国際交渉人が解説。各国首脳がこぞって『安倍詣で』に参じる理由

 

しかし、私は、この海外からの期待にまだ日本は十分にこたえられていないと考えています。その理由は、雰囲気は感じつつも、具体的にどう振舞っていいのか、もう一つ掴めていないことと、強いと感じられ、期待を寄せられている安部外交の司令塔を担うのが誰なのかがはっきりしていません。 外交といえば、当然、外務省だろうと考えられるのですが、残念ながら、仮にとても大きな外交的な機会が降ってきたとしても、即応性はまだ備わっていません。そういったこともあるのでしょうが、官邸主導の外交も積極的に行われていますが、決して、外務省をうまく使い、日本政府として一体化した外交を展開できていないと思われます。

ゆえに、日本にアプローチをしてみたが、あまり期待に応えているとは感じられないとの反応が各国から返ってきています。これは、日本政府内の外交体制の不備などの内政的な問題でもありますので、詳しくは意見を述べませんが、いち早く体制の確立を行っていただきたいとねがっています。

では、どのような案件において日本は外交の核となり得るでしょうか?現行の混乱の国際情勢を見れば、チャンスは至る所に点在しています。例えば、混迷を極めるイラン情勢です。 安倍総理のテヘラン訪問に対しては様々な評価がありますが、先日もお話したとおり、互いに振り上げた拳を下ろすきっかけを見つけられないアメリカとイランの間に入って、何とか打開策を見つけるという“仲介者”としての役割は、戦後日本の外交において、確実にステップアップを意味するスタートだったと考えています。 ハーメネイ師との会談と時を同じくして、タンカーが何者かに襲撃されるという邪魔・目くらませはありましたが、国際社会から疎外感を味わっているイランに対して手を差し伸べ、イラン側の考えを聞き届ける場を設定したことは大きな進歩です。

日本は、イラン核合意の当事者にはなれませんでしたが、直接的な当事者でないことが逆に幸いしています。元々長年にわたり日イランの関係は良好と言えますが、核合意の当事者になっていないことで、日本としては率直な国際社会の懸念を伝えることが出来ますし、アメリカもイランも、日本には考えを打ち明けやすくなります。 まさしく紛争調停官・仲裁間の条件を、今、日本は満たしているといえます。9月の国連総会の際に、例年通り、安倍総理とロウハニ大統領との会談が予定されていますが、これまで以上に、日本にかけられている期待は大きいと感じています。

中東における絡み合っている情勢を解きほぐす糸口を提供できるかもしれない』という点も、私が最近の中東各国からの日本への期待感を見る中で、日本の外交的な位置付けの高まりを感じています。メディアではあまり報じられませんし、恐らく政府当局者も知らないのかもしれませんが、シリアのアサド政権は日本に対して親近感を抱いています。

print
いま読まれてます

  • 国際交渉人が解説。各国首脳がこぞって『安倍詣で』に参じる理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け