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「桜」の文字すらナシ。またも露呈した読売の「官邸応援団」ぶり

連日マスコミを賑わせている「桜を見る会」を巡るさまざまな問題。ところがとある新聞社だけは、他メディアと異なる視点で安部総理の政治姿勢を報じ続けているようです。今回のメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』では著者でジャーナリストの内田誠さんが、11月8日の共産党議員による「行事の私物化疑惑」の追求開始以来、次々と明らかになる疑惑を丹念に追う新聞各紙の報道内容を紹介するとともに、11月22日朝刊の「とある一紙」については「安倍政権応援団」的であるとして、その立ち位置を批判的に取り上げています。

各紙が伝えた「桜を見る会」報道の違いは何か?

ラインナップ

◆1面トップの見出しから……。

《朝日》…「福井県職員109人にも金品」
《読売》…「ヒアリ 中国発7割」
《毎日》…「記述式「廃止を」高校7割」
《東京》…「福井県幹部109人 金品受領」

◆解説面の見出しから……。

《朝日》…「F35量産の陰で」
《読売》…「香港緊迫 蔡氏に追い風」
《毎日》…「教皇、環境危機訴え」
《東京》…「弱者支援 どこまで」

桜ファイルとシュレッダーの性能

朝日】は、4面に国会での審議の模様を採録する「焦点採録」の形で取り上げ、その前に3面で解説的な内容の記事を掲載している。

3面の見出しは、「首相不在 政府は『名簿廃棄』繰り返す」「桜を見る会解けぬ疑惑」「シュレッダー『40秒で1,000枚可』」「高性能なのに廃棄に時間?」となっている。

昨日の国会での追及は参院内閣委員会で。しかし、安倍首相は出席せず政府側は菅官房長官が名簿は廃棄済みと繰り返し答えなかった。野党議員が、首相や昭恵氏、自民党関係者の推薦者の詳細について尋ねると、「推薦者リストが残っていないので、詳細は不明」と答えること10回、また招待客選定に首相らが関与しているのでは?との問いかけに対しては「推薦を下に、最終的に内閣官房、内閣府で取りまとめている」との答えを判で押したように17回繰り返したという。

記録が残っていないという前提と、最終的な招待客選定は飽くまで内閣府が行ったのであって首相や自民党関係者には権限はないというストーリーを下敷きに、答弁をすべてその内容で繰り返したということになる。巧妙な答弁拒否

ただ、《朝日》も、「名簿が残っていない」ことについて、現状では攻め手に欠けるので、話を「シュレッダーの性能」の方に持って行っている。

名簿廃棄に使われたとされる大型シュレッダーは、約1,000枚を僅か約40秒で裁断してしまう代物でナカバヤシ製。いわゆる「桜ファイルについては共産党議員が資料要求した5月9日に廃棄したとされているが、内閣府は「連休前から使おうとし、各局の使用が重なって、連休明けになった」として“証拠隠滅を否定している。しかし、シュレッダーの能力を考えれば、時間は掛からなかったはずだと野党は疑問視。資料請求した共産党の宮本徹衆院議員は、「このシュレッダーなら桜ファイルはきっと1回の投入で済んだでしょう」とツイッターに投稿しているという。

読売新聞は完全無視の構え

読売】は、…実はどこにも桜を見る会についての記事がない。いや、「桜」という文字すら見当たらない。

国会についての記事はあるのだが、国民投票法改正案について与党が採決を提案したが野党は合意しなかったという1件のみ。政治向きで一番重視されているのは、安倍内閣の7年を振り返る企画「最長政権の断面」であり、他には立憲民主党と国民民主党の合流の道筋が見えないという記事と、長島昭久議員(民主党から自民党に鞍替えした元防衛副大臣)が次期衆院選で菅直人議員に対する「刺客」として同じ選挙区から出馬するべく、東京18区の自民党支部長に起用されることになったとの記事があるのみ。

昨日の朝刊では、「安倍政権を見限ったか」と思わせる記事の展開ぶりだったが、今朝は再び「親米保守」にして「安倍政権応援団的な立ち位置に復帰したというべきか、いつもの読売》に戻ってしまったようだ。

不審な領収書

毎日】は、社会面に場所を移して写真入りの大きな記事を掲載。見出しは「森友渦中 政府『公人でなく私人』」「昭恵氏 なぜ推薦枠」「麻生氏は『100~200人」」「宛名なし領収書『ありえぬ』」「過去に前夜祭 ANAホテル」。記事は、「不自然な点を検証」する構えのもの。

見出しに現れているように、焦点は「“私人昭恵夫人の推薦枠宛名なし領収書」。

《毎日》は、森友問題に関わって「首相夫人は私人である」との閣議決定で「私人」とされた昭恵氏が、今回「桜を見る会の招待客選定を巡り「安倍事務所において幅広く参加希望者を募る過程で夫人からのご推薦もあった」と大西内閣審議官が答弁したことに見られるように、事実上推薦枠を持っていたとの疑惑が生じた過程を再検証している。

もう1点の「領収書」の件。前夜祭での参加費用についての安倍氏の説明は「会場入り口の受付で安倍事務所の職員が1人5,000円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受け付け終了後にすべての現金をホテル側に渡すという形で参加者からホテル側への支払いがなされた。受付の際にはホテル側職員も立ち会っていた」というもの。

安倍事務所は集金を代行しただけで後援会としての収入も支出もないから、政治資金収支報告書への記載義務はないという主張になる。しかし、この説明通りだとすると、安倍事務所は料金を支払う前にホテル側から領収書を受け取っていたという不都合が生じる。また、少なくとも2015年と18年の前夜祭では、「株式会社ニュー・オータニ」が発行したとみられる宛名未記入の領収書を、参加者が受け取っていたことが分かっている(《毎日》が入手しているという意味)という。

《毎日》の取材に対して別のホテルは「領収書はお支払いしたものに対して発行するもの」として、事前にホテル名義の領収書を渡すことはあり得ないとし、また郷原信郎弁護士は「一流ホテルが宛名のない領収書を大量に発行するというのは本来あり得ない」とし、「領収書の発行者名が『株式会社ニュー・オータニ』だったとすると、そもそもホテルのスタッフが現場で発行する正規の領収書だったのかどうかも分からない」と言っているようだ。

郷原弁護士の言うように、「株式会社ニュー・オータニ名義というのは変だ。国内だけで7軒のホテル(うち4軒は子会社直営)の全体を見ている運営会社の名義で、個々のホテルのバンケットでの飲食代領収書を出すというのは考えにくい。何か資材の取引でもしたのなら別だが、ホテルの施設を利用した場合の領収書には、その店の名前が必ず入っている。宛名のないものは勿論、宛名が書いてあろうとも、「前夜祭」で配られたとされるこれらの領収書は、明らかにインチキであろう。

「夫人枠」の否定の仕方

東京】は2ヵ所で3本の記事を展開。1面左肩と2面。見出しは「政治推薦名簿のみ即廃棄」「桜を見る会 各省は最低3年保存」(以上、1面)、「菅氏 後援会50~60人招待」「桜を見る会 麻生氏100~200人推薦」「昭恵氏関与で「私人」議論再燃」「政府「夫人枠」を否定」(以上、2面)となっている。

1面については【セブンNEWS】の第6項目を再掲する。

首相主催の「桜を見る会」への招待客選定を巡り、各省は推薦名簿の保存期間を最短でも3年と定めていた。11省中6省は10年。内閣官房は安倍首相や菅官房長官ら与党政治化の推薦名簿を1年未満で廃棄すると規定。政治推薦だけが即廃棄されていたことに。

2面のうち、特に重要なのは「昭恵氏」に関するもの。

参院内閣委員会での質疑で、立憲民主党の杉尾秀哉議員は政府が2017年3月に昭恵氏の立場を私人」とする答弁書を閣議決定したことを踏まえ、「私人が税金を使った公的行事に、自分の友人を幅広く招いていいのか」と質問。菅官房長官は「総理からの推薦だ。(首相が推薦した)約1,000人の中に含まれている」と述べ「夫人枠」を否定したのだが、20日の官僚の答弁では安倍事務所で幅広く参加希望者を募る過程で夫人からの推薦もあったと明かしていたとする。

招待者に関して首相が意見を言うことはあったと認めながら、最終決定は内閣が行ったといって自らの「枠」を否定するのと同じように「夫人からの推薦もあった」といいつつ、それは総理の「枠の中」、つまり推薦したのは総理であって夫人ではない、と言い募る。「入れ子式」とでも言ったらいいか、この方式で説明すれば、どんなことでも責任を負わずに成し遂げることができる。「忖度」はその究極のあり方で、官僚なりを自動操縦するが如き権力の自由自在を、これ以上放置しておくのは全くよろしくないと思う。

image by: 安倍晋三 - Home | Facebook

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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