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現役アナが教える。ネガティブな感情を言葉で逆転させる3つのコツ

人前で話すあらゆるシーンに役立つプロの技を伝えてくれるメルマガ『話し方を磨く刺激的なひと言』の著者で、アナウンサー歴30年の熊谷章洋さんによる「話し方の表現力を上げる5つのアプローチ」シリーズ。その中で、ネガティブワードを言い換える方法を伝えていますが、今回は、自分の中の悪感情を言い換えるコツを伝えてくれます。マスターすれば、出かけるのが面倒な雨降りの朝も、ポジティブな気持ちで外へと向うことができるようです。

自分を向上させる言葉選び

話す時の語彙力を高める方法の一環として、ネガティブワードを使わずに、他の表現に言い換える方法について考えています。

前回記事までは、「嫌い」「気持ち悪い」など、自分の嗜好性を表明するとき、そして、それと同類ではあるものの、相手や聴衆を巻き込んで「反対」を表明するときのコツについて、お伝えしてきました。

改めて確認なのですが、話す時の語彙とは、新しい単語を覚えることではなく、「新しい言い方を見つけること」

言い換えたいという気持ちと、言い換えるべき方向性さえあれば、あとは、自分の知っている言葉を駆使するだけなのです。

話す時の語彙が少なくなってしまう原因は、言い換えようとする熱意が足りなかったり、惰性でなんとなく一番使いやすい言葉を使ってしまったり、あるいは、どういう方向に言い換えたらいいのかわからないから、だけの問題なのですね。

その点で、ネガティブワードを使わないというのは、あまり使いたくない言葉を、良い言葉に置き換えようとする発想の転換であり、どういう方向に言い換えるべきかは、もう答えがでていますから、語彙を増やす訓練、「ものはいいよう頭」を育てるための入口としては、とても取り組みやすいテーマであろうと思います。

では、ネガティブワードを使わないシリーズの最後に、自分の心の中の悪感情を言い換えることについて、お話しすることにします。

別に言い換えなくてもいいや、と思う方には不要かもしれません。対象となるのは、理想とする自分があって、その理想にそぐわない自分は、できる限り変えていきたい、と思う人限定です。

具体的には、例えば、雨降りの朝、出かけるのが面倒だな、嫌だな、と思ってしまう自分が、自分の目指す自分ではない人。面倒な仕事を任されて、なんで自分だけ…と思ってしまう、ついつい、いろいろな人の悪口を言いたくなる、そんな自分を変えたい人

こういうネガティブな感情の方向性を、逆転させるためには、その思い自体を言い表す言葉から換えてしまうのが、手っ取り早いんですね。

コツは3点、

  1. 正反対の言葉を見つけること
  2. 自分に合った、導入しやすい言葉であること
  3. 必ず、その理由を思い描くこと

例えば、不運だ、と思ったら、「むしろついてる」むかつく、と思ったら「むしろありがとう」こういう感じです。もう実践されている方も多いかもしれませんね。

私も、雨降りが苦手で、この気分をなんとかしようと思ったときに、なんと言い換えるべきか、考えたことがありました。一番自分に合った、導入しやすい単語が「ついてる」という結論になったのですが、後日、「ついてる」というワードは、某スピリチュアルの大御所さんも推奨していることを知りました。

私自身は、そちら方面の専門家でもなんでもないのですが、話し方の見地から、言葉選びを追及したところ、同じ結論を得た、ということだと思います。

私なりに考えますと、言葉というのは、具体的なことにしろ抽象的なことにしろ、そのものごとを定義、決定づけてしまうものです。

上記の例のように、自分だけ仕事を任された時の気持ちを、なんで自分だけ?嫌だな~という言葉でひとたび定義してしまうと、それはそういうものとして、決定してしまうのです。

ならば、定義づけからちょっと変えてみるっていう手は、アリだと思いませんか?

ここで大事なのは、ポイント3の、理由を思い描く、ということです。急な土砂降りにあって、うわ、参ったな、ついてない!と思ってしまうところ、その感情をポジティブに「ついてる」と定義しなおしたとしましょう。

まるで念仏のように、ついてるついてるついてるついてる…と唱えるのも、ひとつの方法です。実際私も、ついてるついてる、と、2回繰り返すようにはしています。ただし、もっと重要なのは、ついてると思った理由を想像することなのですね。

いかに、ついてると思い込もうとしても、直面している状況の勢いに流されやすいのが、人情というものです。実際には、目の前に、ついてない現実があるわけですからね。この勢いに流されず、本当にこれは、ついているんだ!と思い込むために、強力に後押ししてくれるのが、理由なのです。

これこれこうだから、ついてる。雨降りであれば、ちょっと休憩しろっていうサインかな、ついてる。農作物も喜んでいるだろうな、ついてる。肌の保湿にもってこいだな、ついてる。買ったばかりの折りたたみ傘が使えるな、ついてる。

月曜日の朝、学校や会社に行くのが面倒だな、という時、自分の能力が発揮できるかもな、これはチャンス。新しい出会いがあるかもな、これはチャンス。人に喜んでもらえることがあるかもな、これはチャンス。美味しいものが食べられるかもな、これはチャンス。

こういった理由のイメージが、理想と現実、ネガティブとポジティブの隙間を埋める、自分自身を説得する力になるんですね。

ただひとつ、難点があるとすれば、こういったものの考え方が定着してくると、たいてい、人と話が合わなくなってきます(笑)

現代の日本、これだけ、禅の精神や、マインドフルネス、潜在意識、アファーメーションなどがもてはやされ、善き人間であろうとする風潮が高まってきているなかでも、きわめて多くの人が、不平不満、批判、悪口をそのまま言語化、音声化してしまいます。

そういう話に対して、ポジティブ言い換えに慣れた人は、どうしても、「でもね…」と返してしまいます。ここが、ものはいいようの表現力を必要とする部分で、ともすると、「なんだよ、良い人ぶって!」「その考えは無理があるんじゃないの」と反感を買いかねませんよね。

もっとも、ポジティブ言い換えも達人級になれば、人格が伴ってきますから、どういう言い方をしても、ありがたく受け入れてもらえるようになるのでしょうが…

不思議なことに、悪口が好きな人は、そういう人同士で集まって、ちょっとした勢力を形成しやすいですから、実社会とのすり合わせをしながら対応する必要があり、若干の葛藤を伴いますよね。

ただ、上述のように、推進力は、理想の自分になることですから、一生をかけたスキルアップだと思って、じっくり取り組んでも、惜しくはないテーマだと思いますね。私もその途上です…。

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2019年11月配信分
  • #287(20191118)「自分を向上させる言葉選び」(11/18)
  • #286(20191111)「反対の表明のしかた」(11/11)

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image by:  Shutterstock.com

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アナウンサー歴30年、極限の環境で話し続ける著者が、実体験から会得した「話し方のコツ」を理論化。人前で話す必要がある人の「もっと〇〇したい」に、お答えしています。一般的な「話し方本」には無い情報満載。

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