これまでもたびたび、いじめ隠蔽などを巡る学校や教育委員会の不誠実な対応を暴いてきた現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんですが、今回のメルマガ『伝説の探偵』に記されている事案も相当に深刻です。紹介されているのは、2017年当時小学生だった女子生徒が教師から受けたセクハラとパワハラ、そしてそれに伴う関係機関の呆れた所業。子供を預けるに値しない教育現場の様子が白日の下に晒されています。
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スクールセクハラ・パワハラ事件
令和元年6月28日、ある中学1年生の女子生徒Aさんが小学生当時に受けたセクハラとパワハラ行為で千代田区と小学校の校長副校長、担任であった教員らを相手取り裁判を始めた。
民事事件であるため賠償金請求となるが、彼女は真実を求め、その額を「1円」とした。これは、金銭を求めるのではなく、真実を求めるとした彼女の意思の現れである。
実はわいせつ行為等で処分された教職員は平成28年度で226人(文科省)
文科省の調査によれば、平成28年度で226人もの教職員がわいせつ行為で処分されている。わいせつ行為の態様は、多い順に体を触るが89件、性交は44件、盗撮やのぞきが40件などとなっている。
ちなみに、文科省のいうわいせつ行為等とは、わいせつ行為そのものとセクシャルハラスメントが含まれている。
日々教育関係のニュースを見ていると、いじめの隠蔽や不登校問題、教職員が起こす事件などを目にすることになるが、教室とて安全ではないということはしっかりと認識しておかなければならないのだ。
女子生徒Aさんが小学生時代に受けたセクハラ行為
訴状では、Aさんは小学生当時、担任であった男性教員に、顔を異常に接近しされて「かわいいですね~」と何度も声を掛けられたり、頭の上に結んだ髪束がひどく崩れるほど握り崩されたりした。また、頬やおでこを指でツンツンされたりと、接触をされていたとある。
一方、会社などで行われるセクハラ事例においては、これらの行為は全てセクハラの代表事例として挙げられている。
子どもと担任の関係であれば許されるということはなく、Aさんは嫌だということをしっかりと示していた。それでも、しつこく担任教員は続け、ついには、上司からこうした一連の行為を止めるように指導されるに至っている。
また、この担任教員はAさんが体調不良でプールに入れないと申告しているのにも関わらず、激昂する様子を見せて、無理やりプールでの授業を受けさせた。
担任教員はプールの授業でやたらと女子児童を触ろうとするため、その教員の名前をつけて「○○菌がつく」と児童らは騒ぐようになっていた。Aさんも然り、さらにジロジロと舐め回すように水着姿を見てくる担任教員があまりに気持ち悪く恐怖心を持っていた。
セクハラ行為の後、受けたパワハラ行為
こうした一連の担任教員のセクハラ行為が問題となり、保護者との話し合いに発展する。
その最中、Aさんは身長や体重などの身体の記録が書かれた健康記録カードと、運動会で使用するために預かっていた応援団セットがロッカーから消えてしまう。この紛失問題で、運動会の応援団担当教員はAさんが紛失したものだと決めつけた。
Aさんの証言によれば、応援団教員は「ロッカーから消えただと?いいや、お前が失くしたんだ。お前が失くしたんだから、毎日探せ!毎日どこを探したか、先生に報告しろ!」と言い放ったという。
その後、4日間探し、その都度Aさんは報告をしたが、その度に怒鳴り散らされ、睨みつけられたため、5日目にもう1人の応援団担当教員に事の次第を相談した。ところが、激昂する応援団教員は「お前は卑怯者だ!都合が悪くなったからって、○×先生を連れてきやがって!」とさらに大声で怒鳴った。
ちなみに、セクハラ担任教員はこれらの様子を知り、ニヤニヤしながら「困りますねぇ」とその様子を見ていたという。この状態からAさんはセクハラ申告によって起きた嫌がらせだと感じた。
そして、この状態は数週間続いた。Aさんは毎日、紛失物を探し、その報告をするが、その都度激昂され、「ないばかり報告するな」と理不尽な怒りを向けられていた。ついにAさんは心身を壊し、自殺未遂を行うに至っている。未遂で済んだのは、保護者が異変に気付き、行為を止めたからであり、もしも保護者が気づかなければ、最悪な事態が起きていたかもしれない。
健康記録カードは後にAさんのお道具箱から見つかったと副校長が電話でAさんの保護者に報告しているが、見つかった状態は、A4のクリアファイルの中に挟まっていたという事であった。しかし、お道具箱はA4のクリアファイルが入っていると蓋が挟まってしまい、閉まらないのだ。
それまでお道具箱の蓋はしまっていたことから、これは学校内で何者かの作為的な事態が起こっていたことは明白なのだ。
また応援団セットは見つからず、保護者は寄贈品としてハチマキやタスキ、手袋を学校に対して弁償をしている。弁償をすることは、ある意味、紛失の責を負ったような形にも見えるが、被害者からの皮肉の意味が強いと言えるだろう。
応援団セットは、学校の構内で行われている剣道クラブの代表講師が拾い、そのクラブが管理する倉庫に保管していたということが後日判明している。つまりは、Aさんが紛失したものではなかったのである。
不登校教室
セクハラ行為があり、それを申告したら、不当な嫌がらせ(パワハラ行為)を受けた当時小学生であったAさんは、恐怖心から学校に通えなくなってしまった。
そこで、千代田区が運営する不登校教室に通うことになるが、ここでも学校の要請によって不当な扱いを受けることになった。学校側が不登校教室側にした申し送りは2つあった。
- Aさんは不登校教室への入室ができない
- Aさんは無期限で、個室で一人で学習する
これにより、Aさんのスペースは廊下の一番奥、パーテーションで区切られた10畳ほどの部屋であった。
Aさんも保護者も教室で普通に授業が受けられるように抗議をするが、不登校教室は学校に確認をしないと即答できないと言い、学校は教育委員会に確認しないとわからないと言い、教育委員会は、学校長に確認をしないとわからないとして、たらい回しにしたのである。
また、学校側は必要な教科書の配布や学習用プリントの配布をAさんには行わず、提出期限の数日前に500枚程度に及ぶテスト類を配布し、期限内に提出すれば後期の成績をつけてやると言い放つのである。
もはやブラック企業の追い出し部屋に入れられてしまった状態になったのである。
真実を認めさせるために訴えざるを得ない
こうして、Aさんは別の小学校に転校することになった。
転校の折の録音を聞くと、千代田区教育委員会は、転校の理由にAさんらが「担任教員のセクハラ」と書いた部分を指摘して、手続きが難しくなるという理由を述べて書き換えることを求めている。
口調は事務的なものであるが、文間からは書き換えないと転校は認められないとも受け取れる。少なからず、被害を受けたと申告しているものへの配慮はその対応には感じることはできなかった。
また、学校主張のように応援団セット紛失の問題に対する指導が、セクハラ申告の報復でないとしても、児童を数週間に及び言葉や態度で痛みつけ、それが原因で自殺未遂まで起こしたことは、どう少なく見積もっても、体罰となろう。
セクハラ行為についても、学校側は一般にいう対応とは極めて緩い対応に留まっている。例えば、体調不良で見学を希望している女子児童をプールに入ることを強要するのは、極めて危険な行為と言えるだろう。さらに、イヤらしい表情で、女子児童の水着姿を舐め回すように見続け、プール指導を名目に身体に触りるというのは、許される行為なのだろうか。
こうした行為を嫌だと申告することは、モンスターなのだろうか。いや、それは当然の申告であり、これには教育機関だろうが真摯に対応しなければならなかった。ところが、こうした事実は問題となることはなく、まるでAさんらが過敏に反応する存在とされ、被害者の尊厳すらも傷つけた。
Aさんは現在は中学生であるが、そんな子どもが勇気を振り絞って、震えながらも自ら真実を求めるため裁判に訴えることにした。弁護士を代理人としない本人訴訟だ。それにどれだけの覚悟が必要だったのだろうと考えると、千代田区教育委員会を含め問題となった学校の罪深さを感じるのだ。
この裁判は判決が出るまでしっかりと追っていこうと思う。
編集後記
私は小学6年生当時のAさんの相談を受けています。その時の印象は、物事をはっきりと話し、理路整然と話す頭の良い子だなというものでした。意思表示もはっきりとしていました。
つまり、気持ちが弱いとか精神的に何かあるという子ではありませんでした。確かに被害を受け続けてトラウマやフラッシュバックがあり、当時のことを思い出してもらう際は、大変でしたが、全て真実を話したと言えます。
ですから、私は弁護士を紹介し、その指導を受けて本人訴訟をやってみたらどうかと話しました。真実を求めるためには、それが一番早い段階にあるのではないかと考えたからです。そして、その段階まで追い詰められてしまっている状況であることは明らかでした。
残念なのは、制度や仕組みにおいては全国的にモデルになるようなものを持っている千代田区で、ある種のヒューマンエラーが積み重なり、問題が多発しているということであり、どこかで真っ当な判断があれば、ここまで児童が苦しむことはなかったはずだということです。
裁判になれば、勝ち負けを争うことにはなりますが、この事態を教育機関には重くみてもらいたいと思います。そして、学校は治外法権ではないこと、子どもだからとなんでも軽く見るなということを強く認識し、行動してもらいたいと思います。
また、文科省の調査によるわいせつ教職員の数値は氷山の一角に過ぎません。パワハラセクハラは、教職員間でも多発している問題ですが、多くは隠蔽されます。普通の職場環境にするという意味でも、教育界はこの問題を見直し、セクハラ教員やパワハラをする者を徹底的に洗い出さなければなりません。
セクハラはダメ、パワハラはダメと言いつつも、行動で示せず、事件が毎日のように起きるようでは、学校は嘘を平気でついていいと教育していることになってしまうのです。
嘘つきに教えてもらうことなど何もありません。嘘つきは教育界から去るべきなのです。
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image by: momo3oki / Shutterstock.com