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韓国の止まらぬ日本バッシングもアメリカが仲裁に二の足を踏む訳

もはや泥仕合の様相を呈し、まったくと言っていいほど解決の糸口が見えてこない日韓関係。18日には韓国大統領府が日韓軍事情報包括保護協定の見直しを示唆するなど、事態は混迷を極めています。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、米国の仲裁を含めた日韓両国間の今後について分析・考察しています。

世界経済の大混乱に向かって進む

米中通商戦争は、米中ともにプライドで立ち往生、米国とイランも交渉もできずに立ち往生、日本と韓国も交渉できずに立ち往生、ドイツ銀行も立ち往生となり、暗雲が世界的に立ち込めてきた。今後を検討しよう。

日米株価

NYダウは、2018年10月3日26,951ドルで、12月26日21,712ドルと暴落したが、利下げ期待で、7月16日27,398ドルと最高値を更新して、7月19日でも27,154ドルと水準が高いが下落した。

日経平均株価も、同様に2018年10月2日24,448円になり、12月26日18,948円と暴落し、米国で7月利下げ確実で107円台と、米中通商交渉がうまくいっていないこと、安川電機とキャノンの利益が大幅に減少したなどを受けて、7月18日422円安で21,046円に、しかし、7月19日に一転して420円高の21,466円と戻した

参議院選挙が迫っているので、日銀、GPIFなどの大量買いが入ったように感じる。2兆円割れで売買が少ない中での買いであり絶大な効果があった。このため、参議院選挙後が心配になっている。円の通貨価値も国債の大量発行で下がっている。コストプッシュの悪いインフレが食料を中心にじわじわ押し寄せている。食料品ではインフレ率が4%にもなるという評論家もいる

米国は、過去最高の株高でも金利が低いと7月のFOMCで0.5%か0.25%の利下げがほぼ確実になっている。7月19日下落したのは、0.25%利下げの見方が出たためである。通貨ジャブジャブの金融相場に逆戻りして、バブル株価を謳歌している。そして、米中通商交渉もうまくいっていないことで、トランプ大統領は、残りの3,000億ドル分にも25%関税UPを言い始めている。この貿易戦争も利下げの理由になっている。何でも理由にして利下げを行うようである。景気好調でも予防的な利下げと、NY連銀ウィリアムズ総裁は言う。

関税戦争と金融戦争の結果

しかし、関税UPをしてから1年以上も経つが、米国の貿易赤字は減らずむしろ増えている。ドル高で輸出ができないとトランプ大統領は考えているようで、FRBに強引に金利を下げさせるために、財務省は短期国債を売り、その分を10年国債を買い、金利を下げているようだ。

米国の関税UPで、相手国も対抗関税UPをしているので米国製品は世界的に売れないことになって輸出ができないが、トランプ大統領は、そう考えていないようで益々関税UPを行う方向である。

トランプ大統領は世界経済秩序を壊して世界経済を混乱に導いている

この混乱を避けるべく、中国とロシアは大量の10年米国債を売っているので、米国債金利が上がるはずが、下がっている。この下がっている米国債2%の金利に誘われて、日本の地方銀行や日本の投資家を中心に買い支えている

CLO債権も日本の地方銀行を中心に大量に買っている。日本に貸出先がなく、日本国債の10年物金利はマイナスなので、米国市場に押し寄せている。そして、トランプ大統領がこのようなことを安倍首相に依頼した可能性も否定できない。今年急に、そのようなことが起きている。

しかし、CLO債権は、ジャンク債の集合体であり、景気が悪くなると、流動性がなくなる。価格も暴落することが確実であり、そのような債権を大量保有する地方銀行やゆうちょ銀行の倒産が将来起きることになると米国の証券アナリストから心配されている。

日本企業の業績は、中国景気が大幅ダウンで輸出が減って、製造業を中心に大きく減益になってきた。安川電機とキャノンの業績が証明した。ということで、景気下降のトレンドが見えてきている。ドイツ経済も景気後退になり、ドイツ銀行の業績が思わしくなく、業務縮小を行い、政府の援助を受けて立て直しを行うようであるが、預かり資金の流出が止まらない。

米国経済は、製造業と運輸業が下降しているが、それ以外の業種の景気は、まだ好調のようである。このため、NY株価だけが高い状況になり、世界からNY株式市場に投資が集まることになっている

仮想通貨「リブラ」

しかし、米国の企業も家庭も2007年時点より借金漬けになってしまい、ドル通貨の発行量が多く、通貨価値が下がっているので、FBの仮想通貨リブラに注目が集まっている。FBの登録者数37億人が利用すると、金利ゼロの銀行の価値がなくなり、大きくなると国家通貨の意味もなくなる可能性が出てくるしドル基軸通貨制度も崩壊するので、IMFや米国政府などG7諸国の財務省と中央銀行は、慌てている。

中央銀行の意味もなくなる。FBが世界の中央銀行となる日がくるかもしれないのである。強烈なインパクトを金融業界に与えることになる。「リブラ」に金利を付けても、個人の買い物情報が集まり、個人情報を収集できるので、企業にその情報を売り収益を確保できる。この収益で金利が払え、金利分ドルより有利になる。インフレ時に有効な通貨となる可能性がある。

このため、金融業界はリストラの嵐になっている。今後、金融業界では、ITやAIのエンジニアしか必要ない。というように、金融業界でも大きなパラダイムシフトが起ころうと、ヘッジファンド覇者のレイ・ダリオ氏が、述べている。

レイ・ダリオ氏は、今の状況は1930年代と同じような状況になってきて、債務危機がその内、ミンスキー・モーメントまで行き、その残された時間はほとんどないだろうという。

ウォーレン・バフェット氏も、現金ポジションを増やして、暴落時に株を買い占める準備が整ったようである。今は現金で持っていることの方が株で持つより良いという。バフェット氏もミンスキー・モーメントがすぐ近いと見ている証拠である。

中東情勢

ホルムズ海峡で、イラン革命防衛隊に英国タンカーが拿捕されて、英国は、自国籍船のすべてを護衛する必要になり、複数の海軍艦隊を派遣した。英国とイランの紛争は拡大してきた。

米国は自国の船以外は護衛しないと宣言して、自国の船は、自国海軍艦艇で守れと言う。そのための有志連合軍の結成を米国は呼び掛けている。米軍は世界の警察ではないと、本当に実行し始めている。

日本は、憲法の制約と該当法律がなく、現状では自国船を守ることができない。早く、法律の改正をして、自国船の護衛ができ、護衛中に敵が来たら、武器の使用もできるようにするべきである。

徐々に普通の国になるしかない。海外でも自国の国益を擁護できるような法律にするべきなのである。国際信義を信じられる環境ではなくなってきている。「自分の身は自分で守れ」と言う国際常識が通用し始めている。米国の覇権は無くなり、米国は自分の国益しか守らないという。

中国経済の状況

中国の経済成長が6.2%まで減速してきた。1つには、米国への輸出工場がアジアに逃げていることで、米国が対中制裁関税を発動して1年が過ぎ、企業が生産拠点を中国外に移す動きが加速している。米中摩擦が長期化する懸念が強まるなか、生産移管を検討する世界の主要企業は50社を超えているが、米国に工場を移した企業はない

2つには、米国同様に、企業と地方政府が過剰債務で投資できない状態になってきた。こちらもミンスキー・モーメントまで、あと少しという状態のようである。3つには、政府統制で不動産価格が高止まりして、不動産が売れず個人消費が伸びないことによる。もし、政府統制をしないと不動産価格が暴落して、ミンスキー・モーメントになってしまうために、政府統制を外せない。

このため、国家主導の投資で景気浮揚策を打つしかないことになるが、景気浮揚効果が限定的になるとの心配も出ている。

それと、今後、中国の人件費が高くなり、米国との貿易戦争にもなっていることで、海外企業の流出が起き、その上に、国内市場でも人口減少になり、2026年には貿易赤字になると予測されている。

このため、経済成長を続けるためには、中国としては、情報イノベーションを起こして中国企業の高付加価値製品が世界に売れるようすることで、経済成長を持続させることが中期目標である。

この目標が、「中国製造2025」であり、米国の国家戦略と重なり、このために、中国の目標を潰そうとして、ファーウェイ潰しを仕掛けている。そして、この目標を潰されると中国としても将来の経済を上昇させることができないので抵抗している。

米国は、国家が企業に開発補助金を出すことを禁止しようとしているが、中国は認めないという。中国は対等でないと、電話会議が米中で行われているが、対面会議は行われていない。このため、トランプ大統領も、しびれを切らして関税UPを言い始めている

中国は、米国への貿易より欧州やアセアンとの貿易を伸ばして、米国の影響を小さくする方向で動いている。そして、米国の製品は、中国の不買運動で、売り上げが大きく落ちている。

しかし、米中の世界経済の1位、2位の国で、過剰債務問題が起きている。どちらかの国で、ミンスキー・モーメントまで行くと、世界経済は本当に大混乱状態になる。

それと、トランプ大統領が、この約1年で実施した政策は、メキシコとカナダを対象とした政策しか成功していない。イラン核合意を離脱したが、その後の交渉はできずに戦争に向かっている。欧州や中国との関税UP合戦で、米国製品の販売が不調になっている。ハーレーやアップルのように、工場を海外に移す企業も出てきている。貿易戦争で工場が戻るとしたが、じつは逆効果で、工場が海外に逃げ出している。それも米国として競争力がある企業の工場が逃げ出すという結果になっている。

中国は、当初米農産品を買うとしたが、交渉が不調であり、現時点では米農産品を買う予定はないようであり、米国の農家は非常に困っている。勿論、米農家は、トランプ大統領の支持層であるが、支持離れが起きて、トランプ大統領は、米農産物を日本に買わせる方向で、日米通商交渉は進行しているようである。

しかし、日本の農産物輸入促進は、来年11月選挙までに合意が必要であり、日本への譲歩もしないと、日本との交渉も数年がかりになるので、自動車部品の関税をゼロにして、日本自動車企業の工場進出を容易にするようである。

日韓関係の激化で

韓国は徴用工賠償請求で、日本企業が賠償に応じないと、資産売却に踏み出している。韓国は、日本の第3国仲裁調停には同意せず、これに対して、日本は韓国をホワイト国からも外し、国際裁判所に提訴する準備をするというが、韓国が応じないと提訴できない。提訴して韓国が応じない場合、次の対応策を実施することになる。

その上、韓国は、日韓の軍事情報協定を破棄するとした。このため、在韓米軍への補給や支援が日本はできなくなる事態になる。米国は、韓国のこの破棄を受け付けることができないかまたは在韓米軍を引き上げるしかない

日本は韓国の対応策として、金融制裁か韓国資産凍結か、いくつかの制裁手段があるが、日本企業の被害が少ない対応策を実施してほしいものである。しかし、日韓関係も改善の糸口が見いだせずに、米国の仲裁を待っているような感じになってきた。

しかし、米国は、直ぐに仲裁をする方向ではないようである。韓国企業が、「中国製造2025に協力して最先端半導体工場を建てていることや日本製の最先端機械を中国に横流ししていることに不満があり、この横流しを止めるまで、日本の処置を歓迎しているような感じである。

日本は、次の制裁を打つことになるが、その時点で米国が仲裁するようである。トランプ大統領は渋々仲裁を行うとした。当面、韓国を米国の陣営に引き留める必要があり、ホワイト国外しが終わった時点で仲裁の用意があるようだ。しかし、そろそろ、統一朝鮮への方向で、世界は動き出すことになる。

米国も日本も中国も、次の世界構図を見た動きをしだした。日本は米国とも中国とも友好関係にしている。

中東でもアジアでも欧州でも、現世界体制の限界になり紛争が激化して、世界の大混乱後の次の世界構図に向けて、その予兆が見え始めている。将来は現時点でその予兆を示す。その予兆をとらえることで、将来が見えることになる。

日本衰退の予兆

日本も戦後70年以上続いた成長経済モデルの大転換点になっているが、皆が今のモデル継続を希望している。しかし、人口が減って経済規模が縮小し継続できない時代になってきた。

しかし、見た目の経済規模を同程度にするために、量的緩和という手段で貨幣価値を下げて、GDPの数値を維持している。丁度良いことに、貨幣価値を世界的に下げているので、日本だけが目立つこともなかった。

そして、経済規模が縮小しているのに、モデルを継続したことで、赤字国債の規模が維持不能な規模まで増えてきた。このため、早く経済規模に見合った体制にシフトせざるを得ない状態になっている。

この次の体制構造をどうするべきなのかの議論が必要な時期にも関わらず、国会は野党を中心に、今の体制構造を維持する方向で議論をしている。与党は、次の体制を国会で議論できずに、官邸の会議で議論をして多数決で決めていくことになっている。

ということで、非常に不健全な国会になっている。まともな議論ができない。人口減少を前提として、どうすれば経済規模の縮小を小さくでき、国民生活の質の下げを少なくできるか、どう平等な状態にしていくのかという議論が、国民を巻き込んで必要になっている。官邸で知識人だけの会議で決めるには、国民全体への影響が大きいので、不健全である。このため、野党が提案すような生活の質向上や夢を語る状況ではない

国民皆医療保険制度を維持しているが、現在の規模は毎年45兆円を必要としている。この25%が国からの補助金であり、予算から11兆円が出ている。年金補助金は12兆円で、社会保障費は全体で34兆円にもなっている。この医療補助、年金補助は、今後75歳以上の人が、毎年60万人も増えるので、増加することになる。毎年増額規模は1~2兆円程度になる。

一方、文教費は5兆円で変わらず、防衛費は5兆円と1割増えたが、GDP比1%であり、米国は2%程度を要求している。公共事業費は6兆円である。一時より増えたが、年金や医療費に比べれば、大したことではない。国債費は23兆円で、社会保障費と同程度まで拡大してきている。

社会保障費の毎年増額を制度的に抑えるか、増える分を増税するか、赤字国債にするかの議論になるが、今後赤字国債をどうするのかも必要な議論になる。

赤字国債を発行し続けると、貨幣価値が下がり、最終的にはインフレになる。人口が増加している米国などでは、基本的には経済拡大で景気拡大が持続しているので、デマンドプル型のインフレで問題が少ないが、人口減少になる日本経済は縮小するので、継続的な景気後退になり賃金が増えない中でのコストプッシュ型のインフレになり、急激に国民生活を圧迫することになる。そして、少しづつ、この悪いインフレになってきている

米国の経済学者が日本に来てMMTを宣伝するが、日本の現状を見ないで忠告をするので、間違えている。日本は30年間もMMTを実行してきたのでそろそろ限界がきている。

ということで、どちらにしても国民生活の質を下げる方向の議論になる。それを封鎖したら、次の国家体制をどうするのかと言う議論ができない状態で、国民が知らぬ間にスタグフレーションになり、困窮化するし、貧富の差も拡大してしまう。

選挙の時ぐらいは、真剣に次の体制構造をどうするのかという政見を戦わせてほしいものであるが、そうなっていない。残念である。

さあ、どうなりますか?

image by: 문재인 - Home | Facebook

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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