2016年、中国の新華社通信系列のニュースサイトが、蔡英文のことを「独身女性の政治家として、蔡には愛という感情面での負担、家族という制約、子どもという心配事がない。彼女のやり方や戦略は時に感情的で個人的で極端だ」と評論しました。それに対して、アメリカのワシントン・ポストは、「この論説が、蔡について何も伝えていない一方で、中国政府には『性差別やシングル・シェイミング(独身であることを恥だとして批判すること)が存在する』ことは伝わった」として、批判したのです。
まったく意味のない中傷です。2020年1月に予定されている台湾総統選挙は、与野党ともに立候補者はほぼ出揃いました。元行政院長の頼清徳の支持者たちはなおも不満を抱えていますが、頼氏本人は「負け」を認めており、今後は蔡支持を表明していくと言っています。それらの動きについてマスメディアが今からいろいろと騒いでいいますが、各候補が本格的に活動しはじめるのは8月以降でしょう。しかし、今度の選挙は2018年11月の地方選挙とは全く違う性質のものであるため、先行きは読めないのが正直なところです。
2018年の選挙では、与党民進党が大敗しました。さらに、国民党が70年にわたって台湾を牛耳ってきた支配力はまだ各界で衰えていません。
また、与野党の候補と、それ以外の第三の候補たちにはそれぞれの弱味があります。例えば、蔡英文は独身女性としてのイメージを強調するため「則天武后」や「西太后」を連想させられることがよくあります。それを性差別で片づけるのは簡単ですが、有権者にとってはイメージは重要です。鴻海の郭会長は、中国の人民解放軍とチャイナマフィアとの関係もささやかれる人物です。また、トランプ大統領との親密ぶりをアピールしているわりには、トランプ大統領からの支持表明はありません。そうなると、親密ぶりをアピールしたのが仇となり、うさんくさい奴との印象をもたれることでしょう。
これらのゴシップを含めて、2020年の台湾総統選挙は、中国にとっては「内政問題」ですから、外国がやたらに口をだせば「内政干渉」するなと攻撃されることになります。しかし、この選挙はすべての人類に対して民主か独裁かを問う選挙だと私は考えています。そのため、世界各国の積極的な参加を呼び掛けたい気持ちです。
image by: 蔡英文 Tsai Ing-wen - Home | Facebook
※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年7月18日号の一部抜粋です。