少し前まで、大阪市と大阪府は犬猿の仲にあったが、日本維新の会コンビになってから両自治体の協力体制がうまく機能している。2020年度のIR区域認定、2024年度のIR開業、2025年度の大阪万博開催というスケジュールの実現に向けて足並みを揃えている。万博誘致に成功したのはオールジャパンの勝利である。
高橋先生は大阪万博開催の経済効果を数字で示す。1970年の万博開催が、大阪の都市開発の大きな原動力になった。なかでも都市交通網の整備は著しく進んだ。2025大阪万博の会場は、大阪市の最西端にある広大な未開発地域・夢洲で、3.9キロ平方メートルの殆どが更地である。大阪万博は、いままで大阪の負の遺産とされた、この忘れられたような場所を有効活用する、捲土重来のチャンスというべきだ。
数学が天敵のわたしは、色々な数字を出されても困惑するが、「万博をプロジェクトとして見れば、0.2兆円の投資費用で2.6兆円の便益があるという計算式が成り立つ」と言われるとよく分かる。これは滅多にない優良案件で、多少費用が増えても、入場者数が減ったとしても「投資する価値がある」という結論に変わりはない。それでも心配な人は、万博の仕組みを考えればよい。
万博は出展者である各国が、費用持ちでやってくるのだ。この種のイベントは、主催者が儲かるのは当たり前だ。最初から大阪万博に反対する人たちは、誘致が決まっても批判を続けている。多くが左翼系の文化人である。彼らは、もし誘致に失敗したときは大喜びで「誘致活動に金がかかった」ことに文句を言うつもりだった。誘致が成功してしまったことで、あてが外れて残念でした。
批判の中には、試算はあてにならない、外れるものだと、頭から決めつけている意見もある。産業連関分析、あるいは投入産出分析と呼ばれるこの手法はそれなりの信憑性があるものだ。元大蔵省の数学の天才・高橋先生の言うことだから間違いはあるまいと確信する、数学敗残者の元高橋君であるわたしである(結婚して姓を変えた)。
そしてまた堂々たる(てへっ)年金生活者である。色々わけありで、給付額は決して多くない。出生率と経済成長率に左右されるという給付額だが、先行きを不安視してもしょうがない。重要なのは、年金が「保険制度」であることだ。保険料を支払う人が減れば、そのぶんだけ給付額も減るように自動調整される。
したがって、「人口減少で年金制度が破綻する」という主張は、年金制度を正しく理解していない人の戯れ言のようなものだ。また、年金制度を「保険」ではなく「福祉」だという、トンデモおバカな誤解も広まっているらしい。誤解してもらったほうが好都合な人たちが存在するからだ。とくに財務省である。
社会福祉は保険料でなく「税金」でまかなう。年金制度への不安が高まれば、破綻させないためには消費税が必要という曲解が流布する。高橋先生は役人時代に「年金定期便」の制度設計を企画し、発行にかかわった。そこに書かれた年金支給額の見込み数字が、大きく裏切られたという話は一切ない。その数字を見れば、年金財政が絶対に破綻しないということが理解できる。
編集長 柴田忠男
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