一般的に考えられている相反する特徴を、一点のみならず二点も両立させたことで話題となっている折りたたみ傘があります。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、釣り具メーカーとしてすでに名声を得ていた企業が長い期間をかけ開発し、数々の特許も取得したという折りたたみ傘に関する戦略と戦術を解説しています。
相反する特徴の両立への挑戦
今号は、人気の折りたたみ傘を分析します。
● スポーツ用品・釣り具大手のグローブライドが展開しているアパレルブランド「D-VEC(ディーベック)」よりリリースされた折りたたみ傘「カーボンテクノロジーポータブルアンブレラ」
戦略ショートストーリー
折りたたみ傘の軽さを重視する方をターゲットに「釣り用品で培った技術」に支えられた「軽い」「スムーズな伸縮」「丈夫で快適」等の強みで差別化しています。
軽量と強度を両立させるだけでなく、これらの機能性とファッション性を両立することで、様々なメディアで取り上げられており、ユーザーからの支持を得ています。
■分析のポイント
「カーボンテクノロジー ポータブルアンブレラ」の50cmサイズの重量は76gということです。この数字だけを見ても、すごさが伝わりにくいですね。
私の身の回りにあるものですと
- マグカップ(空っぽ):274g
- ボックスティッシュ(未開封):209g
- スマホ:136g
- カルビーのポテトチップスクリスプ:79g(内容量は50g)
このように周囲のものと比較すると76gがいかに軽いかがわかります。折りたたみ傘は300g以下で軽量の部類に入るようですから、超軽量といえるでしょう。
軽さもすごいのですが、軽さだけでなく、丈夫であることも実現していることが差別化のポイントとなります。一般的に
- 軽さを追求すれば、強度が落ちる
- 強度を追求すれば、重くなる
といった形で、軽さと強度は相反する特徴です。グローブライドは、この相反する特徴を両立するために3年の開発期間をかけて実現したそうです。
結果的に、柄の部分だけで6つの特許を取得するなど他社が真似できない技術を蓄積できたわけですが、相反する特徴を両立するという難問に根気よく向き合ったからこそ実現できたのだと思います。
さらに、これらの機能性(強み)にファッション性を加えることにチャレンジしているところが素晴らしいです。一般的に
- 機能性を追求すれば、ファッション性は犠牲になりやすい
- ファッション性を追求すれば、機能性は犠牲になりやすい
といった形で機能性とファッション性は相反することが多いです。グローブライドは、こちらでも相反する特徴を両立しようとしているわけです。
- 軽さと強度
- 機能性とファッション性
相反する特徴を両立するという難しいことにチャレンジしているからこそ、顧客にとっての大きな価値につながり、その価値が他社との差別化にもつながることを示している好事例だと思います。
今後のグローブライド、「D-VEC」に注目していきたいです。