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苦戦のモスバーガー、最上位店「モスプレミアム」は生き残るか

7月19日、横浜桜木町に「モスプレミアム」がオープンし話題です。モスファンならご存じ東京千駄ヶ谷にある「モスクラシック」の上を行く最上位店とのことですが、なぜ高級バーガー市場参入を決めたのでしょうか?メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』発行人の理央周さんが、モスバーガーが現在抱える課題と、今回の狙いを解説。成功のためには、トヨタの北米でのブランド戦略が参考になると提言しています。

モスプレミアムは生き残ることができるのか?

モスバーガーが、「モスプレミアム」という高級店舗を出しました。モスバーガーのニュースリリースによると、これまであったモスバーガーの上位店である「モスクラシック」をさらにグレードアップした店舗だということです。 シェイクシャックの日本上陸以来、高級バーガーが市場を形成しました。そこに市場参入しようとする戦略を、今回モスバーガーは取るのでしょう。メニューを見てみると、通常のハンバーガーが税込で1000円とやはり高め。これは、数年前から流行っている高級バーガー店と、ほぼ同じくらいの価格帯です。

リリースにあるメニューを見てみると、モスプレミアムバーガーと3種のとろけるチーズバーガーの2種が一番左上に大きめの画像で紹介されています。この2品目がイチオシなのでしょう。どちらもランチタイムで1300円とのこと。ゆえに、この価格帯を最も主力商品として考えていると推測できます。

モスクラシックと異なるのは、自社で展開している「マザーリーフティースタイル」の店舗を複合させた店舗ということ。「個性の異なる店舗を、1つの空間に集めるフードホールスタイルにアレンジすることで、昨今の多様化した食のニーズに対応します」とのことです。 フードホールスタイルとは、ショッピングモールにあるフードコートのように、異なる2タイプの店舗が一箇所にあり、ユーザーはその中から自由に選ぶことができ、好きな席に座って食べることができる、というもの。

ユーザーからすると、モスバーガーのメニューから好きなハンバーガーやサラダ、ここではパスタなども選べますし、マザーリーフティースタイルのメニューから紅茶はもちろん、スイーツやタピオカティーなんかも選ぶことができる、ということになります。 さらに、17時までが「セミ・セルフサービス」なのですが、17時から「フルオーダー」のサービスに業態を変える点も特徴です。17時からは、テーブルに置いてあるタブレット端末でメニューを選ぶと、店員さんが運んできてくれるという形になるそうです。

モスプレミアムを出した理由は?

ではなぜ、モスバーガーは、このような最上位店舗を出したのでしょうか。まず主力のモスバーガーのファストフード市場は、そもそも競争が激しく、少子化・人口減などもあり、その中でモスバーガーも、高業績を上げるには至っていませんでした。さらに、一時期低迷していたマクドナルドが、ここ数年劇的に業績を回復しているので、この傾向はさらに進んでいると言えます。

そこで、モスブランドを生かしての付加価値がついた、高級バーガー市場に参入していくという戦略です。1個1000円以上する高級バーガー業界は、アメリカのシェイクシャックが日本市場に入って以来、カテゴリーとして確立されました。 また、現在でも伸びているカテゴリーでもありますし、とうぜん、1個あたりのマージン(限界利益)は、ファストフードよりも高くなるため、この戦略は一見正しく見えます。この考え方は、企業側からの視点で書きましたが、一方で、ユーザーから見た場合について考えてみます。

モスバーガーがこの市場に参入していくことは、消費者から見ると、モスプレミアムは、ファストフードチェーンの上位店ということではなく、こういった高級バーガー店と比較されることになります。高級バーガー店は全国チェーンでやっていると言うよりも、小規模チェーンか単独店舗が多いため、メニューも独創的です。

そうなると、お値打ち、便利というこれまでのキーワードではなく、「ここでしか食べられない」味や特徴が決め手になってきます。言い方を変えると、ユーザーに「この値段だったら、普通のモスバーガーを2個食べられるよね」と比較されては高級店舗を出す意味がありません。 モスプレミアムについては、まずすべきは、もう一度行きたくなる「とんがったメニュー」を出すことです。

シェイクシャックは、そのニュースリリースに、「NYの人気高級レストラングループ『ユニオン・スクエア・ホスピタリティ・グループ』が初めて作ったカジュアルレストランとして、スタイリッシュな店装、ゲストへのホスピタリティ、良質で新鮮な素材にこだわりを持ち、手の届く価格で提供する“ファインカジュアル”のレストランとして世界中の人々に愛されています」とあるとおり、高級レストランのカジュアルバージョンです。

ユーザーからすると、あの店は敷居が高いけど、シェイクシャックなら気軽に行ける、という感覚で行くことができます。ジョルジュアルマーニは毎日着られないけどエンポリオなら、普段遣いでという感じでしょうか。 一方で、モスプレミアムは、ファストフードのモスバーガーが出す上位店です。美味しいと評判であるとはいえ、ファストフードのカテゴリーの中でのこと。この感覚を持たれないようにするのが、まず第一歩です。

20年くらい前にトヨタは、北米市場では、性能がいいが、コンパクトで燃費が良い、「リーズナブルな価格」のファミリーカー、というイメージでした。そのイメージがついている中、BMWやベンツ、キャディラックなどの高級車市場に打って出るのは、困難だ、と判断し、レクサスのブランドを立ち上げました。トヨタレクサスではありません。 トヨタなのですが、日本でそれまであったセルシオという車種を、レクサスというブランドとして、周知させていったのです。価格帯が下位層にあるブランドが、上位価格帯を狙う時のブランド拡大戦略の好例です。モスバーガーのプレミアムも、このような手法を取るのもいいかもしれません。

私は中学くらいの時に初めて食べた、モスのテリヤキバーガーの美味しさに衝撃を受け、それ以来モスバーガーの大ファンです。このモスプレミアム、横浜に行く時には一度試してみたいと思います。注目です。

source and image by:株式会社モスフードサービス

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