9月12日に告示され、戦いの火蓋が切られた自民党総裁選。9人の候補が乱立する状況にあって小泉進次郎氏に大きな注目が集まっていますが、彼が掲げた公約には「とんでもない代物」が多々あるようです。今回のメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』では京都大学大学院教授の藤井さんが、その中から「労働者全員を厚生年金に加入させる改革」を取り上げ、この公約がいかに酷いものであるかを解説。さらに進次郎氏を裏で操っている勢力の正体を白日の下に晒しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:小泉進次郎氏の「年収の壁」撤廃論は低所得者を狙った所謂『大増税』 年収100万の労働者なら最低で約9万円,最悪18万円以上もの所得が政府に奪い取られます
低所得者を狙った大増税。小泉進次郎の「年収の壁」撤廃論はこれだけ酷い代物だった
大手メディアによるフェイクでしかない「小泉総理は既定路線」の愚
今、TVではまるでもう「総裁になるのは既定路線だ」といわんばかりの報道が続いている小泉進次郎氏。出馬会見での進次郎氏の「知的レベル」に触れた質問にもスマートに受け答えし、評判を上げたりしています。
しかし、小泉総理が既定路線だなぞという話は、どこかの悪い奴等が必死で大手メディアを使って作りだそうとしている「真っ赤な嘘」(それが誰かについてはまた別途解説します)。
党員党友調査で小泉氏は決して一位でなく、かつ、高市氏とほぼ同程度、しかも、これからのフリートークで小泉人気の凋落はほぼ確実視されているからです。
早速、出馬会見の翌日には、質問の大半が事前質問受け付け制度で、手元には大量の付箋を貼った資料が置かれていたことが報道されていますし、
小泉進次郎氏の昨日の会見は事前に質問を受けつけ、記者は座席指定という異例の形で行われた事が波紋。記者の質問に小泉氏はピンク色の付箋がびっしり貼られた資料をめくって回答し“進次郎構文”回避に努めた。だが、記者会見さえ想定問答集が必要な人物に国家存亡の岐路に立つ日本の運命を託すって?絶… pic.twitter.com/cz5QvNLtFR
— 門田隆将 (@KadotaRyusho) September 7, 2024
● https://x.com/KadotaRyusho/status/1832392422023913503
当意即妙で答えたとの印象を与えた知的レベルについての質問も、チーム進次郎のPR会社らが作った「想定質問Q&A集」を暗記して対応していただけだろうとも指摘されておいます。
進次郎氏の”知能水準質問”への返しが絶妙だと言われていますが
「進次郎さんあの瞬間ちょっとにやっとしてた…十分想定できてたんですよ…チーム進次郎のPR会社が腕に寄りをかけて想定問答集を作ってたと思いますよ」
との見解も…常識で考えればその可能性は高そうですね?https://t.co/8Nh7LxsrsH
— 藤井聡 (@SF_SatoshiFujii) September 7, 2024
● https://x.com/SF_SatoshiFujii/status/1832423896227971349
結果、記者会見で折角上がった進次郎氏の株も、たった一晩にしてまた地に落ちたとも報道されています。
● 進次郎、一夜にして評判失墜!なんと質問は事前受付だった 資料には付箋びっしり/ネット「しょーもな!」
国民経済・社会に巨大破壊をもたらす超危険な「小泉進次郎の公約」
ただしかの会見を見た当方にとって何よりも衝撃だったのは、進次郎氏が会見で語った公約の「酷さ」です。かれの公約を耳にした時、文字通り背筋が凍る思いをしました。
酷い物を列挙すると…
- 「労働者全員を厚生年金に原則全員加入させる」改革。これを1年以内に絶対やる
- 「選択的夫婦別姓」の法案提出。これを1年以内に絶対やる
- 「ライドシェア」の全面解禁。これも1年以内に絶対やる
- 「解雇規制」の緩和。これも1年以内に絶対やる
- 「スタートアップが劇的に拡大する仕組み」の整備。これも兎に角1年以内に絶対やる
これはどれもこれも惨たらしいものなのですが、今日はこの中でも特に、「労働者全員を厚生年金に原則全員加入させる」改革、が如何に酷い物なのかについて解説したいと思います。
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血も涙もない「鬼提案」でしかない進次郎氏の「年収の壁」撤廃論
まず、この話は、進次郎氏が記者会見で配布した資料に次のように書かれています。
「年収の壁を撤廃。働いている方には原則厚生年金が適用されるように制度を見直す」
当方はこれを見て、心底仰天してしましました。ただ、一般の人はこれが如何に酷い話なのかは分からないのではないかと思い、この文言を見せ、どう思いますか、と聞いたところ
「壁がなくなるなら,いいんじゃない?」
「厚生年金の制度の幅も広がってなんか良さそうに思うよ」
という反応ばかり。しかし、それは完全な嘘。
結論から言うと、進次郎提案は、「いままで低所得だから厚生年金の支払いが免除されてた人からも、一律に厚生年金をむしり取るようする」と言う、ただ単なる「低所得者をターゲットとした『大増税』」なのです(なお、以下では保険料支払いも政府にオカネを払うという意味で納税と同じだという主旨で、「税」という言葉を使って解説します)。
(注:勿論、年金は厳密に言えば税ではありませんが、国民から吸い上げるカネなわけですから、広く言ってそれは“税”と解釈することもできます。そして実際、北欧諸国では税と保険料の区別はなく、基本的に全て税と呼ばれています)
もう少し詳しく解説しましょう。
まず、「収入の壁」というのは、厚生年金は年収106万円以下の人は払わなくてもいいとなっていたから生じているもの。つまり、年収が106万円を超えれば、一気に厚生年金を払わないといけなくなるので、手取りが減ってしまう、という現象を「収入の壁」と呼んでいるのです。
で、この壁を撤廃するには,普通は、106万円を超えた人から吸い上げる年金額を小さくするとか、所得が減った分プラスαを補助金で補填する…などが一般的な対策なのですが、進次郎氏の提案は、恐るべき事にその真逆の対策。
進次郎氏は驚くべき事に、「低所得の人が年金免除されてるから壁ができてるだけじゃんか。だったら、低所得の人に対する、年金の免除やめちゃえばいいじゃん」という、血も涙もない鬼提案をしているのです!
年収100万の人なら9万1,500円もの大増税となる進次郎氏の提案
その結果どうなるかというと、106万円以下の人、例えば、年収100万円くらいの人は、進次郎提案が通れば、年収の9.15%、つまり、年間9万1,500円も、政府に余分に吸い上げられる事になるのです!
100万円の所得の人にとって、9万1,500円というのは大金!それだけのオカネが、進次郎が総理になってしまえば、僅か「1年」で政府から半永久的に吸い上げられ続ける事になってしまうのです!
しかも、進次郎のこの年金改革で被害を受けるのは、低収入労働者だけではありません。
彼らを雇っている「企業」もまた、同じ金額の被害をうけるのです!
というのも、厚生年金というのは、労働者が支払った年金と同じ金額だけ、会社側(雇い主側)も支払わないといけないのです。
厳密に言うと、厚生年金は、労働者の賃金の18.3%を、会社と労働者が折半で張らないといけない、という仕組み。つまり、100万の賃金の人の場合、9万1,500円を会社と労働者の双方が払わないといけない、という仕組みなのです。
別の言い方をすると、100万円の労働者が一人いれば、小泉年金改革をやれば、それだけで政府は18万3,000円も余分に国民からカネを吸い上げることができる、という次第。
凄まじい大増税ですね(涙)。
ロクな事しか提案しない小泉進次郎という御仁
しかもおそろしいことに…政府は、100万あたり18万3,000円吸い上げられればそれでいいというだけの話なので、実際に誰が負担したかは気にしません。そうすると、次のようなさらに恐ろしいことが起こる事になります。これは特にアルバイトさんの場合に絶対に起こり得る恐ろしい悲劇、です。
100万のバイト君を雇っている会社があったとしましょう。その会社は、小泉年金改革が決まれば、9万1,500円も余分に政府に(保険料として)支払わないといけない、ということになります。したがって、この会社は、100万のバイト君一人のために109万1,500円を払わないといけない、ということになります。
もちろん、会社はそんなのはメチャクチャ嫌な話。だから、中には、次のように考える奴が100%確実にでてくるのです。
おれは、バイトに100万以上のカネなんて絶対はらいたくない。だから、バイトにかかる金を100万以下に抑えるために、俺の負担分の9万1,500円も全部バイトに払わせるようにしよう!もちろん、書類上は俺が払ってるってことにしないと、政府は許しちゃくれないから次のようにしよう。
- バイト代を92万弱にして
- その18.3%の半分の8.4万円をバイト君が払い
- 俺(会社)がそれと同じ8.4万円を払う
こうすりゃ、俺がこのバイト君一人に払う金はトータルおおよそ100万ってことになって、結局何もかわらねぇ。なのに俺がまるでこのバイト君のための厚生年金を半額負担してやってるって体裁になる、まぁ、バイト君はえらい災難だろうけど(笑)。
おわかり頂けましたでしょうか?
要するに、全員を厚生年金に入れるっていう小泉年金改革をやれば、100万所得の労働者は最低でも9万1,500円の増税になり、経営者がずる賢い奴なら、最悪16万3,000円もの大大増税になるのです!
ホントに小泉進次郎という方は、ろくな事を提案しない人ですね…。
誰が進次郎氏という「軽い神輿」を担いでいるのか
とはいえこれはきっと進次郎さんが「悪い人」だからではなく、小泉さんを動かしている財務官僚、あるいは、財務官僚にコントロールされているブレイン達が「悪い人」だから、です。
何と言っても進次郎さんは、単なる軽い神輿なのですから…。
いずれにしても、このような人物を総理にしてしまって後で吠え面をかいてしまうのは、残念ながら我々国民なのです。
総理候補については注意深く、一つ一つの公約を吟味することが必要です。それを絶対にお忘れにならないように、お願いしたいと思います。
(メルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論』2024年9月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ)
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