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失敗知らずだった経営コンサルが、客から打ち切りを告げられた訳

開業や業績回復などのために、企業やお店が経営コンサルティングを依頼をする場合がありますが、お願いすれば必ず問題が改善できるというわけではないようです。その原因はどこにあるのでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんが、そのヒントとなりそうな、自身のコンサルティング経験上の失敗と成功の事例を紹介してくださっています。

私のコンサル奮闘記

私がコンサルティングの仕事を始めて5~6年経ったころ、「私のコンサル奮闘記」というニュースレターを発行していました。私のコンサルティング事例をA4版1ページで紹介したものです。

たまたま書庫を整理していたら、それが見つかりました。そこで、その中からいくつかの事例を紹介することにします。それぞれは短い内容ですが、ポイントはつかめるでしょう。まずはコンサルティング活動を始めたころの話からです。

【事例1:最初の仕事】

経営コンサルタントとして開業をしたばかりのときはさすがに仕事がありません。ネット経由でコンサルの依頼をいただいた神奈川県の企業が唯一のお客さまでした。そんな現状を見かねてか、私のコンサル業立ち上げを後押ししていただいた先輩コンサルタントの先生から、仕事の紹介がありました。

「Tスポーツさんから社員研修の依頼があるのですが、私の代わりに出来ますか?」

Tスポーツさんは有名な地域一番店です。私は一瞬躊躇しましたが、何の研修かも聞かずに、思わず「出来ます!」と答えます。

聞いてみると「接客の研修でした。これは困りました。接客の経験が無いわけではありませんが、素人に近い私です。しかも、研修というものをしたことがありませんからどんなふうに進めていったらいいか分かりません

しかし、私にとってはチャンスです。覚悟を決めました。それから研修当日までの2ヶ月間、懸命の努力が始まります。まずは接客に関する本を10冊買い込んで勉強話す内容を整理していきます。

パワーポイントで研修用スライドを仕上げ、何度も何度もリハーサルを繰り返していきます。研修ですから「ワーク」が必要だろうと思い、ワーク内容を考えツールも作り込み、準備万端。いよいよTスポーツさんに訪問する日が来ました。

研修会場についてみると、40名ほどの社員さんが集まっておられます。私はドキドキ、緊張が襲ってきます。それでも、ベテラン講師のように振舞おうと、話を始めました。3時間の持ち時間をやっとのことで終えます。

「ふ~っ、終わった…」

何とかうまく行きました。しかし、喉はからから、背中は汗でびっしょりです。ですから、この日のことは、今でもよく覚えています。この日が私のコンサルタント業の本当の始まりです。今思えば、実に下手な研修でしたが、皆さん一生懸命に受講していただきました。

しかも、数日後にはTスポーツの社長さんから手書きのお礼状が届いたのです。その手紙は私の大切な宝となっています。

よくあるご相談

次は、スポーツ店を開きたいという方からの相談事例です。

【事例2:スポーツ店を開きたい】

新しくスポーツ店を立ち上げることは、それほど簡単なことではありません。毎月のように相談が寄せられますが、ほとんどの方が途中で挫折をします。そんな中、また一本の電話が入りました。Aさんという40代の男性からです。

スポーツ店を開きたいのですがどうしたらいいでしょう?」

お話を聞いてみると、業界の経験もなく、商売の経験もありません。ただスポーツが好きだから、という理由です。よくある話ですね。資金は何とかなるようです。結局、私はその方の熱意に負けてコンサルを引き受けることにしました。

「決して甘くはありませんよ。そして、お店が出せるかどうかはやってみなくては分かりませんよ」と念を押します。「それでも良い」ということです。そこで、まずいつもの手順です。「何のためにスポーツ店を行うか」「将来はどうなりたいのか」を明確にしていただきました。その次は、簡単な経営計画書作りです。

問題は商品の仕入れ先の確保です。メーカーさんや問屋さんに交渉に行かなくてはなりません。この時のAさんの動きが凄かったです。積極果敢に仕入先にアタックを続け、私のアドバイス通りの方法で交渉を重ねます。断られることもありましたが、あきらめません。しぶとく食い下がって、とうとう2ヶ月後には希望の仕入先と契約が出来てしまいました。凄いですね。

実は、この時役に立ったのが経営計画書です。その中には、見込み客への聞き取り調査や、足で稼いだ市場調査がありました。どんなコンセプトで、どんな差別化をして行くかも書かれています。それらもとにした販売計画を説明しながら、仕入先と交渉をしたのです。

その時、既に出店予定地との契約が済んでいました。とにかくやることが早いのです。仕入先が決まると、早速店舗作りに入ります。外装は知人に依頼し、内装は全部自分で考え、什器はオリジナルのものを作ってしまいます。

話があってから4ヶ月後、とうとうオープンが出来てしまいました。私もビックリです。こんなにうまくいったのは、久しぶりのことです。本当にAさんの行動力と素直さには頭がさがりました。私も大いに勉強になった次第です。

コンサルの失敗事例

コンサルティングというのは、成功事例ばかりではありません。失敗することだってあるのです。3つ目の事例は、その失敗をしたときの話です。

【事例3:経営計画書を作る】

これも、私がコンサルタントとして活動を始めたころのことです。老舗スポーツ店さんからご相談がありました。業績が芳しくないので立て直し策を考えて欲しい、とのこと。

私は、意気揚々としてお店を訪問しました。まだコンサルタントとしての実績は少ないときでしたが、それまでに手掛けた事例はすべてうまくいっています今度も大丈夫だという自信を持って臨みました。早速、先方の状況をヒアリングすると、取扱商品をどう絞っていくか、そして、お客を増やすにはどうしたらいいかということが、ポイントのようです。

しかし、私はそのためのノウハウを提供するよりは、もっと本質的なところに目を向けていただこうと考えました。そこで、先方の店主と話し合った結果、新たに経営計画書をつくることにしました。「市場の分析、自店の分析、理念の再構築、顧客ターゲットの設定」などから始めます。

ところが、一向に作業がはかどりません。そして、3か月を過ぎた頃です。「もうコンサルティングは結構ですという電話が入りました。

「えっ?まだ計画書は出来あがっていませんよ!」

その理由をお聞きすると、「私が当初考えていたコンサル内容と違うから」ということ。ショックでした。うまくいくと自信を持って臨んだのに、結果は「コンサル打ち切り」です。

もちろん、店主は経営計画書の重要性はよく分かっていました。しかし、それよりもひっ迫している問題は早急に売上を回復することです。ですから、私はまずその方法を提案することが先決だったのです。

この時、私は分かりました。コンサルティングとは、自分の考えや理論を押しつけることではなく、相手の立場に立って問題解決をしてさしあげることだということが。コンサルタントとして「実に甘い」自分がいました。

結果的にこのお店にはご迷惑をおかけすることになってしまいましたが、私は本当に感謝しています。コンサルタントとしてのあり方を気付かせていただきました。

いかがでしょうか。以上、3つの事例をご紹介しました。こうしてコンサルタントは成長していくのです。もっと事例をご紹介したいところですが、今回はここまでにしておきます。

■今日のツボ■

image by: Shutterstock.com

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ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表。スポーツ用品業界での経験と知識を生かし、業界に特化したコンサルティング活動を続ける。
スポーツ用品業界在籍33年の経営コンサルタントが、スポーツショップの業績向上法について熱く語ります。スポーツショップのために書かれた、日本初のメルマガです。ここには、あなたのお店がかかえている問題を解決するヒントがいっぱいです。

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【著者】 梅本泰則 【発行周期】 週刊

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