通信社「書き得」記事が示す、ジャーナリズムを成熟させる必要性

 

「インタビューは政府発行のロシア新聞を含め多くのメディアが報道。一部メディアは北方領土の引き渡しをしないことを『プーチン大統領が公約』(ブズグリャド紙)、『プーチン氏は領土問題を終わらせた』(ニュースサイト『ガゼータ・ルー』)などと、日本との交渉は終わったかのような見出しで報じた。クレムリンがこうした意思決定をし国営テレビで“声明”を出した以上、『交渉は難航が予想される』どころか、G20大阪サミットの場での大筋合意はおろか、安倍首相の任期中の領土問題での大幅な前進はなくなったと考えるのが常識ではないか」

「インタビューで、プーチン氏は『ロシア政府が策定した南クリール諸島(北方領土)を含む極東地域の大規模な開発計画を実現していく』と表明。新しい空港など『インフラも整備していく』とした。ブリリョフ氏がさらに、『ロシア国旗を降ろすことにはならないか』と質問すると、プーチン氏は『そうした計画はない』と否定した」(以上、6月23日付 共同通信)

共同通信の記者は、「クレムリンがこうした意思決定をし国営テレビで“声明”を出した以上、『交渉は難航が予想される』どころか、G20大阪サミットの場での大筋合意はおろか、安倍首相の任期中の領土問題での大幅な前進はなくなったと考えるのが常識ではないか」と決めつけています。 これについて私が言えるのは、そうかもしれないし、そうでないかもしれないということです。書きっぱなしの記事、「書き得」の印象すらあります。

この記事は、安倍首相の失敗を強調したい切り口ですが、外交って、経験のない通信社の記者やデスクの物差しで測れるほど単純なものじゃありません。外交のプロであれば、むしろ、「そうした計画はない」という含みを持たせた表現に注目し、それこそ粘り強くロシアとの協議を続けることになるのです。 この間、カニは自分の甲羅の大きさに合わせて穴を掘るという話を書きましたが、マスコミが自分たちの尺度でしか物事を判断していないことをわかったうえで、それに振り回されることなく、民主主義の要であるジャーナリズムを成熟させていく必要があります。(小川和久)

image by: 敷香 at ja.wikipedia [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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