悪いのはインフレではなく「低賃金」だ。京大教授が提言する、政府が今すぐ取るべき対策

 

つまり、岸田総理が世論の趨勢に耳を傾け、「インフレ退治」に舵を切れば、実質的な可処分所得が引き下がり、瞬く間に激しい「デフレ」圧力がかかり、折角の賃上げの機運が全て消し飛び、再び国民の貧困化が加速することになるのです。

したがって、岸田総理が今なすべきは、単純な「インフレ退治」ではなく、現状のインフレ水準を適正な水準で推移する状況を維持しつつ、「輸入価格高騰主導のインフレ」から「賃金上昇主導のインフレ」へと転換する、いわば「インフレ構造の質的転換」を目指す取り組みなのです。

そのために必要なのは、「金融緩和の継続」を継続すると同時に、「A:市場における電気代、ガソリン代、食料品、資源・エネルギーについての補助金拡大」による物価「下落」圧力の拡大と、「B:消費税減税と公共投資の拡大」による実質賃金上昇圧力の拡大とそれを通した、物価「上昇」圧力の拡大を同時に行うことです。

この物価を下げるAと物価を上げるBを同時に行うことで、インフレが一定程度持続しながら、「輸入価格高騰主導のインフレ」から「賃金上昇主導のインフレ」へと転換することを目指すわけです(なお、消費税減税は、短期的には「物価下落」を導きますが、しばらく期間が経過すれば、消費、投資の拡大を導き、物価上昇圧力を早晩発揮することになります)。

しかし…今の岸田政権がこうした経済政策についての合理的判断を下すとは、到底思えません。それは岸田さんが愚かだから、ということだけが原因ではありません──
(『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』2023年6月17日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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京都大学大学院・工学研究科・都市社会工学専攻教授、京都大学レジリエンス実践ユニット長。1968年生。京都大学卒業後、スウェーデンイエテボリ大学心理学科客員研究員,東京工業大学教授等を経て現職。2012年から2018年まで内閣官房参与。専門は、国土計画・経済政策等の公共政策論.文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞等、受賞多数。著書「プライマリーバランス亡国論」「国土学」「凡庸という悪魔」「大衆社会の処方箋」等多数。テレビ、新聞、雑誌等で言論・執筆活動を展開。MXテレビ「東京ホンマもん教室」、朝日放送「正義のミカタ」、関西テレビ「報道ランナー」、KBS京都「藤井聡のあるがままラジオ」等のレギュラー解説者。2018年より表現者クライテリオン編集長。

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【著者】 藤井聡 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 土曜日

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