【書評】年金は破綻すると呪い続け高校生を不安にさせる大人達

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令和時代を生きる高校生の不安といえば、進路でも恋愛でもなく「老後」なんだそうです。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが取り上げているのは、そんな高校生の不安を高橋洋一氏が払拭してくれる一冊。話題の年金について高橋氏はどう見ているのでしょうか。

偏屈BOOK案内:高橋洋一『日本の「老後」の正体』 

81vlMO2efwL日本の「老後」の正体
高橋洋一 著/幻冬舎

いまの高校生は「老後が不安」だという。なんて不憫なんだ……それが本書を書こうと思った動機だという。日本経済が危機的状況だとか、年金が危ないとか、大人はもっと不安なはずである。老後ゾーンのわたしは開き直って(:観念してふてぶてしい態度に出る)いるが。変に危機感を煽る評論家が多いが、高橋先生の本を読むと安心できる。さいきん頻繁に出版し過ぎ観もあるが。

世の中には人の不安心理を利用する人がいるから要注意である。年金制度は厳密な計算の上に成り立っていて最初から破綻しないように設計されている。国が経済危機を迎えたからといって、簡単に破綻するようではその役割を果たせない。多くの人が抱えている漠然とした不安は杞憂である。なぜかというと……といった心地よい解説をしてくれるので、わたしは高橋先生の信奉者だ。

本書は高校生との対話形式で話が進む。読み終えると「老後について必要以上に不安がる必要はない」と感じてもらえるはずだという。日本経済は本当に成長できないのか、日銀の政策はうまくいっていないのか、「国の借金1,000兆円」は本当か、これらはすべて嘘と思っていい。著者と対話する高校生はひと安心するが、一番不安なものが残っていると言う。それは「年金」のことだった。

高校生:年金制度はもう危ないって聞いたことがあって、これからコツコツ払っていっても無駄になりそうで怖いんです。

 

先生:結論からいえば、きちんと払っていれば、ちゃんと払ってもらえるよ。

 

高校生:でも、高齢化が進んでお年寄りばっかりになったら、国に年金を払う余裕なんてなくなるんじゃないですか?

 

先生:確かに、メディアが長い間「年金が危ない」と煽ってきたし、心配になるのも無理はないね。だけど、これまで日銀や財務省から出たさまざまな論説に誤りがあったように、「日本の年金は破綻寸前」というのも、大きな誤りなんだよ。もちろん、ムチャクチャな制度改悪や経済政策をやれば別だけど、現状の制度をきちんと運営すれば、「破綻だ」などと大げさに悲観する必要はないんだ。これから、その理由をじっくり説明していこう。

……というスタイル。

「年金が危ない」という考えが浸透すると誰が「得をする」のか。まず財務省。費税増税を目指しているが、実現するためには「社会保障」への不安が高まっているに越したことはない。金融機関も「年金が危ない」という“常識”が世の中に広まっていたほうが、投資や年金保険などが売りやすくなる。金融機関系のエコノミストやファイナンシャルプランナーたちも、仕事を得やすい。

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