悪いのはインフレではなく「低賃金」だ。京大教授が提言する、政府が今すぐ取るべき対策

Worried,Businessman,Holding,Bankbook,At,Desk
 

月が変わる度に多くの商品やサービスの値上げが話題になり、国民の生活は確実に厳しいものになっています。それでも好調な企業業績を背景に、大企業を中心に賃上げも実現し始めていて、ここからの経済の舵取りが今後の国民生活を左右することになりそうです。今回のメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』では、京都大学大学院教授の藤井聡さんが、国民の貧困化を止めるために取るべき経済対策は何か、詳しく解説。岸田総理が物価高騰を嫌がる声に耳を傾けて、安易なインフレ抑制策を取ることを危惧しています。

(この記事はメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』2023年6月17日配信分の一部抜粋です)

インフレは悪くない、悪いのは低い賃金。だから岸田政権は「消費減税&補助金・公共投資拡大」と「金融緩和継続」を実施すべきである

長らく日本は「デフレ」に苦しんできましたが、昨今のウクライナ情勢や円安の煽りを受けて、今は「インフレ」が深刻な経済問題だと、世論、さらには政府関係者において認識され始めています。

もちろん現下のインフレの契機は輸入価格高騰によるいわゆる「コストプッシュ型」であって、物価高騰分は日本人でなく海外の人々の所得に寄与するものでしたが、今やもう日本人の賃金上昇にも結びついてきています。

こうした状況が続けば、「インフレ」はさらなる「賃金上昇」を導き、「投資」の拡大を促するのみならず、日本全体の経済規模を拡大させ日本経済の世界経済におけるプレゼンス拡大に大きく寄与し得るものでもあります。

それ以前に我が国は、長年デフレに苦しんできたのであって、ようやくインフレになってきた昨今の状況はむしろ歓迎すべき側面を持つものでもあります。こう考えれば、今のインフレ状況を全否定する態度は国益に叶うものではありません。

むしろ責められるべきは、「低賃金」であって、インフレ率を上回る程の勢いを持った「賃金上昇」が起こっていないという点にあります。そうしたインフレ率を凌駕する程の勢いの賃上げが生ずるなら、「実質賃金」が上昇し、国民は豊かな暮らしを享受することが可能となります。しかも、「インフレ」状況の継続は、消費者の「物価上昇」への抵抗感を軽減し、各事業者が賃上げがしやすい環境を創出しています。

しかし、物価と賃金や日本経済の規模等との間の関係を認識していない一般の消費者にとってはもちろん、インフレはただ単に「嫌なもの」です。それ故、世論の趨勢は「インフレ=悪」というものとなっています。

結果、「インフレ退治が必要だ」という論調が勃興し、「金融緩和を見直すべきだ」という声や「インフレになったのだから財政政策は不要だ」と言った声が出始めています。この論調の圧力におされ、岸田政権が日銀の利上げを促せば瞬く間に投資は激しく冷え込み、大きな賃金の下落圧力がかかることになります。

さらに電気代やガソリン代、輸入食品等の価格を引き下げる財政出動をインフレ退治の名目で拡大せず、むしろ縮小させれば法人所得が下落し、同じく賃金の下落圧力がかかります。それと同時に各世帯の可処分所得の下落が進行することになります。

この記事の著者・藤井聡さんのメルマガ

購読はこちら

print
いま読まれてます

  • 悪いのはインフレではなく「低賃金」だ。京大教授が提言する、政府が今すぐ取るべき対策
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け