つまり、岸田総理が世論の趨勢に耳を傾け、「インフレ退治」に舵を切れば、実質的な可処分所得が引き下がり、瞬く間に激しい「デフレ」圧力がかかり、折角の賃上げの機運が全て消し飛び、再び国民の貧困化が加速することになるのです。
したがって、岸田総理が今なすべきは、単純な「インフレ退治」ではなく、現状のインフレ水準を適正な水準で推移する状況を維持しつつ、「輸入価格高騰主導のインフレ」から「賃金上昇主導のインフレ」へと転換する、いわば「インフレ構造の質的転換」を目指す取り組みなのです。
そのために必要なのは、「金融緩和の継続」を継続すると同時に、「A:市場における電気代、ガソリン代、食料品、資源・エネルギーについての補助金拡大」による物価「下落」圧力の拡大と、「B:消費税減税と公共投資の拡大」による実質賃金上昇圧力の拡大とそれを通した、物価「上昇」圧力の拡大を同時に行うことです。
この物価を下げるAと物価を上げるBを同時に行うことで、インフレが一定程度持続しながら、「輸入価格高騰主導のインフレ」から「賃金上昇主導のインフレ」へと転換することを目指すわけです(なお、消費税減税は、短期的には「物価下落」を導きますが、しばらく期間が経過すれば、消費、投資の拡大を導き、物価上昇圧力を早晩発揮することになります)。
しかし…今の岸田政権がこうした経済政策についての合理的判断を下すとは、到底思えません。それは岸田さんが愚かだから、ということだけが原因ではありません──
(『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』2023年6月17日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
この記事の著者・藤井聡さんのメルマガ
image by: Shutterstock.com