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温泉宿『当館のご案内』がつまらない。何がイマイチ足りないのか

ホテルや旅館に必ずある宿泊約款や非常口避難路案内などの黒や茶色のファイル。その内容のつまらなさを嘆くのは、メルマガ『『温泉失格』著者がホンネを明かす~飯塚玲児の“一湯”両断!』著者で元旅行誌編集長の飯塚玲児さんです。飯塚さんは、温泉旅館ならば、おもてなしの一つとして工夫がほしいと提言。最近は手書きの温泉の効能や料理の説明などをファイルしている宿も増えてきたことを紹介し、宿泊客が喜ぶ情報は何かを発信しています。

宿にある『当館のご案内』がつまらないのだが……

僕は宿に泊まると、仕事のこともあって、客室に置いてある『当館のご案内』というような、黒革または茶皮のようなビニール材質のものに目を通すのだが、これがおしなべて非常につまらないものが多すぎる、と思う。

概ね書いてあるのは「チェックイン&アウト」の時間を除けば、宿泊客にはあまり意味のない内容のことが多い。「非常避難路」「宿泊約款」などは決まりだから仕方がないとしても、「宿周辺の見どころ」なんていうのは、ただのパンフが挟んであるだけのことも多い。中には、宿から車で1時間なんてところも入っていたりするので、一気に読む気が無くなってしまう。

特別料理や飲み物の代金、冷蔵庫の飲み物の値段などは実際に役に立つものだが、概ねパソコンで打ったものが年中おんなじで入っていることが多い。

特別料理で「アワビの刺身=時価」「伊勢海老各種=時価」と書かれても、全く役に立たないし、こういうものは別途チラシが置かれていたりもするから、入れなくてもいい気がする。実につまらない、と思うのは僕だけだろうか。いや、そもそも読まない、という人の方が多い気がする

一方、最近見かけるようになったのが、こうした宿泊約款など読んでも読まなくてもいい(というわけでもないんだけど)、ものは別にしてあって、それとはまた別に、クリアブックなどに温泉の解説、料理の解説などが手書き文字で書いて紹介されているというもの。

これだと俄然読む気が起こる。というか、読ませたいと思って一生懸命作っているんだから当たり前である。書かれているのは、温泉宿であれば、まず自分の宿の温泉についてである。きちんと成分分析書のコピーもつけられ、泉質名とその特徴、適応症などがわかりやすく書かれている。例えば「当館の温泉はナトリウムー塩化物泉です。殺菌効果があって切り傷やすり傷などにも効果が期待でき、体の芯から温まるお湯です」といった具合だ。

この種の解説が書いてある宿というのは、スタッフに温泉ソムリエの方がいて、そこで学んだ知識をわかりやすく説明していることが大半である。温泉ソムリエであれば、さらに「上手な温泉の入り方・分割浴」「体は手のひらで洗う」「食後にお風呂に入ると消化が悪くなる」といったことも解説されていることが多い。さらに「お着きのお茶とお菓子には意味がある」などということが書かれているとさらにいい。本メルマガの読者には常識なのかもしれないが、普段温泉と馴染みがない人にとっては、これだけで「へえ、そうなのか」となり、宿としての「つかみ」は完璧である。

料理に関しては、通年出している名物料理があれば、その解説とこだわりを書けばいい。まあ、これは食事処に用意した献立などに書いてもいいのだが、献立に余計なことが書いてあるのも格好良くないからね。

案外うれしいのは日本酒の解説。全国的に知られていない土地土地のお酒というのは、どんな味わいかわからないことが多い。そこで「米の味がふくよかで香りの高いお酒です。肉料理などにも良く合います」「華やかでフルーティな香りのお酒です。最初の一杯目におすすめです」みたいなことが書かれていると、夕食の時に悩まなくて済む。

この種のものは、可能な限り手書き文字で書いた方がいい。世の中みんなパソコンで打った活字ばかりになっているので、手書き文字を見るとホッとするのである。字が下手でも丁寧に書いてあればそれでいい。なんとなく、マニュアル化されていないというか、手作りのホスピタリティを感じさせてくれるものだと思う。「当館のご案内」一つでもこれだけ違いが出るのだ。

image by: POM POM / Shutterstock.com

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【著者】 飯塚玲児 【月額】 初月無料!330円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日or木曜日配信 発行予定

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