米でも中でも日本でさえない。G20で真の鍵を握っていた人物

 

ここで打開策のカギを握ると考えられるのがエルドアン大統領です。その理由の一つが、トルコがイランに対して持つ影響力と、危険な遊びですが、米ロ間の緊張を“うまく”利用していることです。

これまでに何度か述べているように、トルコは、国際的に高まるイラン包囲網に対峙する形で、ロシアとともにイランのバックアップをしていますが、権益の拡大とアメリカに対する外交的なバランスを狙いとするロシアと違い、地域における大国として直接的な権益と影響力を持っています。

ロシアはこれまでにもイランに対してミサイルなどの供与を行おうとしてきましたが、アメリカなどの抵抗を受けて最新鋭のミサイルシステムの導入はできていません。やっとイランが導入したS300もすでにアメリカには技術的に100%筒抜けの技術で(注:アメリカもS300をロシアから過去に購入して、その技術的な秘密を丸裸にしているから)、アメリカとその同盟国(特にイスラエルとサウジアラビア)に対しては抑止力としては作用しない状況です。

それに対し、トルコは、アメリカとの緊張を高める結果となっていますが、ロシアからS400という最新鋭のミサイルの導入を決めています。これはなかなかの矛盾で、トルコはNATOの重要なパートナー国として、中東・ヨーロッパ地域の安定のためにさまざまな装備や設備をアメリカなどから導入しているわけですが、S400を正式に導入することで、米ロ間でのパワーゲームを挑んでいるだけでなく、イランの後ろ盾として、さまざまな憶測をアメリカサイドにさせる結果になっています。

言い換えれば、S400をトルコ経由でイランに導入する道をロシアに開いている可能性です。もしそのような事態になれば、NATOの持つ地域における優位性を無にする可能性が出てきて、欧米諸国にとっての安全保障体制の根本的な見直しに繋がるかもしれません。

別の側面では、これも以前より何度かお話していますが、収束の糸口が見えないシリア問題についても、エルドアン大統領のトルコは解決に向けたcasting voteを握っているといっても過言ではありません。欧米諸国から一斉に非難を受けるアサド大統領をロシアとイランと共に庇うことで、地域における緊張のバランスを取っていると言えます。

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