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「同情」はNG。パワハラ相談窓口担当はどう話を聞いているのか

職場のパワーハラスメント防止を義務付ける関連法が可決・成立し、企業に相談窓口の設置等が義務付けられることになりました。今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』では、相談窓口の担当者が身につけておきたいスキルを会話形式でわかりやすく紹介しています。

相談担当者が身につけたいスキル

数年前から、労働相談の案件は解雇や未払賃金よりも、いじめハラスメントに関する件数が圧倒的に多くなっている。今日は、G社社長がハラスメントの相談窓口についての質問で来所されたので、同席させてもらった。


G社社長 「パワーハラスメント法なんてのができるんですってね。そうなると、ますますハラスメントへの対策が必要になりますよね。その中でも相談窓口が大変そうで…。案件が出たときに先生に担当してもらえるなら助かりますが、毎回ってわけにもいかないですもんねー。実際、相談を受けたときには、こうするのが良いよということを伝えておきたいのですが、具体的にはどう伝えておくのが良いですか?」

深田GL 「社長が全件対応するわけにもいかないですし、相談担当者が身につけておきたいスキルをお伝えすれば良いですね。相談対応は、相談者とのコミュニケーションの場ですので、初動は、特に高いコミュニケーションスキルが求められますよ」

G社社長 「やはりそうですよね。この間、セカンドハラスメントのことが載っているメルマガも読みました。軽く考えていると、痛い目に合いそうだということがわかってきたので、今日はしっかりと教えてもらおうと思って、来たんですよ」

深田GL 「そうなんですね。ありがとうございます。是非、いろいろ持って帰ってください。コミュニケーションの要素は、『言語非言語にわかれています。相談担当者は、この二つの要素をうまく使って、大きな効果を生み出すことができると良いですね」

G社社長 「『言語』と『非言語』って、何を指すんですか? 具体的には、どんなものを言うんですか?」

深田GL 「まず、言葉で発する『言語』によるコミュニケーションのチェックポイントとしては、声の大きさ=心地よく聞こえる大きさ速さ=落ち着いて早口にならないように強弱=メリハリをつけて声のトーン=低すぎず高すぎず発音=語尾まで明確に、ということに注意してもらうのが良いですね」

G社社長 「はー、声のトーンや、速さにも気をつけるのですか。そこまで考えたことはなかったなぁ…」

深田GL 「ミラーリングとも言いますね。要は相手のペースに合わせるということです。早口の相手にゆっくり話すとイライラされるでしょ。逆にゆっくり話す人には、こちらもスピードを落として話すのが良いです」

G社社長 「へぇ~、そう言えばそうだね。得意先と話すときは、自然にやっているかも…」

深田GL 「社長のように、コミュニケーション能力の高い方なら自然にそうされているんだと思いますが、従業員さんが全員できるとは限りませんから、そういったノウハウをお伝えするのは有効だと思います」

G社社長 「たしかにそうだね」

深田GL 「『非言語』によるコミュニケーションのチェックポイントは、表情=穏やかで友好的に強弱=自然に優しく視線を向ける座る距離=近すぎず、遠すぎず身体の動き=不必要な動きはしない、が大事だと思います」

G社社長 「『非言語』ねー。もしかしたら、言葉よりこっちの方が影響を与えることも多いんだろうな」

深田GL 「カウンセリングの基本は、『傾聴』です。つまり、相手の言いたいことや訴えたい気持ちをつかもうとする能動的な聴き方を心がけてもらいたいです」

G社社長 「『傾聴』って、よく聞くけど、なかなか難しいもんだな」

深田GL 「傾聴技法のひとつ目は、『受容的態度』です。温かいまなざしで、相談者の流れを妨げずに、注意深く聴いていく態度のことで、うなずきや相づちは重要です」

G社社長 「『受容的態度』、うなずきや相づちね…」

深田GL 「傾聴技法のふたつ目は、『共感的態度』です。相談者の立場に立って、その気持ちを深く理解しながら巻き込まれない客観性や理性を失わない態度で接する、『同意』『同調』『同情とは違います

G社社長 「『同意』『同調』『同情』ではあかんってことか、区別しなきゃね」

深田GL 事柄の繰り返しも時々してください。『10人もいたんです』と言われたら、『10人もなんですね』と繰り返す、感情の繰り返しは大事なポイントですよ。『しんどかったんです』と話されたら、『しんどかったんですね』と必ず伝え返してください」

G社社長 「感情に注目するってことだね」

深田GL 「話が長くなってくると、特に『明確化要約』も大事です。『明確化』は、相談者の心のうちを担当者が言語化することですが、ずれた内容を何回も言ってしまったり、大きく的外れの内容を言ってしまったりすると、不信感につながるので気をつけてください。『要約相談者の話の要旨をまとめて復唱し相談者に伝え返すことです。相談者にとっては、正しく理解されている安心感を得ることができますし、考えや感情の整理にもつながりますよ」

G社社長 「日常の会話でも要約は大事だし、明確化で相手に気づきを与えることができると、話が進展することにもなりそうだね」

深田GL 「また、ときには、沈黙の場面もあると思います。でも、原則はしっかり待つのが良いです。沈黙は、相談者が考えたり、意見をまとめたり、気持ちを整理している大事な時間なので、耐え切れず沈黙を破ってしまわないようにしてください」

G社社長 「え?そうなんですか?話すのに困っているのかなと思うと、思わず助け船を出してしまいそうになりますが…」

深田GL 「どうしようもなく長く続くときは、『それで?』など、促すような言葉を使ってみたり、これまでの内容を要約してみたりするのは良いと思います」

G社社長 「へぇ~、なるほどね」

深田GL 「また、質問には、『はい』『いいえ』で答えられる『閉ざされた質問』とフリーに答えてもらえる『開かれた質問』があります。上手く使い分けると良いですね」

G社社長 「はー、質問によって、縦に開いたり、横に開いたりすることもできるっていうことは聞いたことがあります」

深田GL 「そうですね、上手く話を広げたり、深めたりできると良いですね」

G社社長 「他に気をつけることはありますか?」

深田GL 「相談者に、つい加害者をかばうような、『A上司はそんな風には見えませんが』等の発言で、セカンドハラスメントを招いたり、相談者の発言に刺激されて、同情したり、怒ったりすると客観性が失われますので、感情のコントロールも大事です。他には、担当者が関心のある部分のみ聴いてしまって、本当に理解してもらっているのか?と思われることもあるので、偏った聴き方にならないようにしないといけませんね」

G社社長 「偏った?…というと…」

深田GL 「たとえば、『売上目標が高すぎて、毎日、毎日、責められるんです。もう限界です』と聴いて、『売上目標はどのくらいですか?』と質問してしまうことです。この場合、目標の数字を確認することは悪くはないですが、まずは限界という言葉に関心を示すべきです」

G社社長 「あー、そういうことか。つい、僕も先に数字を聴いてしまいそうだな」

深田GL 「そうですよね。ビジネスライクのときは良いのですが、相談を受けている場では、順番を逆にして、まずは、気持ちにフォーカスしてください」

G社社長 「わかったよ」

深田GL 「最後に、あまりないことだとは思いますが、相談者に対して、批判的、攻撃的だったり、反論や言い訳、言い逃れ、また、気持ちを無視したりすると、これ以上話をしても仕方ない、話はできないと思われることになるので、決してそういうことのないようにしましょう」

G社社長 「再度、パワハラになっちゃうようで、それはマズイですよね。今日は、相談者についての身につけたいスキルを色々と教えてもらって、ありがとうございました。さっそく相談担当にも伝えていきます」

深田GL 「はい、是非そうしてください」

image by: Shutterstock.com

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【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

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