人間「生きていくための指針」をしっかり持っていたいものですが、その道しるべとなるのが先人の教えです。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、哲学者・森信三が晩年書き上げた「幻の講話」を通じ後世に伝えようとしたメッセージについて、「家計をひきしめる処方箋」を事例に取り上げながらわかりやすく解説しています。
森信三先生による「幻の講話」
“国民教育の師父”と謳われた森信三先生による不朽の名著『幻の講話』。森先生が70代で執筆されたもので、生徒を対象に講話(授業)を進めていく形式で、年代別に各30篇、全150講話が収録されています。
『修身教授録』と並ぶ代表的著作といわれ、青少年への講話集でありながら、その内容は年代を問わず、「人間、いかに生きるべきか」の指針となるものばかり。そのページ数は、実に1,320ページにも及びます。
本書刊行に至るまでには、幾多の困難がありました。
昭和44年夏、先生は下稿の前半部を一気呵成に書き上げるも、その後、ご長男の事業の蹉跌・急逝……など、苦難や試練に次々と見舞われ、幾度も中断を余儀なくされます。完結までに足かけ5年の歳月を費やした本書は、森先生自らが「宿命の書」と名付けたほど、特別な思いを寄せられる作品。
その晩年に渾身の力を込めて青少年に訴えようとされた人生の根本問題とは何か──。そのメッセージは時代を越え、あらゆる人々の胸に響き渡ります。その内容の一部をご紹介しましょう。
「一生役立つ、家計の5カ条」
経済というものは、丁度水のようなものでありまして、収入が多くなればそれに応じて、支出もまた多くなりがちなものであります。ですから、そうした意味からは、われわれ人間は生きているかぎり、経済に対して手放しでいられるということは、よほど例外的な場合以外には無いと考えてよいでしょう。
そこで最後に、家計を引きしめる上で、大切と思われる事柄を2、3申し添えることにいたしましょう。それは、
1.「入るを計って出ずるを制する」ということでありまして、これは経済上永遠不動の鉄則といってよいでしょう。
次には、
2.いかに安いからといって、当分不用の品は買わぬということ。
3.同時に、買う以上は、自分の身分より多少良いと思われる品を求めて、大切にして永く愛用すること。
4.なお予定しなかった品物で、ある金額以上の品物については、必ずその場で買わずに、その日は一たん家へ帰って、それでも尚どうしてもあきらめかねる様な場合には、財布と相談の上で、翌日もう一度出かけて行って買う様にすること。
この方が、たとえ交通費は使っても、結局は経済的になりましょう。
最後に
5.大きなお札をくずすのを、一日でもよいから先に延ばすことです(一同爆笑)。
とにかく、以上の五カ条をよく守られたら、たとえご主人の俸給が十分でないとしても、とにかく金に困るということだけは、終生なくてすみましょう……。
『森信三 幻の講話』 第3巻「育児と家計」より
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