も多いかも知れません。
ではなぜ裁判所はそのように判断したのか?その具体的な理由は次の通りです。
- それらの行為が療養に資することもあるということは広く知られている
- それらの行為でうつ病に悪い影響を与えたと考えられる証拠がない
どういうことか。
これはみなさんも聞いたことがあるかも知れませんが、うつ病などの精神病の種類によってはあまり家にこもりすぎるよりも適度に人と会ったり、話をしたりするほうが治りが早かったり、良い影響をあたえることがあるのです(もちろんご本人の状況や、飲み会などの頻度や内容にもよりますが)。よって、裁判所はこのように判断しました。
いかがでしょうか。これは実務上も非常に注意すべき点です。もし、みなさんが休職にはいる社員に、「休職期間中は療養に専念し、飲み会などには絶対に参加しないように」と言ってしまったり(前半部分は問題ありませんが)、休職期間中に飲み会などの様子をSNSにアップしているのをみつけそれを理由に懲戒処分をしてしまったりすると問題になることが考えられます。
ではどうしたら良いか?
誤解の無いようにお話をすると、この裁判で休職期間中に行うすべての行為が認められると断言されたわけではありません。
裁判所は、「休職期間中に療養に専念する行動をすることが望ましいと言うべきであるから、それに反した行為をした場合には就業規則に則した服務規律違反が問われることもやむを得ない」とも判断しているのです。つまり場合によっては休職期間中の行為が懲戒処分の対象にもなりうるということです。
また、行為は認めつつもそれをSNSにアップしないようにと指示を出すことはもちろん可能です。その場合もSNSにアップすることは私生活上の問題になりますので強制はできませんが、「休職期間中にそういった行為をアップすることは他の社員からあまり良く思われない可能性があるから控えたほうが良い」であれば、法律上も問題ありませんしある程度の抑止力にはなるでしょう。
「休職期間中に飲み会なんてとんでもない!」という気持ちはわかりますが、医学的にも法律的にも適正に判断することが大切です。
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