老後2千万以前の問題。社会保障「後進国」に生きる悲惨な日本人

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早期の幕引きを図りたい与党の思惑とは裏腹に、野党やマスコミが手を緩めることなく追求し続ける、「老後2,000万円不足」問題。突如として金融庁から「自助努力」を促された国民の間に広がった動揺も、収まる気配はありません。そんな状況を受け、健康社会学者の河合薫さんはメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、「政権は自助を求める前にすべきことがあるのではないか」との疑問を呈しています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2019年6月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

老後2,000万円問題が置き去りにしたもの

戦後の日本は、少しでも豊かになりたいと知恵を絞り技術力を高め、世界有数の経済大国になった…はずでした。

しかしながら、今は、働けど働けどちっとも潤わない。雇用形態の違いだけで賃金格差が広がり結婚や出産のチャンスや終の住処までもが制限される社会になってしまいました。

「老後2,000万円」問題に関する私見は日経ビジネスで述べましたが(「元“エリート”でも2000万円投資できない定年後の憂鬱」)、老後に必要なお金について議論することと、この日本列島で生活している1億2,000万人が、どうやって食べどうやって生きて行くかの議論は別。

自分の老後は誰だって考えるし、誰だって気になります。だからこそ「未来」に光が見出せない人たちに、少しでも光が見える政策やら社会のあり方を議論することが必要不可欠。「自助の前にやるべきことがあるのではないか。その視点が、今の日本、いや政治家に欠けている。そう思えてなりません。

例えば、ベーシックインカム(BI)です。ベーシックインカムは、単純・明解な一つの制度構想で、

  • 性や年齢、社会的地位や収入に関係なくすべての個人を対象
  • 無条件に
  • 社会が、あるいは社会を代表して国家が
  • 一定の生活保障金額を一律に貨幣で支給する制度

で、世界各地では既に実験的な試みが行われています。

特に「福祉先進国」のフィンランドで2017年1月に始められた試験運用には国際的な関心が集まっていました。

失職中の2,000人に毎月一律560ユーロ約7万4,300円)をBIとして2年間支給し、雇用や所得、健康や主観的な幸福度などにどのような変化があるかをコントロール群(BIをもらわない人と比較検討

その結果、

  • 働いた日数、稼いだ額には変化なし
  • 「健康である」とした人は給付群56%に対し、コントロール群46%
  • 「ストレスをあまり感じない」とした人は給付群55%に対し、コントロール群は46%
  • 「他者への信頼度」は給付群の方がコントロール群より高い

ということがわかりました。これらを受け、研究チームでは、「BIが労働意欲を減退させることはない一方で主観的な幸福度を上昇させる効果がある」との見解を示しました。

ところが、です。なんとフィンランド政府は試験運用の延長を断念。一説には「BIを実施するには、所得税の大幅な引き上げが必要になる」ということが理由だとされ、今後は「BIとは別の方法を検討する」というのです。

いい結果が出ていただけに残念ではありますが、確かにBIに関しては原資の問題はかねてから指摘されていました。元がなけれは社会保障は持続しない。新たな格差が生じる可能性もある。だからこそ多くの国々がそれぞれのやり方でBI実験に乗り出していたのです。

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