進退については口を閉ざす
関電の会長、社長は事件の経緯について資料を見ながら淡々と説明していたが、経営責任については、会見中は「今後二度とこうしたことがおきないよう対策を練って行く事が責任と考える」と最近の経営者の常套句を口にするだけだった。後に会長は責任を感じて10月9日に退任したが、社長は事件の総括が終わるまで社長職に留まると述べている。
関西電力といえば、関西では1、2を争う大企業で関西の雄であり、企業管理、ガバナンスもしっかりしているとみられていた。それだけに不思議に思うのは、20人ものトップが扱いに困る金品を受け取りながら、企業として役員間で話し合いがまるでなく、管理や返却行為などについては個々のトップに委ねられたままで、企業全体としての危機感をまるで感じとっていなかったことだ。
また元助役は関連企業の顧問などの役職についていたようだが、町の実力者とはいえ、そんなに“恐い”存在だったのか、警察や弁護士と相談する知恵はなかったのか、調査は過去7年分に限られていたようだが、それ以前の調査はしなくても良かったのか――など、まだまだ疑問は湧いてくる。
株主代表訴訟へ発展か
筆頭株主の大阪市は、株主代表訴訟も考えているというが、原発の扱いを今後きちんとさせるためにも当然だろう。時を同じくして東京電力は危険な津波を予測していたにも拘わらず裁判では無罪となった。福島第一原発の事故対策には今後数十年の月日と莫大な資金を要することがわかっている。
資源のない日本は電力のためにあえて危険とみられる原発建設に手を染めてきただけに原発に対しては国民も企業も神経過敏となるほど気を遣ってきたはずだが、日が経つと徐々に注意が薄らいでくるのだろう。実を言えばわたしも電力会社と何度か話し合いを行なう接待を受けたこともある。最近の一連の事件を知るにつけ忸怩たる思いに駆られる。
(Japan In-depth 2019年10月26日)
※ 補足情報
報道各社の情報によると、関西電力が10月28日に発表した2019年4~9月期の連結決算は、売上高が前年同期比1.5%増の1兆6,341億円、純利益は55.5%増の1,131億円と増収増益になった。上半期としては3年ぶりの増益で、燃料価格が下落傾向で利益が拡大。20年3月期の通期予想は据え置き。岩根茂樹社長は体調不良のため記者会見を欠席しました。
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