6月30日、トランプ大統領と金正恩委員長が板門店で突如会談を開き、終盤には米朝韓3者トップ横並びの画も報道されましたが、肝心の会談内容は明かされていません。今回の第3回米朝会談で朝鮮半島情勢はどう動くのでしょうか。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年の日本人著者が、朝鮮半島に平和を求める切実な文在寅大統領の会談後の発言や、北朝鮮に残されたリミットについて考察しています。
板門店で三者歴史的握手
2019年6月30日、南北分断の象徴的な場所である板門店で、米のトランプと北の金正恩が高さ5センチの軍事境界線を手をつないで行ったり来たりするイベントが行なわれた。2分くらい会えればそれでいいんだと言っていたトランプだったが、金正恩と53分という長時間にわたった二者会談を実現させた。終わりには韓国の文大統領もいっしょに会同して三者が板門店で握手するという演出に成功した。
二者による会談の内容がどんなものだったのかはまだわかっていないけれど、「これからお互い、うまくやっていこう」ということだったんだと思う。非核化の具体的なことではなくて。
会談が終わったあとの金正恩ははじめのときとは打って変わって緊張が解け、終始ニコニコモード。2018年4月に南北が会い、6月に米朝が会って握手で別れ、さらに2019年の2月27日、28日の両日開かれた米朝首脳会談(第二次。ハノイ会談)では、合意点を見い出せず決裂した。その後ずっと膠着状態に陥ってしまったことを思うと、またニコニコと別れながらも、相手の腹の底を窺いあうモドカシ・モードになる可能性も大じゃないかとも思うのだが、今回はどうだろうか。
米が完全非核化じゃなくて、北の核凍結のレベルでサインする約束をしたんじゃないかといったニュースも7月3日には流れていたけれど、ボルトンがそんなことは一切ないと強く否定していた。まさか、核凍結で1次的にはOKということはないとは思うけれど、米朝の非核化に向けての歩みが一歩でも前進してほしいと祈るだけだ。
板門店に行く前に開かれた米韓首脳会談が終わっての記者会見の場でのエピソードを一つご紹介したい。この場で外国の記者たちからもいろんな質問が飛び出した。所定の時間が過ぎていた。トランプと文両大統領。この場を切り上げてすぐに板門店まで行かないといけない。ところで最後の最後のダメ押しの質問に、文大統領がすごい名言を吐き出すことになる。
直線的にバアーっとスピードを上げていくこともあるけれど、紆余曲折の時間をすごすこともあるし後退することもあろう。しかし、対話以外に平和を実現する方法はない。
とっさにこういう名言が出てくるとは、文在寅の思考の深さにちょっと驚かされた次第だ。わが日本の親分はどうだろう。とっさのときに、こんな名言が出てくるだろうか。明治レジームを取り戻そうなどという支離滅裂なことばの遊びが出るくらいが関の山かと見る。
7月2日に、文大統領が話した談話がある。
文大統領の話
韓国の人も全世界の人も板門店で行なわれた歴史的場面をご覧になりました。これによって南北につづいて米朝間にも文書の上での署名ではないけれども事実上の行動として敵対関係の終息と新しい平和時代の本格的スタートを宣言するものとなったと思います。今後引き続き行なわれるであろう米朝対話においてつねにこの事実を想起し、その意味を反芻しながら対話の土台として据えていくなら必ずすばらしい結果が得られるだろうと信じます。
こういうことを語った。事実上の終戦宣言がなされたのだということを強調しているのが窺える。韓国に住むわれわれ住人としては、北と米、あるいは北と南が戦争をしないことが第一の願いだ。それがほぼ事実上確定したとみていいのではないのだろうか。