MAG2 NEWS MENU

トランプ発リーマン級大不況に備え日本が消費増税をすべき理由

10月の実施までまさに「秒読み段階」となった消費増税ですが、識者の間からは反対の声が上がり続けています。果たして増税は、彼らの言うように「景気のさらなる減退」を招くことになるのでしょうか。そんな意見に異を唱えるのは、メルマガ『国際戦略コラム有料版』著者の津田慶治さん。津田さんは財政健全化のために消費増税は不可欠とした上で、このまま放置すれば金融資産価値が10分の1になる可能性もあるという味方を示しています。

消費税増税が必要な日本経済の状況

消費税増税に対して、大不況が起きるという評論家が多く、かつ、執拗に繰り返しているが、日本経済の現状からすると、消費税増税しないとした時よりひどいことになる。その検討しよう。

日米株価

NYダウは、2018年10月3日26,951ドルで過去最高株価であるが、12月26日21,712ドルと暴落したが、その後は上昇して4月23日26,695ドルになったが、米中貿易戦争激化とメキシコ移民問題が出て6月3日24,680ドルまで下げた。しかし、対墨移民問題が小休止し、FRBの今年3回利下げ観測で6月14日26,086ドルまで戻している。しかし、またも26,200ドル近辺まできたのでトランプ砲が炸裂する可能性がある。

日経平均株価も、同様に2018年10月2日24,448円になり、12月26日18,948円と暴落し、4月24日22,362円に上昇したが、対中対墨貿易移民戦争激化で6月4日20,289円まで下落。しかし、米国で今年3回利下げ観測と、選挙前の積極的な日銀のETF買いで6月14日21,116円になっている。6月14日は、SQ日であったが、やっと2兆円と出来高が非常に少ない状態が続いている。

今週、FOMCが6月18,19日に行われるが、7月の雇用統計を見ないと景気後退を確認できないので、今回は利下げはないと見るが、7月利下げの見通しをパウエル議長が述べないと株価は下落することになる。トランプ大統領もパウエルFRB議長と電話会談をしたが、利下げの時期で見解が大きく違うようである。

そして、6月28,29日のG20で米中首脳会談が行われないか、決裂になると、ここでも株が下落することになる。6月24日にペンス副大統領が、中国の人権問題や香港問題ついて演説するようである。6月後半は株価が下落する可能性が高いような気がする。

6月12日、安倍首相とハメネイ師の会談に合わせてホルムズ海峡でのタンカー攻撃が起きた。イランの革命防衛隊が関与したと米国は見ているが、イランは攻撃をしていないと否定している。しかし、イラン国内のタカ派が攻撃したとも感じる。しかし、この攻撃を受けても、東京の日経平均株価が84円高になり、不思議な感じである。

中東の石油やLNGを運ぶタンカーがホルムズ海峡を通れなかったら、日本経済は大きなダメージを受けるので、日本売りになると見たが、そうではなかった。ホルムズ海峡封鎖は、昔から不安視されていて、UAEはホルムズ海峡迂回パイプラインを2本建設済みであり、このパイプラインの利用ができるが原油のみである。そして、市場は、様子見の状態に終始している。

イランと米国の関係は、安倍首相の仲介でも容易に解消できないし、安倍首相のイラン訪問で、より緊迫した状態になってしまった可能性もある。現状では、中東戦争を止めることができていない

米国では、トランプ大統領側近のボルトン補佐官が中東政策を仕切っているが、安全保障会議を開かずに、ポンペオ国務長官と協議して政策をしているようである。このため、ボルトン補佐官が、タンカー攻撃を誰かにさせた疑惑も出ている。どうしてもイラク戦争前夜のイラクが核開発をしているというフェイクで戦争を開始した記憶があり、ボルトン氏を信用できない。

米中貿易戦争の結果は

トランプ大統領は、第4弾の中国からの輸入全品に関税25%UPの実施時期をG20直後としていたが、期限を決めないとした。そうしないと、習近平国家主席は、トランプ大統領の脅しで怖気づいて首脳会談を受けたと思われ、中国国内から批判が出て、首脳会談自体にも出席できないことになるからである。

中国社会がメンツを重要視していることを、トランプ大統領は無視しすぎである。欧米社会の交渉論理とは違うことが、今まで気が付いていなかったようである。

しかし、米中首脳会談が開かれても合意できるはずがない。トランプ大統領の大幅な譲歩がない限り、中国は米国と対等な立場を確保できていない今の協定では、メンツから合意できない

しかし、トランプ大統領は、米国内労働者や共和党と民主党の対中強硬政策支持を背景に、大幅な譲歩の姿勢が取れない。そして、ライトハイザーUSTR代表やナバロ氏などの強硬派が中心に対中交渉を行ってきた関係から、交渉担当者を代えないと、ここで引き下がることもできなくなっている

その意味では、ボルトン補佐官に任せている中東の状況と似ている。強硬派を使い圧力を掛けることはできるが、譲歩の方向に舵を切れない。

6月初めの欧米VIPが議論する秘密のビルダーバーグ会議でも、米中の貿易戦争は100年続くという結論であったようだ。米国からは、ポンペオ国務長官とクシュナー上級顧問の2人が出たので、米国に不利な結論になっていないようだ。

しかし、時が経つと、中国は内需経済へ転換して、かつ、トランプ大統領の同盟国をも敵にしていることで、世界貿易の主軸は、12億人の中国になることが明確化して、貿易戦争では米国の負けが徐々に見えてくる5年程度で勝敗はつく。「奢れる者、久しからず」を米国は、実行しているから仕方がない。

よって、貿易戦争の勝負は短期に決着しないと中国の勝ちである。途中、中国経済は一時苦境に陥るが、米国の貿易赤字は減らないし、米企業製品は中国市場では売れなくなる。その内、米国を除く世界市場でも、中国製品が売れ、米国製品は売れないことになる。米国製品市場は米国だけになる。

もう1つ、米国国内の農業州では、大豆など中国への輸出農産品の価格が大幅下落して、トランプ大統領の支持率が落ち、親中的なバイデン候補の支持率が上がっている。トランプ氏の全体的な支持率は40%と変わらないが、共和党の支持基盤の州で負ける可能性ができ来ている。トランプ大統領の米中貿易戦争は曲がり角に来ている。

よって、米国は譲歩しても、早い決着をするべきであると見る。もしかすると、2020年大統領選挙では、バイデン氏が勝つことさえあると見る。

日本経済の状態

2018年の経常収支を見ると、1兆円貿易黒字で大幅減少になり、1次所得収支が20兆円の黒字になっていることで、経常収支が19兆円の黒字になった。それと、インバウンドでの旅行収支が2兆円程度の黒字になっている。

しかし、日本から輸出できる製品は自動車8割で、2割が産業用機械、電子部品などである。しかし、徐々に日本の製品で世界に売れるものがなくなってきている。その代わりに、海外投資による配当金などの収入で補っている。海外工場の自動車と自動車部品の生産による利益が大きな地位を占めている。

日本の産業力が徐々に失われて、AV製品は、韓国と中国の製品に置き換わっているし、スマホやPCなどもダメになり、電子部品でも徐々に競争力が落ちている。半導体や液晶も負けている。半導体では、ソニーのCCDとパワー半導体しか競争力がない。このように、日本の競争力は、先進国と見なされない新興国と同程度の世界30位に転落している。

この状態が自動車にも来る。自動車も電気自動車が主流になり、自動車業界の衰退が起きて、あと5年程度で、経常収支も赤字になると予想されている。そのことでトヨタ自動車の豊田社長も危機感を持っている。

今の状態を放置して、競争力が一層落ちて経常赤字になっても、日銀が量的緩和を継続すると、当初は海外金融投資したものを売って資金を還流するために円高になるが、その内に超円安になる可能性が高くなる。

また、放漫財政のままで量的緩和を止めると国債の金利が高くなり、利払いの国債費の割合が上がり、予算が組めなくなる。このため、量的緩和で金利を下げた放漫財政から、財政健全化に舵を切り、量的緩和から離脱することが必要になっている。

このため、社会保障費の削減や税収を上げる必要になっている。法人税を上げることは諸外国との競争で難しいし、所得税をこれ以上上げることも難しいので、まだ低い消費税を上げることしかない。財政健全化を早く実現する必要になっているからだ。

もし、今消費税を上げないで財政健全化ができずに放置すると、どこかで超円安によるハイパーインフレになる。金融資産価値は10分の1以下になる可能性が高い。

そして、もう1つの心配なことは、中央銀行バブルが起きているのに、トランプ大統領が米中貿易摩擦を拡大して、いつかこのバブル景気を破壊して、世界的なバブル株価の大暴落が起きることである。バブル株価暴落になると、デリバティブ取引などに波及することでリーマン級の大不況になると見たほうが良い

今、この2つの危険な経済状態があり、それを放置できない。今はバブル景気が維持できているので、先に財政健全化のために消費税増税をするべきなのである。そして、1つの危険な状態を解消しておくことが重要である。

しかし、いつ株価の大暴落でリーマン級大不況が起きるかわからないから、起きたら消費税増税を中止すればよいことである。起きない限り、消費増税をして財政健全化しておき、その後の株価の大暴落に備えることである。そうすれば、株価暴落時に大きな財政出動が可能になり、対処できることになる。

資産防衛方法

私たちは、このような2つの危機に備えて、自己資金を防衛するべきである。老後2,000万円不足という金融庁の報告書で株式投資を勧めるようであるが、それより、今ある金融資産を守る方が重要である。

ハイパーインフレになると、金融資産では10分の1の価値になるから、資産を株式投資か海外投資にしておくことが良いが、海外資産もバブル崩壊時に円高に振れる可能性もあり、株投資しかない。しかし、これも超円安時日本売りで、株価は暴落することになる。しかし、その後、ハイパーインフレ時、企業資産価値は同じなので、円換算では大幅に上がることになる。そのため、株投資も退避の有効な手段になりえる。しかし、不景気でも潰れない企業への株式投資しかない。JR東海、JR東日本の潰れない国内鉄道株などのデフェンシブ銘柄への投資であろう。

しかし、株価暴落の危険性もあり、ゴールドなどへの投資をガンドラック氏は、推奨している。ゴールドは利息を生まないので、危機直前での投資が良いが、その時点では価格が上昇しているので、安い今の内にということのようである。

海外投資では、経常収支の黒字国や資源国に投資するしかない。間違えても新興国には投資してはいけない。大不況時には、新興国や発展途上国では資金の流出が起きてくる。経常収支黒字国や資源国は、その時でも資金は逃げないし、通貨価値が上がるからである。

どうも、ガンドラック氏やポール・チューダー氏など、海外一流投資家の意見では、GDPや企業業績に比べて、今の株価は高すぎるということのようである。FRBも市場とトランプ氏の要求で景気が悪くないのに、利下げの方向である。いつまで、そのような中央銀行バブルが持つのかという状況のようである。

さあ、どうなりますか?

image by: 首相官邸 - Home | Facebook

津田慶治この著者の記事一覧

国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。

有料メルマガ好評配信中

  メルマガを購読してみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 国際戦略コラム有料版 』

【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け