新しい環境で2ヶ月が過ぎても友だちがいない様子の高校1年生をもつ親御さんから、メルマガ『子どもを伸ばす 親力アップの家庭教育』の著者で家庭教育のプロの柳川由紀さんの元に相談が届きました。柳川さんはまず、話をよく聞いて、本人の気持ちを優先することが大事だとアドバイス。思春期の子どもにとっては一人でいることも大切なことだと教えてくれます。
思春期の子どもは難しい
Q. 中学時代後半に軽いいじめに遭い、誰も知り合いのいない高校を選んだ娘。入学してふた月余り経つのに、友だちがいない様子です。休み時間は、本を読んで過ごし、ランチの時間には一人で黙々と食べているのだそうです。人になじめないのではないかと心配です、親としてどう接したらよいでしょう?(高1姉妹のお母様より)
柳川さんからの回答
中学後半は、お嬢様もお母様も辛い思いをなさったのでしょう、大変でした。今、お母様から見て、お嬢様にお友だちがいないように見えるとのこと、まずはお嬢様の話をよく聞いてみることをお勧めします。今回は、思春期の子どもにとって大切なことについてお伝えします。
1.しなやかな心を持つ
いじめられる経験をした子どもたちのうち、克服し、その後生き生きと学校生活を送っている子どもたちに共通するのが、「しなやかな心を持っている」ことです。
つまり、何か嫌なことがあったら、「立ち向かう」のでも「逃げる」のでもなく、そのこと自体を「まあいいか」とまずは「受け止める」ことができる力です。そして、迷っていたら、白か黒かとはっきり決めるのではなく、「あいまいさを許せる」発想を持っていることです。
2.孤独感をきちんと味わう
人は、発達段階を経て成長していきます。13歳から22歳くらいまでの思春期や青年期では、「自分はこういう人間なんだ」と客観的な目で自分を見るようになり、自己認識や自己洞察ができるようになります。
その過程で、孤独感に耐えられない人は、決定のプロセスを人に任せたり、人の言いなりになったり、決定を先に延ばしにしたりして自分と向き合うことから逃げてしまいます。ですから、一人の時間、自分を顧みる時間を持つことは、とても大切な意味があるのです。
3.意思決定する機会を持つ
自分を理解できると、何事も主体的、能動的に考えたり、行動したりできるようになります。しかし、なかなか自分を理解することは難しいものです。そのために、自分自身で意思決定する機会を持つことが非常に重要になります。
意思決定力がつくと、やるべきことを最後までやり抜こうとするこころの機能(=心理学ではグリットと呼ぶ)を身につけることができ、感情のコントロールもできるようになります。
家庭教育アドバイス…「自己決定力のない子どもたち」
自己決定力のない子どもが、なぜ「自分がこうしたい!」と思う行動ができないのか、その理由をご存知でしょうか?それは、周りが自分に期待していることではないからです。
つまり、周囲(親、先生、友だちなど)が期待する人物を演じなければ嫌われてしまう、認めてもらえない、と感じているから、自分のやりたいこと、したいこと、を押さえつけてしまうのです。
ある意味「空気を読める子ども」ですが、それが高じると自己決定、自己判断ができない人間になってしまいます。そのため、自分の決定に自信が持てず、常に周囲からの評価を気にし、不安を抱えています。
この状態は、「社会的自己肯定感が高く、基本的自己肯定感が低い」と言われます。周りからの期待に応えようと自分を押し殺し、あたかも自己決定しているかのように見えて、実は、全て周り任せなのです。
価値基準が他人軸になっている子供たちです。こうした子供たちは、いつまでも親の判断や価値観に縛られます。自分軸、自分の価値基準を持つ人物に育てるために、子どものうちから自己決定できる環境を提供することが親の役目の一つです。
ご相談者のお嬢様は、しなやかな心やご自身で決定する力をお持ちだからこそ、今は一人の時間を大切にしているという可能性もあります。まずは、お嬢様の話やお気持ちを知る機会を持ち、その上で、お嬢様ご自身の気持ちを優先した声掛けをしつつサポートしていきましょう。
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