ある用途に特化してターゲットを絞り込む戦略は、高額であっても売れる可能性が高いとされています。今回、MBAホルダーの青山烈士さんが取り上げているのは、100円ショップでも買えるものに、実に13倍ものお金を出してでも欲しいと思わせる価値を付随させ人気となっているポテトピーラー。その戦略・戦術について、青山さんが自身の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』で詳細に分析しています。
用途を特化
今号は、ある用途に特化した皮むき器を分析します。
● 食器具や調理器具、ヘルスケア用品などの製造・販売を手掛ける「ののじ株式会社」が提供している「じゃがいも専用のピーラー」
戦略ショートストーリー
じゃがいもを使った料理をよくする方をターゲットに「多様なピーラーを手掛けてきたノウハウ」に支えられた「皮を薄く・早く・簡単に剥ける」等の強みで差別化しています。
じゃがいもの皮むきに特化することで、既存のピーラーなどを使用したじゃがいもの皮むきに不満を抱えてるユーザーからの支持を得ています。
■分析のポイント
「ののじ」はポテトピーラーだけでなく、様々なピーラーを手掛けていて、例えば、極薄の「千切りキャベツ」を簡単に作ることができる「キャベツピーラー」や、トマトの薄皮をさらに薄く、極薄に剥ける「トマトピーラー」など、消費者の用途に合わせたピーラーを提供しています。
「消費者の用途に合わせた」というところが今回のポイントです。
多くの既存のピーラー(皮むき器)は、万能タイプと言えますので、基本的に様々な皮むきに使用できます。しかし、万能(様々な用途に使える)とはいえ、弱点はあります。じゃがいもの皮むきの場合、既存のピーラーでは、皮が厚く剥けてしまったり、皮むきに時間がかかってしまうといったことが弱点ですね。そういった弱点に不満を抱えているユーザーが「じゃがいも専用ピーラー」に価値を感じてくれるユーザーになるわけです。
このような既存製品の用途ごとの不満を抽出して製品開発に活かすということは、一つのセオリーといえますが、「じゃがいも専用ピーラー」という商品をとおして、「ののじ」の「毎日の暮らしに、ひとつでも多くの笑顔をふやす」という姿勢が表れていると感じます。
既存の万能タイプのピーラーは100円ショップでも販売されていますし、市販されているものの多くが数百円で購入できる中で、「ののじ」のポテトピーラーの価格は、1,300円であり、市販のピーラーと比較すると高額という印象もあります。100円ショップとの価格差は13倍ですからね。
なぜ、高額でも売れるのかというと、ひとつの用途に絞れば、その用途に特化した価値(消費者にとっての嬉しさ)を伝えやすくなるからです。そして、多くの嬉しさを提供する商品であることが顧客に伝われば、顧客にとっては、1,300円の価値があると納得してもらえる可能性が高まるでしょう。これは、消費者の用途に合わせて、用途を特化することの効果の一つと言えます。
今回の事例は、ひとつの用途に特化することで、一部のユーザーから高い評価を得ることにつながり、既存の製品よりも高額で販売できる可能性があるということを示しています。
今後の「ののじ」のモノづくりに注目していきたいです。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):じゃがいも専用ピーラー(皮むき器)
- 競合(お客様の選択肢):包丁、ピーラー(皮むき器) など
- 状況:ECサイトでキッチン用品を購入する消費者が増加傾向のようです
■強み
1.じゃがいもの皮を薄く・早く・簡単に剥ける
- すべりにくく、スムーズに剥ける。スルスル気持ちよく剥ける
- 持ちやすい。薄く剥けるので、ムダがない
- 1回で幅広く剥けるため、たくさんのじゃがいももすぐに剥ける
→時短につながる - 簡単に芽を取ることができる「芽取り」が付いている
2.じゃがいも料理が楽しくなる
- じゃがいもの形、そのままな剥きあがりなため、きれいな丸いじゃがいもが料理を彩ってくれる
- ギザ刃でむくから食材にスジが入って味が染みやすくなる
→美味しく作れる - 料理がはかどる
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
- 多種多様な品種のじゃがいもで徹底的に「皮むき」を研究
- 多様なピーラーを手掛けてきたノウハウ
記のような、ノウハウなどが強みを支えています。
■顧客ターゲット
- じゃがいもを使った料理をよくする方
- じゃがいもの皮むきが面倒な方。厚く剥けてしまうのが嫌な方
◆戦術分析
■売り物、売り値
「ののじ ポテトピーラー:1,300円」
→「じゃがいもの皮むき」に特化し、じゃがいもの皮を薄く・早く・簡単に剥ける。軽くプッシュするだけで簡単に芽を除去できる専用の「芽取り」を付属
■売り方
「様々な媒体を通して「ののじ商品」の利用シーンを紹介」
- やさいの味方通信
→おいしい野菜の更に美味しい食べ方や誰もが思わずトライしたくなるレシピ動画などを紹介 - 料理雑誌『レタスクラブ(KADOKAWA)』とコラボレーションした、料理教室を開催
- 個人料理教室のプロモーション運営を行う『クスパ』とコラボして、料理教室を開催
- 新聞など様々なメディアで紹介されている
「購入を促すためのキャンペーン」
- 送料無料
- 初めてのお買い物の方限定クーポン
■売り場
- 楽天ショップ、Yahoo!ショップ、Amazon
※ 売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
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