日本語の特性を考えてわかった、日本人が「ノー」と言えない理由

 

同じように日本語も美しく包まれた言語である。

「ねえ、どうやら二人は結婚するらしいよ」

この何の変哲もない普通の日本文も実に折り目正しく包まれているのである。その間の事情が分かり易いように敢えて段差を付けて図式的に書き改めてみると、

  • ねえ、              よ → 聞き手への呼びかけ
  •    どうやら       らしい  → 話者の判断
  •        二人は結婚する     → 内容(中味)

となり、見事なまでに、

  • 内容(中味)を
  • 話者の判断(「私が」「今」「ここで」)が包み

さらにそれを

  • 聞き手への呼びかけ(「あなたに」「今」「ここで」)が包む

といった、実に美しい包含関係が成り立っていることが分かる。

このように、日本語は叙述内容以上に「私が、あなたに、今、ここで」を伝えることに豊かな言語なのである。まさしく伝達の言語である。

そう考える時、面倒くさい礼儀作法や段取りも、「ねえ」と呼びかける程度には、あるいは「どうやら」と判断するくらいには身近に感じてもいいのかもしれない。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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【著者】 山崎勝義 【月額】 ¥220/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 火曜日 発行予定

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