3.社長のクビ
やはり視聴者の関心はここでしょう。宮迫さんたちが契約解除という選択をした以上、自らも責任を取るのは必定。それはおそらくほとんどの人は辞任をイメージしていたと思います。
ですが、松本さんの「大崎会長には辞めてほしくない」発言もあり、軽々に岡本氏が辞めにくい環境になったのではないでしょうか。一方自ら発表した会長、社長の減俸50%1年間というのは、懲戒としても極めて厳しく重大なものです。しかしこの場は裁判の場でも役員会でもなく、会見です。
懲戒として適性かどうかではなく、「当然辞任だろ」という期待への対応として、説得力が足りないのです。社長の適性にも質問が及びましたが、やはりこうした世間の反発や疑問は、記者も感じていたのではないでしょうか。この空気を予想せず、処分を発表してもなかなか説得力は厳しいものだったといえます。
4.会見したのは良かったのか?
結論から言えば長時間袋だたきに会う会見でしたが、だからこそやらないよりましだったと思います。上記であげた点をうまくやればもう少し印象を良くすることはできたと思いますが、それでもここまで批判が広がり、このまま「静観」するのは不可能でしょう。
会見は怒りを止めるための説明をする場ではなく、怒りのエネルギーを出し尽くさせる場です。ロングランでやることはこの点で意味があります。しかし終始回りくどい説明や、辞任という言葉が取れなかったことで、残念ながら吉本興業への批判がただちに収束するのは難しいのではないでしょうか。
つくづく「危機対応は初動対応が大切」の大原則を、身をもって示したものだと思います。つまりは今回の会見は成功とは呼びづらいものの、それでもやらなければもっと批判は大きくなっただろうという点では評価できるのです。このような「負け戦」は戦闘の中でも最も難しいとされます。
あれだけの巨大企業でも、いや、巨大企業だからこそ、真の意味での危機管理コミュニケーションができていなかったと思っています。コンプライアンス研修の回数を増やすことではなく、コンプライアンスとは、「何が問題なのか」「何が求められるのか」の基準を自ら感じられるセンスを育てる中身が大事だと思います。
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image by: 吉本興業チャンネル(YouTube)