一方、男性は40代でだいたい自分の会社での立ち位置が見えてしまい、やる気を失ったり、自分で限界を定めてしまったり。その反面「このままで終わっていいのか?」と自問し、それでも家族のために稼ぎ続けなければならない現実に苦悩していました。
日本がいまだに男社会であるがゆえの男性の生きづらさ。医学の急速な進歩で寿命が爆発的に伸びたところでビジネスの論理からいえば50代は嫌われてしまうという厳しい現実…。そういった社会環境が男性会社員の心を弱らせているのかもしません。
いずれにせよ、女性は育児休暇などで戦線離脱したときに、会社が自分のことをコマとしてしか見ていないという現実に直面するので、比較的早い段階で「組織での自分」を客観的に見られるようになります。
その結果、女性は会社で「仕事人」になりますが、男性は会社で「組織人」になる。そういった仕事の向き合い方の違いも、50代という微妙な年齢の就業意識に影響を与えているのでしょう。
私がこれまで行った調査やインタビューでも、同じ男性でも病気をしたり、左遷などで苦い経験をし、早い段階でイス取りゲームから撤退した人は、自己受容(=自分を客観的にみてありのままを受け入れること)できていることがわかっています。要するに「おばちゃん的働き方」に舵を切っていたのです。
彼らは決まって、半径3メートルの人間関係を大切にし、自分から若い人たちに仕事を教えてもらったり、若い人たちの相談にのったりしていました。と同時に、家庭での生活も大切にし、仕事だけではない人生を送っていました。
人間は「仕事」「家庭」「健康」の3つの幸せのボールを持っていて、その3つのボールを落とすことなくジャグリングのように回し続けることで生きる力は充電されます。
会社でどっぷりと仕事につかっていた男性は、「仕事」のボールを高くあげ続けたせいで、「家庭」や「健康」のボールをないがしろにしてしまったのではないでしょうか。今からでも遅くないので、人生を豊かにする働き方をする。会社員するのではなく、仕事をし、家庭と健康のボールも大切にする。そうすれば、今の生きづらさも解消されるのではないでしょうか。
とにもかくにも今回の調査ではインタビュー調査も行っているので、もう少し念入りに読み取れば、生きづらさを感じている男性会社員に役立つことも多いように思います。今回はこれで終わりにしますが、330ページにわたる調査報告書を読み込み、改めてまたみなさんにお知らせするのでお楽しみに!
みなさんのご意見もお聞かせください。
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