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トランプ大統領に危機。親しい友人が少女らの人身取引容疑で起訴

7月6日、ファンドマネージャーで億万長者として知られるジェフリー・エプスタイン氏が14歳の少女らに対する人身取引と共謀による容疑で起訴され、大きな関心を集めています。米国在住の作家・冷泉彰彦さんが、自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』でこの件について言及。関心を集める最大の理由は、氏がトランプ大統領と極めて親しい間柄だったとして、噂されている3つのエピソードを紹介。トランプ大統領の政治生命に関わる事態へと発展する可能性を指摘しています。

怪しさ満点、トランプ、エプスタインの交友に絡む一人の女性

著名ファンドマネジャーで億万長者の、ジェフリー・エプスタイン(66歳)といえば、これまでも何度か若い女性に対する性的虐待の疑惑で刑事事件になってきている人物です。何しろ猛烈な富と権力を持っている男で、ニューヨークのマンハッタンに持っている豪華コンドミニアムとか、カリブ海に保有している個人所有の島の豪邸、あるいはフロリダのリゾートを舞台に、何年にもわたり数十人の若い女性に対して性的虐待を繰り返していたというのですが、米連邦地検などは相当の証拠を固めているようです。また、この間、被害者として女性がどんどん名乗り出てきているのも事実で、本稿の時点ではマンハッタンの連邦地裁は、パリから帰国したエプスタインの身柄を確保しており、逮捕状が執行され、起訴もされています。

その起訴状によれば、罪状はトラフィッキング、つまり性的奴隷化目的の人身取引と共謀などとなっています。14歳の少女らに対する6つの行為で有罪となれば、エプスタイン被告には最低でも10年の禁錮刑が言い渡されると言われていますが、その後更に罪状が加わっており終身刑は免れないという説もあります。

さて、ここが当面のポイントなのですが、エプスタインは「保釈を要求」しています。連邦地検は裁判開始まで身柄拘束を続行するよう判事に求めているのですが、本人サイドは保釈を強硬に要求しています。その保釈に関する審問は7月15日(月)に再開されており、本稿の時点ではその議論が始まったところです。

弁護人は、「パスポートは裁判所が差し押さえてもいい」「自家用ジェットも押さえていい」「保釈金は積む(一説によると35万ドル=3千9百万円)」という条件を提示しているようですが、保釈が認められるかは不明です。ここが重要なポイントの1番目です。

さて、問題は、どうしてエプスタイン事件が急に話題になっているのかというと、この男がトランプと極めて親しかったらしいからです。 とにかく仮の話ですが、トランプがエプスタインと同じように、未成年者への虐待を行なっていたら、大統領職からは一発アウトになります。また、エプスタインの犯罪に加担したり、知っていて場所を提供した等の犯罪が明るみに出れば、これもほぼ一発アウトでしょう。
では、ポイントの2番目として、このエプスタインとトランプの「接点」ですが、今のところは3つのエピソードが噂されています。

1つ目は、アコスタ問題です。今から12年前の2007年、エプスタイ ンは、やはり未成年者への性的虐待で起訴されそうになったのですが、フロリダの連邦検事と「秘密の司法取引」を行って、罪を免れたのです。その当時の検察官の中には、トランプ政権下で労働長官を務めていたアレキサンダー・アコスタ氏の名前があったのでした。 要するに、本来であれば重罪になるところを、司法取引に応じ、しかも秘密裏に罪を「処理」した検事が、その後トランプ政権の閣僚になったというわけです。この問題、マスコミが勘付いて大騒ぎとなり、結局、アコスタはクビになりました。

2つ目は、エプスタインがトランプの持っている有名な、フロリダのマー・ア・ラゴを性的虐待の舞台にしていたという疑惑です。例えば、虐待の被害女性の一人は、このマー・ア・ラゴのタオル係として働いていた際にエプスタインに声をかけられたと証言しています。 また、トランプ大統領の伝記を書くために、トランプに関する記録を整理している伝記作家のティム・オブライエンという人物が、エプスタインに関する2002年のトランプ氏の発言として次のような内容を暴露しています。「ジェフ(エプスタイン)とは15年来の付き合いだ。すごいヤツだ。一緒にいて面白いヤツだ。私と同様に美女が大好きでね。ヤツの場合は、若いのがとくに好みのようだ」というのが、2002年時点でのトランプとエプスタインの関係を示すもので、その交友の舞台はマー・ア・ラゴだというのです。

3つ目は、さらに怪しい話で、1992年に遡ります。この時、トランプは42歳で、エプスタインは39歳。トランプは、マー・ア・ラゴを買ったばかりでした。この年に、そのマー・ア・ラゴで怪しいパーティーがあり「カレンダー・ガールズ」つまり「ピンナップ・ガールズ」のような若い美女28人を集めたイベントが開催されたのだそうです。 何と、そのゲストはトランプとエプスタインの2人だけで、言ってみれば28人の女性が2人の富豪男性に呼ばれるという怪しさ満点のものでした。92年といえば、トランプは1番目の奥さんと離婚して、2番目の奥さんと結婚したばかりのはずですが、一体どういう頭の構造になっているのか分かりません。

その92年の「28人のカレンダー・ガール」の話も怪しいのですが、別にもう少し後のものと思われる、トランプが現夫人のメラニアと一緒にいて、エプスタインと大人の女性の4人で写っている写真があります。一説によれば2000年ごろと言われています。

Just “Him and Epstein” and “28 Girls”: Florida Man Drops a Dime on Trump | Vanity Fair

トランプも若いですが、メラニア夫人も完全に「イケイケ」状態で、これも怪しさ満点、仮に2000年だとすると、2番目の奥さんとはメラニアとの浮気がバレて離婚した直後、確かにメラニアとしては「イケイケ」な時期というわけです。

問題は、エプスタインと一緒の大人の女性です。この女性ですが、実は20世紀末の欧米で「メディア王」として鳴らしたロバート・マックスウェルの末子(9番目の子供」であるギスレーヌ・マックスウェル女史(現在57歳)です。 このギスレーヌ・マックスウェルですが、まずエプスタインの愛人であったのは間違いないようです。但し、エプスタインは少女性愛の病癖があるので、ギスレーヌは、愛する男性のためにその幇助をしていた共犯という可能性があります。

その一方で、父親のロバート・マックスウェルというのは、ルパート・マードックのライバルとして、マクミラン社などメディアの企業帝国を築いていたのですが、資金繰りに行き詰まる中で、1991年に地中海で事故死したとされています。 ただ、このマックスウェルの死については、マックスウェルがモサドの工作員だったが、裏切ったので殺されたなどの噂が多数あります。但し、私個人はこの時期にマックスウェルを相手としたMA案件に関与していた経験があり、その際の経験を踏まえると、どう考えても個人で裏金を含めた資金繰りをやっていたマックスウェルが金策尽きて自殺したという考え方が一番自然と思っています。

ところが、その晩年のマックスウェルは、個人的な金融アドバイザーとしてエプスタインを雇っていたらしく、またその際に父親とエプスタインの連絡係をやっていたのが、ギスレーヌだというのです。 では、マックスウェル帝国が総帥の死によって崩壊したのちに、どうしてその後もエプスタインは負債と無関係でいられたのか、兄たちが負債を相続して破滅していった一方で、ギスレーヌはどうして生き残ったのか…謎は山のようにあるわけです。

私には正解はわかりませんが、問題の元凶として1つはマクスウェルの死因、2番目にはマクスウェルの残した最低でも4億ポンド(530億円?)という巨額の負債から、エプスタインとギスレーヌがどうして逃げおおせたのか、3番目にはそのエプスタインが少女性愛の悪癖があり、それを惚れた弱みでギスレーヌが幇助していた可能性という3つの謎が絡まっているように思うのです。 そこに何らかの闇があるのに加えて、トランプが違法行為に絡んでいた可能性もゼロではありません。もしかしたら、某国の諜報機関が、こうした謎の全てに絡んでいるのかもしれません。ちなみに、エプスタインは、ビル・クリントンとの交友関係もあり、このルートも怪しさがプンプン漂います。

本日はここまでにしておきますが、最初に指摘したエプスタインの「保釈」については、私はやめておいた方が良いように思います。証拠隠滅とか、逃亡という問題もありますが、この問題、余りにも闇が深すぎるので、拘置所で保護しておいた方が良いと考えるからです。

image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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