この「請求権が残されている」という判断は、韓国・日本両司法部で完全に一致している。ちがう部分は、日本では裁判を通じては救済できない。主権が消滅したから。日本の場合は自ら自発的に救済せよということ。韓国の大法院の判断は、日本の政府・企業が「日本の最高裁」の判断にしたがって被害者を救済していないから強制的に財産を押さえる。こういう判決をしたということ。この点がちがうのみ。
一般的な認識は、日本での裁判に負けて韓国では勝ったから今両国でこういうことになっているというものだが、実はそうじゃない。戦争の被害者が救済されていない、救済する価値があるから救済せよ、という部分が本質で、このことは日韓司法部でまったく同じなのだ。日本と韓国の司法部の判断が同一であることをテコにして、韓国の法廷での裁判が始まり、2013年に高等審で損害賠償を認める判決が出て、それが確定されたのが去年2018年の10月と11月の両判決であった。
長々と書いてきてしまったけれど、ここでの結論は、日本の最高裁の判断が「戦争被害者は自ら救済せよ。それは可能だ」といっていること。これを土台として崔鳳泰弁護士が韓国で活動をしている。崔鳳泰弁護士が韓国内だけの法律で動いているのではなくて、日本の最高裁の判断を元に動いていることに注目していただきたい。
徴用工問題は(慰安婦問題もそうだが)、これは政治・外交問題ではなくてあくまでも人権問題だという点。この人権問題という点を、日本の皆さんにもご理解いただきたい。筆者は日本人であるので、ずっと長い間、最終的に解決したという条約があるのになんで韓国からこんな問題がまた掘り返されて出てきてしまうのか、と思ってきた。しかし崔鳳泰弁護士の真摯な講演を見て納得がいった。
そうだったのか。韓国の大法院(最高裁に相当)がいってるんじゃなくて日本の最高裁が言っている内容を土台としてがんばっているのか。確かに政治問題じゃなくて、これは人権問題ではある。人権問題というのは、社会システムとか時代とかとはまた別の次元のことだ。人権が侵害されたらそれは必ず保障されるべきものだと筆者は思う。
今韓国では、日本の半導体輸出規制というカードが出された後、ものすごい反日の嵐が巻き起こっている。デモの先頭を切る人たちが、この部分(つまり、日本の最高裁の判断に基づいて徴用工裁判が起こされたという点)をわかってやっているのかはなはだ疑問ではあるけれど、日本がガキみたいに、韓国にこういう姑息な嫌がらせをしてはならないという気持ちに完全になった。日本の武士道は、こんな干からびた、こうも姑息な精神ではないはずだ。戦いというのも、日本人の基本的な精神世界とは似合わないものだ。和を以って尊しとなす、が日本の昔からの心情ではないのか。