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クールジャパンを軽く凌駕。NYを席巻している「K-POP」の存在感

日韓の関係悪化の話題が尽きず、韓国の経済環境の悪化も伝えられていますが、ニューヨーク在住コリアンたちはいたって元気で、パワーに溢れているようです。メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』を発行する米国の邦字紙『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋さんが、取材した「K-POP」イベントの様子を伝え、日本のメディアが伝えない「韓国系の存在感」の現状と理由に迫ります。

ニューヨークにおける韓国系の存在感

今月の6日と7日、ご招待でマンハッタンのマディソンスクエアガーデンで行われた「K-POP」イベントに行ってきました。世界最大のコリアンカルチャーコンベンション「KCON2019ニューヨーク」の取材を兼ねて。たしか日本でも開催しているとか。

そこの来場者だけで、なんと5万5千人…。東京ドーム、フルハウス分です。今年で開催5年目らしいです。どこが不景気なんだ!?と思うほどの大盛況でした。

会場だけではありません。このイベント自体を宣伝する映像が、1日の流動人口、150万人のタイムズスクエアの電光掲示板やナスダックビルのスクリーンで1日中、流されました。そして、テレビも、NBC、ABC、CBS、FOX5、PIX11、NEWYORK1など、現地のメディアが特集を連続的に報道。文字通り、本当に、ニューヨークが韓国一色に染まりました。

そして、来月にはこの勢いと厚みをそのままに、西海岸はロサンゼルスのステイプルズセンターおよびLAコンベンションセンターでも「KCON2019ロサンゼルス」を開催する予定になっています。ニューヨークのマジソンスクエアガーデンも、LAのステイプルズセンターも、北米を代表するイベントホールです。

言葉にするのも、正直嫌ですが。はっきり言って、今現在、この国の、少なくともニューヨークにおいての、コリアンカルチャーの存在感は、クールジャパンのムーブメントをはるかに凌駕しています。もっと言っちゃうと、比べ物にならないほど、韓国系の勢いの方が強い。もともとの移民の絶対数を言っているわけではありません。母国から進出してきている、今現在のポップカルチャーの勢いが、です。

テレビをはじめとする日本メディアで、よく「世界にウケている日本文化」が特集されます。日本文化の異常に好きな外国人と、現地のその様子が映し出される。カメラはスタジオに戻り、MCの芸人さんや、ゲストのタレントさんや、コメンテイターの知識人が「日本はすごいですね~」と口を揃える。

もちろん「真実」です。そういった面、日本のカルチャー大好きな非ジャパニーズは世界中にいます。でも、おそらく、特にニューヨークのミレニアル世代に関しては、圧倒的にKカルチャー好きの方が多い。日本のどんな著名アーティストが来ても、実売チケットで、マジソンスクエアガーデンを満員にはできません。イベントの実売チケットの数を把握する仕事をしている僕が言うので間違いないと思います。

僕個人はK-popに詳しくはないのですが、今回のマジソンスクエアガーデンに出演した面々はNU`EST、THEBOYZ、VERIVERY、SEVENTEEN、IZ*ONE、(G)I-DEL、SF9、AB6IX、ATEEZ、TXT、fromis_9など11チーム。ひとりも知らねえw(資料を見ながら書いています)そのすべてのアーティストに熱い声援が送られていました。現地の在米韓国人だけでなく、現地のアメリカ人ニューヨーカーからです。

KCONコンベンションが開催された「ジェイコブK・ジャビッツ・コンベンション・センター」には自国韓国から70社以上の企業が出店。コリアンフード、コリアンファッション、など韓国のライフスタイルをお披露目していました。大半の客は、もちろん現地のニューヨーカーでした。当然のことながら、国を挙げての世界戦略、です。

どうして、日本はここまでできないんだろう…。韓国式ホットドッッグを食べながら、考えました。かなり美味しい。でも、贔屓目抜きにして、日本のファーストフードの方が美味しい。自分が日本人だから、という条件を無視しても、日本のファッションが、日本のアーティストが、日本のコスメが、韓国製に劣っているとは思えない

どうして、世界に出てこないのか。出てこれないのか。あ。出てこないのではなくて。出てこれないのではなくて。出て来たくないんだ。と気づきました。もしくは、こんな世界の、現実、状況を知らないんだ、と。

日本はどうしても、世界より、お隣さんが気になります。自国内で完結する方が、どこか最優先になってしまっている。そして、それは、ある意味、とても幸せなことなのかもしれません。

マジソンスクエアガーデンから徒歩3分のところに、ニューヨークのコリアンタウンがあります。自宅からも、編集部からも、徒歩5分なので、僕たちスタッフもよくよく利用します。彼らは働き者で、24時間営業のお店が多く、24時間体制で働いている僕たち新聞社の人間には強い味方です。しかも安い。しかも、米食。(ここのエリアでは、20近い飲食店が24時間オープンで営業しています)

そして多くの在ニューヨーク日本人が帰国し、この街の日本人の数が減る一方の中、韓国人は今も増え続けているそう。多くの韓国人投資家たちが、今もこの街に投資し続け、上昇し続けるレントを払い、経済を回している。

アメリカン・ドリームならぬ、コリアン・ドリームは、未だ、わかりやすい「ニューヨークは摩天楼が見えるコンドミニアムでワインをグラスを傾ける」ことなのかもしれません。日本だと、頭の良い知識人が「ダサいですよね」の一言で片付けちゃいそう。

実際、ある韓国人の大金持ちのコンドミニアムに呼ばれ、遊びに行ったことがあります。超高層マンションの真隣は、エンパイアーステートビル。窓のすぐ向こうに、エンパイアーの窓。絶景もなにも、ビルが隣り合わせなので、ビルしか見えない。でも、それでも、あのエンパイアーの真隣に、エンパイアーと同じようにそびえ立っているのが、彼らにとってのステータスなのかもしれません。

ニューヨーク市内だけで10万人の韓国人が住んでいるそうです。ちょうど日本人の倍。ニューヨーク州で言えば21万人。これは日本人の3倍。ちなみに、本国韓国以外でいちばん韓国人が多いのが、ここニューヨークだそうです。

この国への大量の朝鮮民族の入国は1950年代に始まりました。そして70年代にピークを迎えます。彼らが移住のエリアとして選んだのは、エンパイアーステートビル、メイシーズデパートメント、ヘラルドスクエア、マジソンスクエアガーデンが隣接する、マンハッタンのど真ん中のど真ん中

イーストビレッヂあたりに、ちょこっとあるジャパンタウンとは、立地条件からまず違いました。こんなど真ん中に定住するって、そのマインドがすごい。遠慮気味に、端っこに住み着く日本人とそこから違う。

そして、80年代の彼らの成功「コリアン・ドリーム」「コリアン・ゴールドラッシュ」と呼ばれました。それを機に、本国の貧しい韓国人が大量に押し寄せてきた。ますます、一等地であるコリアンタウンは賑わいました。

金融、宝石業界はユダヤ人、警官・バー業界はアイルランド人、そして、デリ・雑貨屋さんは、韓国人と、この街の相場は決まっています。考えてみれば、迫害や、差別、貧困の歴史を持った国の国民は当然、新天地を求めます。求めた先で、繁栄していく。

日本の近代史は、戦後以降、世界的にみれば極めて平和だったのかもしれません。新天地を求める必要がなかった。日本人は、海外に出ていく必要性がなかったのかもしれません。それは人として極めて幸せなことです。アイリッシュや、ユダヤ系や、韓国系は、歴史的にニューヨークに流れ着くしかなかった人たちが少なからずいた。

なので、今、ニューヨークで韓国系が元気なのは、当然の結果かもしれません。そんなことを考えながら、今日はウォール・ストリートで打ち合わせがありました。帰り道、たまたまチャイナタウンを通りかかる。コリアンタウンよりさらに、でかい(汗)。

image by: JStone / Shutterstock.com

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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