岸田が受け入れた米国からの“一方的な約束”。日米韓首脳会談で激しく傷つけられた「日本の国益」

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8月18日(日本時間19日)、米大統領別荘「キャンプデービッド」で行われた日米韓首脳会談。三国首脳の親密さが殊更アピールされましたが、識者はどう見たのでしょうか。今回のメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』では京都大学大学院教授の藤井聡さんが、この会談が「日本が米国の意向を鵜呑みする帰結として実現したもの」として、そう判断せざるを得ない理由を解説。その上で、岸田首相のバイデン大統領に対する振る舞いを強く批判しています。

(この記事はメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』2023年8月18日配信分の一部抜粋です)

岸田首相が日米韓首脳会談で飲み込む、日本の国益を激しく傷つけるアメリカの要求

キャンプデービットで、日米韓首脳会議が開催されるということで、岸田総理が日本を飛び立ちました。これまで日米韓首脳会議は幾度となく開催されてきましたが、それらはいつも、G7等の国際会議があった際の「ついで」に行われてきたもので、今回のように「単独」で開催することは初めてとのこと。

今回こうした「歴史的に初めてのこと」が行われたのは、極東の安全保障状況が大変に厳しいものになってきた、ということを反映してのモノです。

北朝鮮は幾度となくミサイルを発射すると共に、中国の台湾への圧力が年々高まりつつあります。

こうした状況に対応するには、日米、米韓の同盟を強固にするのみならず、日米韓の参加国が強固に協調していくことが必要であり、それ故に、今回「歴史上初めて」の単独参加国首脳会議が開催される運びとなった、という次第です。

しかもこの会談の背景には、前大統領の文在寅大統領期には、「レーダー照射問題」に象徴される、日韓における軍事的「敵対」状況があった一方で、韓国で尹錫悦大統領になってから、急速にそうした敵対状況が緩和され、日韓での軍事協調が進展しやすい環境になってきた、という経緯もあります。

………

…というのが、この参加国首脳会談の一般的かつ表層的な解説ですが、実際には、日本の主権やメンツ、国益を度外視し、米国の意向をそのまま鵜呑みする帰結として実現したのが、今回の日米韓首脳会談だと考えざるを得ません。

そもそも、レーダー照射問題について韓国はその事実を認めておらず、日本側が持っている明々白々の事実からは完全に乖離した声明を出し続けています。これはつまり、韓国側は、文在寅がつきつづけた「ウソ」を、尹錫悦は踏襲し続けている、ということです。

レーダー照射とは「攻撃」に準ずる行為で、しかも、その「攻撃」は、文在寅大統領主導で定めた「基本方針」に基づくものですから、日本政府は韓国から「大統領の意志に基づいて攻撃された」のに、韓国は「そんなことはしていない」と言い続けているわけです。

そんな状況を放置したまま同盟関係など結べる筈がないわけで、綿密な軍事的協調関係を構築するなら、韓国側はその事実を認め、謝罪し、二度と再発はあり得ないと確約してもらうことが必要です。

ところが、岸田総理はそうした手続きをすっ飛ばし、「無かったこと」にして日米韓の軍事的協調を加速しようとしているわけです。

これでは日本のメンツは丸つぶれ、です。

だから、日米間の連携を綿密にするのなら、韓国からその点についての適切な対応(つまり事実の認定と謝罪、再発防止の確約)を引き出すことが、日本側にとって不可欠なのです。

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